介護施設の経営・運営改善
訪問介護事業所の運営では、運営指導(実地指導)への対応が欠かせません。2024年度の法改正や報酬改定で、加算要件の厳格化や帳票の電子化、ICT導入推進などが強化され、現場の書類管理や業務体制がこれまで以上に重要視されています。
そこで、この記事では2025年の最新動向を踏まえ、運営指導(実地指導)・監査で必ず求められる書類や対策、現場で役立つ改善ノウハウを分かりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みください。
2024年介護報酬改定における加算・減算などの改定内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
まずは運営指導(実地指導)や監査などといった、それぞれの行政指導の違いを見ていきましょう。
指導種別 | 実施頻度 | 主な目的・概要 |
---|---|---|
運営指導 | 指定期間(6年)に1回以上 ※自治体の判断で増減する場合あり | 事業所の運営体制・サービスの質・加算要件等が法令や基準どおりか個別に確認・指導 |
集団指導 | 年1回以上 | 法改正や制度改定、介護保険制度の最新情報の周知・啓発講習会やオンラインで複数事業所同時に実施 |
監査 | 必要に応じて随時 | 運営指導等で違反・不正の疑いが出た事業所に対し事実確認のため証拠書類や現地調査・行政処分 |
運営指導とは、自治体が介護事業所の運営体制やサービスの質、介護報酬請求・加算算定状況などについて、書類や現場を確認しながら行う指導です。
もともと「実地指導」と呼ばれ、現地を訪問して実施されていましたが、2022年よりオンラインツールによる指導も認められるようになったため、名称が「運営指導」に変更されました。運営指導は指定期間(通常6年)の間に1回以上、原則として全ての訪問介護事業所に対し実施されます。なお、実施頻度は地域や個別の事情により異なる場合があります。
集団指導は、自治体や行政機関が事業所の管理者や職員に向けて、新しい法令・制度改正・加算要件などの最新情報を一斉に伝達・共有するための講習会形式の指導です。 年1回以上の実施が義務付けられており、情報伝達や不正防止を主な目的としています。集団指導は「知識や最新情報のインプット」を目的とし、運営指導は「その内容が事業所内で適切に運用されているかの確認」を目的としています。
監査は、運営指導の結果や通報等で人員基準違反・運営基準違反・不正請求などの疑いが生じた事業所に対し、その真偽を確かめるために行われる厳格な調査です。
監査では帳票・証拠書類の提示や関係者の出頭要請、現地立入検査などが行われます。
違反や不正が認定されると、行政処分(報酬返還、業務停止、指定取消など)となる場合があります。
参考:厚生労働省『介護保険施設等 運営指導マニュアル』(2024年7月)
運営指導(実地指導)では、主に次のような項目が重点的に確認されます。
人員配置・資格要件
サービス提供責任者・訪問介護員の配置基準、必要な資格・研修受講状況
サービス提供記録・帳票管理
利用者ごとのサービス提供記録、モニタリング記録、重要事項説明書など書類の整備と保管状況
加算・減算要件の適正管理
特定事業所加算など各種加算の算定根拠、実態との整合性
業務運営の適正性
利用者への説明・同意取得、不適切ケアの有無、苦情対応体制の有無
報酬請求の適正性
サービス実績と請求内容の突合、虚偽請求・不正請求がないか
特に2024年報酬改定では、「記録の電子化推進」や「特定事業所加算の厳格化」などが強化されているため、最新の通知・Q&Aを必ず確認しましょう。
訪問介護事業所が受ける運営指導(実地指導)は、主に以下の時系列で進行します。
通知の受領
運営指導(実地指導)の予定がある場合、原則としておおむね2週間前までに行政機関から文書で「運営指導(実地指導)通知」が届きます。通知書には実施日時・場所、提出書類リストなどが明記されます。
事前準備・書類の整備
通知に基づき、必要な帳票・記録・契約書・加算関連資料などの整理・確認を行います。不明点があれば、早めに担当行政へ照会することも重要です。
運営指導(実地指導)当日
行政担当者が事業所を訪問し、書類点検や現場ヒアリングを行います。チェックリストや実績記録、職員・利用者への聞き取り、設備確認等が中心です。加算・減算の根拠やサービス実態と帳票の一致を重点的に確認されます。
なお、運営指導は立入検査ではなく、事業所が任意で協力し運営状況などについて指導するものとされていますが、運営指導を断り続けると不正や誤った法解釈があると判断されて監査が入る可能性があるため、できる限り拒否せず受け入れることを推奨します。
結果通知・改善指導
指摘事項がある場合は文書での指導を受けます。改善が必要な場合、期限内に改善報告書を提出する義務があります。法令違反や重大な不正が認められた場合は、監査・行政処分(業務停止や指定取消)となることもあるため、指摘を受けた場合は速やかに対応しましょう
運営指導(実地指導)通知が届いてから慌てることなく対応するためには、日ごろから業務の「仕組み化」と「見える化」がポイントです。特に訪問介護事業所の管理者やサービス提供責任者が不安に感じるポイントを下記にまとめます。
帳票・記録類の整備
サービス提供記録、モニタリング記録、重要事項説明書、加算関係資料(特定事業所加算、処遇改善加算等)の正確な記録・保存しておくと良いでしょう。
職員体制・資格証の管理
サービス提供責任者、訪問介護員の資格・研修状況、出勤簿などを常に整備しておくと良いでしょう。
契約書・重要事項説明書の原本管理
利用者ごとに必要書類が正しく保存されているか点検しておくと良いでしょう。
ヒアリング・面接の事前準備
職員が直近の指導内容や自施設の運営体制を理解しているか再確認しておくと良いでしょう。
ICT・介護ソフトの活用
書類のデータ化や一元管理、エビデンス保存の仕組み化しましょう。
特に2024年の報酬改定では、「記録の電子化推進」や「加算要件の厳格化」が指摘されているため、最新の通知・Q&A(例:厚労省介護保険最新情報)を常にチェックしましょう。
訪問介護事業所の運営指導(実地指導)において、管理者やサービス提供責任者が直面する問題が「いきなり通知が来た時の初動対応」です。まず以下のリストを確認しましょう。
通知書・提出書類リストを必ず確認し、期日・提出先・必要書類を全員で共有する
過去の運営指導(実地指導)結果や改善報告書があれば見直し、同じ指摘が繰り返されていないか確認する
不明点は即時行政担当者に照会し、疑問点を解消しておく
提出書類や帳票が不足・不備の場合は、速やかに補填・修正作業に取り掛かる
現場職員にも通知内容や自分の役割を周知し、ヒアリングや現場確認に備える
帳票・資料の保管場所・ファイルの整理状況を全員で再点検する
これらを初動対応として徹底することで、「指摘事項の未然防止」と「運営指導(実地指導)の円滑化」が図ることができます。
訪問介護の運営指導(実地指導)で原則確認される書類・帳票は、2025年の最新の報酬改定や加算要件を踏まえて整理することが重要です。厚生労働省の「介護保険最新情報」や各自治体の通知を参考に、以下の書類を整備・保管しておきましょう。
主な確認対象の書類
介護サービス計画書(ケアプラン)
訪問介護計画書
サービス提供記録票(実施記録)
モニタリング記録
重要事項説明書および同意書
契約書(利用者・家族との契約)
アセスメントシート(初回・定期)
担当者会議記録
事故報告書・苦情対応記録
職員の資格証写し・研修受講記録
勤務表・出勤簿・業務日誌
加算関連書類(特定事業所加算、処遇改善加算、生活機能向上連携加算等の根拠資料)
利用者ごとの個別ファイル(各種書類をまとめたもの)
サービス実績記録および報酬請求書類
記録の電子データ(2024年以降、電子化が進行)
参考:厚生労働省『別添 確認文書・確認項目一覧』
上記で挙げた必要書類の保管や提出方法についても、それぞれ以下の点を注意する必要があります。
書類の保管期間
サービス提供記録・実績記録・契約書・重要事項説明書など主要な帳票は少なくとも5年間保管が義務付けられています。
加算関係書類、苦情・事故報告なども同様に5年以上の保存が必要です。
電子データとして保存する場合も、適切な管理体制(バックアップ・改ざん防止等)が求められます。
注意点・現場の落とし穴(2025年報酬改定のポイント含む)
2024~2025年の報酬改定により、「記録の電子化」が本格化しており、紙・電子データいずれも即時提示できる体制が必須となりました。
加算要件を満たすためのエビデンス(実施記録、会議記録、研修受講記録等)が不十分だと減算・返還リスクがあります。
書類の様式・保存場所を事前に全職員と共有し、職員間での引き継ぎ漏れや取り違いに注意しましょう。
保管期間中は監査や実地指導ですぐ提示できるよう、原本・電子データ双方での管理がおすすめです。
提出方法
実地指導当日は、行政から指定された書類リストに基づき、原則「原本(コピー可)」を事業所内で提示しましょう。
一部書類は事前提出(郵送・オンライン提出)の場合もあり、通知内容をよく確認しましょう。
提出内容に不備や疑義がある場合は、事前に行政担当者に相談し、トラブルを未然に防ぎましょう。
運営指導においてよくある指摘事項と、それぞれの内容に対応した対策・改善ポイントを以下にまとめました。
指摘事項 | 対策・改善 |
---|---|
サービス提供記録の不備 | 記録内容・時間・担当者・利用者署名を”必ずその都度記入”し、後日追記を避ける。ICT/介護ソフトの活用で入力ミス防止。 |
加算要件エビデンス不足 | 研修受講・会議記録・加算算定の根拠書類を日々整理し、所定フォーマットで一元管理。最新の加算要件Q&Aも必ず確認。 |
契約書・重要事項説明書の不備 | 利用開始時・更新時に説明会実施+利用者家族の署名・捺印を”現場で必ず確認”。ファイリングルールの徹底。 |
職員体制・資格管理の不備 | 資格証コピー・研修記録は職員ごとファイル管理。出勤簿も併せて定期点検。 |
報酬請求と実績記録の不整合 | 記録・請求内容の”突合チェック”を月次で実施。ダブルチェック体制でヒューマンエラー防止。 |
モニタリング・アセスメント記録の不備 | 月1回の記録振り返り日を設定し、管理者が全件チェック。テンプレート利用で記載漏れ防止。 |
苦情・事故対応記録の不備 |
事案発生時は即時記録・管理者報告を徹底。再発防止策も必ず記載。 |
訪問介護の現場における運営指導に対する最大のリスクは、「書類の不備」や「属人化」です。書類整備を標準化・効率化することで、減算や業務停止リスクを大幅に軽減できます。
フォーマット統一&テンプレート活用
サービス提供記録、加算関係資料、モニタリング記録など、全ての帳票を統一フォーマットで運用
管理者が承認・チェックする仕組みの明確化
記録のリアルタイム入力・管理
業務終了時や訪問直後にその場で記録。後日まとめ書きは禁止
ICT・介護ソフトの入力支援機能も活用
定期的な内部監査・振り返り日設定
月1回など、全帳票の抜き打ち点検・ローテーションチェック
課題は即ミーティング・改善
2024~2025年の報酬改定で「記録の電子化推進」が加速しました。そのため、運営指導(実地指導)においても、徐々にICT・介護ソフトの有効活用が現場の関心テーマになりつつあります。そこで以下にICT・介護ソフトの導入メリットと製品選びのコツをまとめました。
導入メリット
記録の入力・保存・検索が簡単
加算要件の自動判定・漏れ防止アラート
担当者や管理者間の情報共有、チェック体制の強化
製品選びのコツ
自事業所の業務フローに合う「操作性」「導入実績」を重視
無料体験・デモ利用で現場職員の”使いやすさ”を確認
保守・サポート体制、データ移行の容易さも要確認
なお、介護のコミミでは介護ソフトを利用した管理者や職員から寄せられた1,000件以上の本音の口コミから選ばれた、おすすめ介護ソフトランキングも公開しています。ぜひ、以下の記事から運営指導(実地指導)対策の介護ソフトを比較・検討しましょう。
事業所の規模により、運営指導(実地指導)での書類整備・業務改善のポイントが異なります。以下に事業所の規模別のポイントをまとめました。
小規模事業所
担当者の「属人化」に注意し、複数人で記録・確認できる体制を意識しましょう。
管理者自ら定期チェックしつつ、外部コンサルや支援サービスの活用も選択肢として検討しましょう。
中規模事業所
業務分担と情報共有を徹底しつつ、必要に応じて管理職に帳票管理を一部委任しましょう。
職員研修の機会を年2回以上設け、運営基準・加算要件を全体で共有しましょう。
大規模事業所
ICT・介護ソフトによるデータ一元管理が必須となります。
内部監査部門や専門スタッフによる「二重チェック体制」を導入しましょう。
訪問介護の運営指導(実地指導)で慌てないために、日々確認すべき事項をリストアップします。
サービス提供記録・モニタリング記録は毎日記入・確認する
加算要件の根拠書類を毎月チェックする
契約書・重要事項説明書・資格証はファイルで一括管理する
ICT・介護ソフトに記録やエビデンスを即時保存する
管理者・現場職員が月1回ミーティングで最新の指導内容を共有する
書類やデータに疑わしい点や不明点ががあれば、すぐに行政・システムベンダーに確認する
本記事では、訪問介護事業所が直面する運営指導・実地指導・監査の最新動向や必要書類、業務改善のポイントを解説しました。2025年の法改正やICT導入強化をふまえ、現場で今すぐ実践できるノウハウを網羅しています。
この記事を参考に、安心して指導・監査を乗り越えましょう。
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