【2025年版】訪問介護の開業完全ガイド|手続き・資金・失敗例まで徹底解説

介護施設の経営・運営改善

【2025年版】訪問介護の開業完全ガイド|手続き・資金・失敗例まで徹底解説

少子高齢化が進む日本において、「訪問介護事業」は今後ますます重要性が増す分野です。介護のニーズが高まり続ける中で、「自分で訪問介護事業所を立ち上げたい」と考える方も増えています。

しかし現実には、毎年百件以上*の訪問介護事業所が倒産・廃業していることをご存知でしょうか?

*参考:東京商工リサーチ「2024年度「介護事業者」倒産 最多の179件 前年度から3割増、報酬改定の「訪問介護」が半数」(2025年4月)

理想や使命感だけでは続かないのが、介護業界の厳しさでもあります。本記事では、そんな厳しい環境の中でも「生き残れる事業所」をつくるために、開業前に知っておくべき全体像・注意点・成功のヒントをわかりやすく解説します。

訪問介護事業所の新規開業・立ち上げを検討している方は、ぜひ最後まで読んで参考にしていただけると幸いです。

今回の内容

訪問介護事業とは?サービスの基本と売上・収益の仕組み

  1. 訪問介護のサービス内容と対象者
  2. 訪問介護における売上・収益の仕組み
  3. 増加する訪問介護事業所の倒産数 - なぜ失敗するのか?
  4. 訪問介護事業の現状と将来性

【全体像】訪問介護事業所を開業するまでのロードマップ

【具体的な手順】開業準備から事業開始まで

  1. ステップ1. 法人設立の手続き
  2. ステップ2.事業計画の策定 - 失敗しないための最重要ポイント
  3. ステップ3.事業所物件の選定と準備
  4. ステップ4. 人員基準を満たすスタッフの確保
  5. ステップ5. 設備・備品の準備
  6. ステップ6.介護保険事業者の指定申請手続き
  7. ステップ7.開業前の最終準備と確認
  8. ステップ8.事業開始!開業後の運営準備

訪問介護事業の開業に必要な資金と具体的な調達方法

  1. 開業資金の内訳
  2. 資金調達の選択肢
  3. 創業融資を成功させるためのポイント

【最重要】訪問介護事業の開業・経営で失敗しないための注意点と成功の秘訣

  1. 訪問介護事業が失敗する主な原因
  2. 成功する訪問介護事業所にするためのポイント

訪問介護事業の開業・経営に関するよくある質問(FAQ)

  1. Q: 個人でも開業できますか?
  2. Q: 必要な資格はありますか?
  3. Q: 指定申請にはどれくらい時間がかかりますか?
  4. Q: 運転資金はどれくらい必要ですか?
  5. Q: 利用者はどうやって獲得しますか?

まとめ:訪問介護事業の成功に向けて、最初の一歩を踏み出そう

訪問介護事業とは?サービスの基本と売上・収益の仕組み

訪問介護のサービス内容と対象者

訪問介護は、介護保険制度に基づくサービスの一つで、要介護または要支援の認定を受けた高齢者の自宅を訪問し、日常生活の支援を行うサービスです。訪問介護で提供するサービスは、大きく以下の3つに分けることができます。

身体介護

身体介護とは、利用者の身体に直接触れて行う介助のことを指します。具体的には、入浴介助、排泄介助、食事介助、衣服の着脱介助、体位変換などがあります。これらは、利用者の自立支援を基本としながらも、安全かつ快適に日常生活を送るために必要不可欠な支援です。

生活援助

生活援助は、身体に直接触れずに日常生活を支える支援を指します。掃除、洗濯、食事の準備や片付け、買い物代行など、利用者が自力で行うことが難しい日常的な家事全般を対象としています。

通院等乗降介助(その他)

通院等乗降介助とは、介護タクシー等の手段を使って、利用者が病院や通所サービスに通う際の移動を支援するサービスです。単なる移送ではなく、「乗車前後の移動・乗降の介助」や「通院時の院内付き添い」が含まれることもあります(自治体の指定基準によって異なる)。
対象は要介護1以上が原則で、必要に応じて介護保険内での算定が可能です。

訪問介護における売上・収益の仕組み

訪問介護事業所の売上・収益は、介護保険法によって定められている単位などから算出する介護報酬という形で得ることとなります。具体的には、訪問介護の場合は以下のような計算方法で介護報酬が算出されます。

地域区分 × サービス単位(基本報酬 + 加算) × 1ヶ月の訪問件数 = 売上

以下では、具体的な地域区分による単価や、サービス内容ごとのサービス単位について解説します。

訪問介護における地域区分ごとの1単位の単価

まず地域区分とは、指定を受けている事業所が所在する市町村に応じて、1〜7級地とその他の8区分*に分けらたものです。

*具体的な市町村ごとの区分は「地域区分について」(厚生労働省)をご参照ください

2025年現在で、これらの地域区分ごとに定められている訪問介護におけるサービス単位1単位あたりの単価は以下の通りとなっています。

1級地 2級地 3級地 4級地 5級地 6級地 7級地 その他
11.40円 11.12円 11.05円 10.84円 10.70円 10.42円 10.21円 10.00円

サービスごとに算定される単位

サービス単位についても、具体的に提供するサービス内容によって算定できる単位(基本報酬)が以下のように異なっています。

種別 項目 単位 1件あたり売上*
身体介護中心 20分未満 163単位 約1,858円
20~30分未満 244単位 約2,782円
30分以上1時間未満 387単位 約4,412円
1時間以上1時間半未満 567単位 約6,464円
生活援助中心 20分以上45分未満 179単位 約2,041円
45分以上60分未満 220単位 約2,508円
通院等乗降介助 97単位 約1,105円

*地域区分を1級地とした場合の単価で算出しています

なお、上記の基本報酬は令和6年の介護報酬改定にて、訪問介護については以前の単価よりも引き下げられることとなってしまいました。

そのため、訪問介護事業所が従来の水準で売上を維持するには、基本報酬に加えて加算を算定することがより重要となっています。加算の仕組みや、訪問介護で算定できる加算の種類については以下の記事でわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

訪問介護で算定できる加算については、以下の動画でも解説しています。※クリックすると動画を再生できます。

増加する訪問介護事業所の倒産数 – なぜ失敗するのか?

東京商工リサーチの発表によると、訪問介護事業所の倒産件数は近年上昇傾向*にあります。背景には次のような課題があります。

  • 人手不足によるサービス提供の限界
  • 利用者の獲得競争(地域によっては競合が多数)
  • 指定基準や運営基準の遵守が不十分で、指定取消しや加算取り下げにつながるケース
  • キャッシュフローや資金繰りの甘さ

*参考:東京商工リサーチ「2024年度「介護事業者」倒産 最多の179件 前年度から3割増、報酬改定の「訪問介護」が半数」(2025年4月)

つまり、「人が足りない・儲からない・書類が難しい」と三重苦に陥りやすい業界なのです。

だからこそ、「なぜ失敗するか」を開業前に知っておくことが、最初の“倒産予防策”になります。訪問介護の失敗要因や、それを防ぐための対策案についてはこの記事の後半で解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

訪問介護事業の現状と将来性

訪問介護の倒産が増えていると聞くと「開業しない方が良いかも」と思うかもしれませんが、ネガティブな話ばかりではありません。むしろ、制度的・社会的なニーズは今後も右肩上がりに増加していくと考えることができます。以下はその根拠です。

  • 2040年に向けて高齢者人口はピークを迎え、在宅介護ニーズが急増している
  • 「地域包括ケアシステム」の構築が国策として進行している
  • 2024年度介護報酬改定で、ICT導入や介護職員の処遇改善に関する新たな支援策が拡充した

このことから、従来の失敗要因をしっかり防ぐことができれば、訪問介護には持続可能かつ社会的意義の強いビジネスモデルを築ける可能性があることがお分かりいただけるかと思います。

【全体像】訪問介護事業所を開業するまでのロードマップ

訪問介護事業所の開業は、「法人設立から指定申請・運営準備まで」、おおむね3〜6ヶ月程度かかるのが一般的です。

以下が基本的な流れです。

  1. 法人の設立(株式会社や合同会社など)
  2. 事業計画の作成と資金調達
  3. 事業所の物件選定と設備の整備
  4. 人員基準を満たすスタッフの確保
  5. 介護保険事業者としての指定申請
  6. 事業開始に向けた最終準備と確認

このロードマップを把握しておくことで、「何を・いつまでに・どの順序で」準備すべきかが明確になります。

【具体的な手順】開業準備から事業開始まで

上述のロードマップで記載した各ステップの詳細を1つずつ解説します。

ステップ1. 法人設立の手続き

訪問介護事業を行うには、まず法人格の取得が必要で、多くは「株式会社」「合同会社」「NPO法人」などの形態が選ばれます。以下にて、これらの法人格の概要や違いを解説するので、ご自身の目的に応じた法人格の取得を検討しましょう。

株式会社とは

株式会社は、最も一般的な法人形態であり、訪問介護事業を営む上でも選ばれることが多い法人格です。出資者(株主)と経営者(取締役)が分かれているのが特徴で、資金調達の自由度が高く、信用力も相対的に高いとされます。

訪問介護事業においても、後々の事業拡大や融資を想定している場合は株式会社が適しています。定款認証が必要で設立コストはやや高めですが、銀行や行政、取引先からの信頼を得やすい点がメリットです。

合同会社とは

合同会社(LLC)は、設立費用を抑えられ、経営の柔軟性が高いことから、近年選ばれることが増えている法人形態です。出資者と経営者が一致する「社員」主体の仕組みで、株主総会や取締役会などの設置義務がありません。

訪問介護事業を小規模で始める場合や、身内だけで経営する予定である場合には、合同会社は合理的な選択です。設立後の事務負担も軽く、法人登記費用が株式会社より安いのも魅力です。ただし、認知度がまだ低いため、一部の金融機関では株式会社に比べて信用力が劣ると見なされることもあります。

なお、個人事業主としての指定申請は基本的に認められていないため、必ず法人化しましょう。

NPO法人とは

NPO法人は、営利を目的としない特定非営利活動を行う法人で、地域貢献や社会課題の解決を目的とする訪問介護事業に適している場合があります。収益を上げることは可能ですが、その利益は構成員に分配せず、事業活動に再投資することが求められます。

NPO法人を選択する場合は、設立に時間がかかることや、所轄庁(都道府県・政令市)への認証申請が必要である点に注意が必要です。一方で、地域福祉との親和性が高く、助成金や寄付の対象になりやすいなどの社会的メリットもあります。

ステップ2.事業計画の策定 – 失敗しないための最重要ポイント

事業計画は、「創業融資の審査」「指定申請の基準確認」「開業後の経営安定」に直結する非常に重要な工程です。特に以下の3点は重点的に作成してください。それぞれの注意ポイントを簡単にまとめてみました。

 サービス内容・提供エリアの決定

  • 「生活援助中心か?」「障がい者支援も行うか?」など方針を明確に
  • エリアは「自治体の指定区域」に注意(営業所と訪問範囲のバランス)

収支計画・資金繰り計画

  • 月次損益(PL)とキャッシュフロー表を作成
  • 利用者数シナリオ(悲観・現実・楽観)ごとの収支見込みも有効

資金繰りを検討する上で、必ず加算の取得・算定についても併せて検討しましょう。

加算は基本報酬に上乗する形で得られる貴重な収入源で、訪問介護事業所が算定できるものだけでも10件以上あるので、加算による売上への影響度や、算定できる加算の種類については以下の記事をぜひ参考にしてください。

人員計画

  • スタッフの配置数・採用時期・給与水準などを設計
  • 加算算定に影響するため、常勤換算や資格者数に注意

ステップ3.事業所物件の選定と準備

事業所は事務所兼スタッフの拠点として必要であり、以下の条件を満たす必要があります。

  • 独立した事務スペースの確保(住居併用は要注意)
  • 通信・情報保護のための設備(鍵付きキャビネット、パソコン等)
  • 法人の所在地と事業所の住所が一致していることが望ましい

※物件の賃貸契約時に「介護事業で使用」と明記しておくとトラブル防止になります。

ステップ4. 人員基準を満たすスタッフの確保

訪問介護は人員配置基準が明確に定められていて、以下の要件を満たさないと指定を受けることができません。

必要な職種・人数・資格要件

職種 人数 資格
管理者 1人 なし
サービス提供責任者 1人以上(利用者人数40人を超えるごとに1人追加する)
  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 旧介護職員基礎研修課程修了者
  • 旧ホームヘルパー1級課程修了者
訪問介護員(ホームヘルパー) 常勤換算で2.5人以上
  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 介護職員初任者研修修了者
  • 生活援助従事者研修修了者(生活援助だけ提供可能)
  • 旧介護職員基礎研修過程修了者
  • 旧ホームヘルパー1級課程修了者
  • 旧ホームヘルパー2級課程修了者

採用と研修計画

  • 採用難のリスクに備え、開業2ヶ月前から募集開始が理想
  • 研修は「接遇・緊急対応・感染対策」などを事前に実施しておくと、指定審査でも有利に働くことがあります。

ステップ5. 設備・備品の準備

業務に必要な最低限の設備を整えます。

  • パソコン、業務用電話、FAX、プリンター
  • 書類保管用の鍵付きキャビネット
  • 訪問記録ソフトや業務支援システム(ICT導入加算にも関連)

ステップ6.介護保険事業者の指定申請手続き

介護保険事業者として介護保険法に基づく介護報酬を得ることを行政から認められるためには、基準に基づく指定*を自治体から受ける必要があります。

*参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

この指定申請手続きは令和4年からオンラインで行うこともできる*ようになり、自治体によっては電子申請を原則としている場合もあるので、申請方法については必ず各自治体の情報を確認するようにしましょう。

*参考:厚生労働省「介護事業所の指定申請等のウェブ⼊⼒・電⼦申請の導⼊、文書標準化

申請から指定までの手続きとスケジュール

例として東京都においては以下のようなスケジュールが明示されています。

  • 4ヶ月前:事前申請
  • 3ヶ月前:指定前研修受講
  • 2ヶ月前:申請受付
  • 毎月1日:指定

参考:東京都「介護保険事業者指定のガイドブック

申請から指定まで1〜2ヶ月半程度まで要すことになりますが、上述のように申請前に事前申請や研修受講が必要になる場合もあります。手続きに漏れがあると指定が数ヶ月レベルで遅れてしまうこともあるため、指定申請を検討する段階で各自治体に必ず手続きを確認することと、スケジュールに余裕を持つことが大事だと言えます。

指定申請に必要な書類

具体的な必要書類については、申請する自治体の情報を確認する必要がありますが、参考までに東京都における必要書類は以下の通りとなっています。

  • 指定(許可)申請書
  • 訪問介護事業所の指定等に係る記載事項
  • 申請者の登記事項証明書又は条例等
  • 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
  • 資格証の写し
  • 事業所の平面図
  • 外観及び内部の様子がわかる写真
  • 運営規程(料金表含む)
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 誓約書及び誓約書別紙
  • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
  • 体制等状況一覧表
  • 加算様式・参考様式
  • 処遇改善等計画書
  • 老人居宅生活支援事業開始届

自治体への事前相談を忘れずに

申請前には必ず都道府県や市町村の介護保険課に事前相談を行いましょう。

地域により「独自の書類様式」や「運用上の注意点」があるため、早めの相談がトラブル回避の鍵です。

ステップ7.開業前の最終準備と確認

  • 開業日を明確に定め、関係機関へ通知
  • 緊急連絡体制、BCP(業務継続計画)の整備
  • 事前研修、サービス提供マニュアルの完成

BCP(業務継続計画)の基本や策定方法については、以下の記事でわかりやすく解説しています。

ステップ8.事業開始!開業後の運営準備

  • 利用者の獲得(紹介、連携、営業活動)
  • 初回サービス提供の記録と運営状況報告
  • 加算算定や訪問実績の管理体制を整備

訪問介護事業の開業に必要な資金と具体的な調達方法

訪問介護事業を開業するには、ある程度まとまった資金が必要です。ここでは、どのような費目があり、どのように資金を集めるべきかを解説します。

開業資金の内訳

開業時にかかる費用は、事業規模や立地条件によりますが、おおよそ800万〜1,000万円程度を見込んでおくと安心です。以下は主な内訳です。

項目 内容 金額目安
物件取得費 敷金・礼金・仲介手数料 50〜100万円
内装・設備費 備品購入、通信環境整備など 50〜100万円
人件費 採用・研修・初月給与の準備金 150〜300万円
登記・手続費用 定款、登記、申請書類など 10〜30万円
運転資金 3〜6ヶ月分の家賃・給与・管理費など 300〜500万円

※事業規模や立地条件により差があります。

資金調達の選択肢

開業資金を準備する方法には、以下のような手段があります。

自己資金

  • 自己資金は融資審査の際にも重要視されます。
  • 全体の30〜50%程度を目安に準備できると理想です。

融資(日本政策金融公庫など)

  • 創業融資として人気が高いのが「日本政策金融公庫」の制度融資
  • 無担保・無保証で最大7,200万円*程度まで可能
  • 地方自治体の制度融資と併用することも可能

*参考:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金

助成金・補助金

  • 「キャリアアップ助成金」「特定求職者雇用開発助成金」など雇用関連が中心
  • 初期投資には使えないケースが多く、開業後の申請・受給が前提となる
  • 申請手続きや報告義務が多いため、社労士への相談も視野に

創業融資を成功させるためのポイント

融資審査で重視されるポイントは以下の通りです。

  • 実現可能性の高い事業計画書(収支予測、提供サービス、競合との差別化)
  • 創業者の経歴や介護業界経験の有無
  • 自己資金の割合(多いほど信頼性が上がる)
  • 返済能力の根拠(月次の利益計画と返済計画)

特に訪問介護は「介護報酬での収入=入金まで2ヶ月遅れ」となるため、運転資金の確保と見せ方が重要です。金融機関から信頼される“数字の裏付け”が、資金調達成功の鍵を握ります。

【最重要】訪問介護事業の開業・経営で失敗しないための注意点と成功の秘訣

訪問介護事業は、制度や社会的ニーズに支えられた有望な分野である一方で、倒産や廃業のリスクも高い業種です。ここでは、よくある失敗パターンと、長く安定して経営を続けるための成功のポイントを紹介します。

訪問介護事業が失敗する主な原因

過去の倒産事例から学ぶ、訪問介護事業における経営失敗の主な要因として、以下のようなケースが考えられます。

資金ショート

  • 介護報酬の入金が2ヶ月遅れであるため、初期の運転資金が尽きやすい
  • 赤字続きで資金繰りが回らず、融資も受けられない状態に

人材不足・定着率の低さ

  • 採用難に加え、離職率の高さが慢性的な人員不足を招く
  • 一人の欠員で稼働できなくなる「薄氷のオペレーション」に

利用者獲得の失敗

  • 地域との接点が少なく、紹介ルートが構築できない
  • 競合との差別化ができず、価格競争に巻き込まれる

ずさんな運営管理・コンプライアンス違反

  • 記録不備、苦情対応の不備、運営基準違反などにより
  • 介護保険事業者の「指定取消し」や「加算の返還処分」を受けるリスク

競合との差別化不足

  • 他事業所と同質化し、選ばれる理由がない
  • ブランディング・サービス品質への投資不足

成功する訪問介護事業所にするためのポイント

一方で、経営難に陥らないためにはどういったことがポイントになるのかを、以下に整理しました。

質の高いサービス提供体制の構築

  • 経験豊富なサービス提供責任者の配置
  • eラーニングを活用した研修の実施
  • 利用者満足度の高いオペレーションマニュアルの整備

介護のコミミでは無料で始めることができるおすすめeラーニングサービスも紹介しています。興味がある方は以下の記事を参考にしましょう。

人材育成と働きがいのある環境づくり

  • 介護職員等処遇改善加算を活用した待遇改善
  • キャリアパスの見える化と社内研修制度の整備

介護職員等処遇改善加算(通称、処遇改善加算)については以下の記事でもわかりやすく解説しています。

地域包括ケアシステムの中での連携強化

  • 地域のケアマネ、包括支援センターとの関係構築
  • 医療機関や他事業所との連携による利用者紹介ルートの確保

効果的な集客・営業戦略

  • 自社パンフレットの作成、地域広報、SNS活用
  • ケアマネ訪問による関係づくりと情報提供

適切な収支管理とコスト削減

  • 利用実績のリアルタイム管理
  • 訪問件数と人件費のバランスを保つ体制

法改正への迅速な対応

  • 介護報酬改定や制度変更への常時アンテナを立てる
  • 行政説明会・地域研修などへの積極的参加

訪問介護事業の開業・経営に関するよくある質問(FAQ)

Q: 個人でも開業できますか?

A: 原則として、訪問介護事業所は法人格が必要です。個人事業主では介護保険事業者の指定を受けることができません。

Q: 必要な資格はありますか?

A: 開業者自身に特別な資格は不要ですが、配置義務のある「サービス提供責任者」や「訪問介護員」には、所定の資格(初任者研修、実務者研修など)が必要です。

Q: 指定申請にはどれくらい時間がかかりますか?

A: 書類提出から指定通知までは2〜2.5ヶ月程度が一般的です。ただし、都道府県・市町村によってスケジュールが異なるため、事前相談が必須です。

Q: 運転資金はどれくらい必要ですか?

A: 最低でも3ヶ月分の運転資金(家賃、人件費など)を確保しておくと安心です。訪問実績が安定するまでは収入が不安定なため、6ヶ月分を目安に備える事業者も多いです。

Q: 利用者はどうやって獲得しますか?

A: 地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療機関との連携が鍵となります。信頼関係を築き、紹介を受けられる体制を整えることが集客の要です。

まとめ:訪問介護事業の成功に向けて、最初の一歩を踏み出そう

訪問介護事業の開業には、法人設立・人材確保・資金調達・指定申請など、多くの準備と知識が必要です。加えて、倒産や失敗のリスクを避けるためには、事前の情報収集と現実的な経営戦略が欠かせません。

一方で、地域に根ざした信頼ある事業所を築くことができれば、社会貢献性も高く、やりがいのあるビジネスとなります。

この記事を参考に、あなたの開業への一歩が確実なものになるよう、丁寧に準備を進めていきましょう。もし不安がある場合は、専門家や自治体の相談窓口の活用も視野に入れてください。

この記事の筆者・監修者

  • 伊藤証

    伊藤証

    「介護のコミミ」を運営する株式会社Giver Linkの執行役員CTO。介護のコミミの開発・運用を全般的に統括する傍ら、介護施設から行政まで多岐にわたる業界関係者にインタビュー活動を行う。スマート介護士Expert保有。

介護のコミミとは

介護のコミミとは、介護や障がい福祉の事業所における課題解決のパートナーになるべく立ち上がった業務改善プラットフォームです。

業界最大級の数を誇るICTツールの掲載とその口コミから、あなたの事業所の課題に最適な製品を比較・検討ができるだけでなく、報酬改定や加算・減算、補助金などの最新情報、現場で使えるレク素材や資料のテンプレートなど、業務に役立つ様々なコンテンツを無料でご利用いただけます。

また、ICT導入について何かお困りごとがあれば、専任アドバイザーへお電話や掲示板を通じての無料ご相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。

介護のコミミについてもっと詳しく知る

60秒でかんたん検索

資料を一括請求する

製品のカテゴリを
お選びください