【2024年度最新】訪問介護の特定事業所加算とは?算定要件や単位数、デメリットを解説

介護報酬の加算・減算

【2024年度最新】訪問介護の特定事業所加算とは?算定要件や単位数、デメリットを解説

令和6年度の介護報酬改定により、訪問介護サービスにおける特定事業所加算も報酬区分や算定要件の変更が行われました。

本記事では、最新の算定要件や人材要件などの詳細について、分かりやすく説明していきます。

特定事業所加算を取得するメリット・デメリットなども知ることができます。

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今回の内容
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こみたろう

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特定事業所加算とは

特定事業所加算は、訪問介護事業所のうち、質の高い人材を揃え、質の高いサービスを提供し、介護度の高い利用者にサービスを提供している事業所を評価するために設けられた加算です。

加算率は最大で20%と高めに設定されていますが、算定要件が厳しいため、実際に算定している事業所の割合は低くなっています。

特定事業所加算には、居宅介護支援事業所向けと訪問介護事業所向けの2種類がありますが、以下では訪問介護事業所向けの特定事業所加算のメリットデメリットについて解説します。

特定事業所加算を取得するメリット

特定事業所加算を取得するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 加算による収入増加
  • 質の高いサービス提供による利用者満足度の向上
  • 職員の処遇改善による離職率の低下
  • 事業所の信頼性・ブランド力の向上

特定事業所加算を取得するデメリット

一方で、デメリットとしては以下のようなものがあります。

  • 利用者負担の金額が増える
  • 算定要件を満たすための負担増加(人材確保、研修実施、会議開催等)
  • 加算取得に向けた準備にかかる時間と手間
  • 加算を維持するための継続的な努力の必要性

利用者の負担金額が増えるなど、算定要件の理解を深めなければデメリット面が原因でサービスの質が落ちてしまう可能性もあります。

特定事業所加算の取得は容易ではありませんが、事業所の質の向上と安定的な運営につながる重要な取り組みといえるでしょう。

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令和6年介護報酬改定の更新概要

令和6年度の介護報酬改定では、特定事業所加算について以下のような変更点がありました。

※画像はクリックすると拡大します
※赤字箇所は2024年報酬改定で変更が生じた箇所です
参照元:「令和6年度介護報酬改定の主な事項について

変更の主要ポイントは下記となります。

報酬区分について

  • 現行の加算(Ⅳ)を廃止し、現行の加算(Ⅴ)を加算(Ⅳ)へ変更
  • 加算(Ⅴ)を新設

算定要件について

  • 現行の要件(6)を要件(1)に統合
  • 要件(6)、(7)、(8)、(14)を新設
  • 現行の要件(12)を削除

介護報酬改定の意図としては、中山間地域等でのサービス提供や看取り期の対応など、地域の実情に応じて継続的・柔軟に対応している事業所をより手厚く評価する方向性が打ち出されました。

以下では、こうした最新の情報も反映しながら、特定事業所加算の概要について解説していきます。

また、令和6年度の介護報酬改定で追加や変更された加算情報につきましては、以下で知ることが可能です。

特定事業所加算の算定率や加算率(単位数)

令和3年度の介護給付費実態統計によると、訪問介護事業所全体のうち、特定事業所加算を算定している割合は以下の通りです。

参照元:「訪問介護  社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)

加算率は特定事業所加算Ⅰが総単位数プラス20%となります。

一方で算定率は最も高い(Ⅱ)でも3割に満たない状況です。

質の高いサービス提供を促す観点から、厳しい算定要件と高い加算率のバランスが取れていると言えるでしょう。

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特定事業所加算の算定要件

特定事業所加算の算定要件は、体制要件、人材要件、重度対応要件の3つに大別されます。

以下、それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。

※画像はクリックすると拡大します
※赤字箇所は2024年報酬改定で変更が生じた箇所です
参照元:「令和6年度介護報酬改定の主な事項について

体制要件の詳細

(1) 訪問介護員等・サービス提供責任者の研修実施

訪問介護員等とサービス提供責任者それぞれについて、個別の研修計画を作成し、それに基づいて内部・外部研修を実施する必要があります。

研修計画には、研修の目的、内容、研修期間、実施時期といった内容を盛り込みます。

なお、作成の際には下記のポイントに留意してください。

  • 職責、経験年数、勤続年数、所有資格及び本人の意向等に応じ、職員をグループ分けして研修計画を作成しても問題ない
  • すべての職員が概ね1年に1回以上、なんらかの研修を実施する必要がある

令和6年度改定では、現行の要件(6)「サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施」を本要件に統合しています。

(2) 利用者に関する情報伝達を目的とした会議の開催

サービス提供責任者が主催する会議を、訪問介護員等全員が参加して定期的(概ね月1回以上)に開催します。

会議では、利用者の状態やサービス提供時の留意点、技術的な指導等について情報共有を図ります。

また本会議は、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」等を遵守することによって、リモート開催をすることも可能です。

(3) 利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告

サービス提供責任者は、担当する訪問介護員等に対し、サービス提供前に利用者情報や留意事項を文書等で伝達します。

具体的には以下のような内容を記載した文書を手渡しするか、FAX・メール等で送付します。

  • 利用者の心身の状況(ADL・意欲等)
  • 利用者の主な訴えやサービス提供時の要望
  • 家族を含む環境
  • 前回のサービス提供時の状況 等

一方、訪問介護員等はサービス提供後に、サービス提供責任者に状況を報告します。

報告は文書(電磁的記録を含む)にて行い、適切に保管します。

(4) 健康診断等の定期的な実施

常勤・非常勤を問わず全従業者に対し、少なくとも1年に1回、事業主負担で健康診断を実施します。

新たに加算を算定しようとする場合は、1年以内に健康診断が実施されることが計画されていれば差し支えありません。

(5) 緊急時等における対応方法の明示

サービス提供中の事故や急変等、緊急時の対応方法を利用者に書面で説明し、同意を得ておく必要があります。

具体的には以下のような内容を記載した文書を交付します。

  • 事故発生時の対応手順
  • 事故・急変時の連絡先(事業者の窓口、主治医、等)
  • 連絡先ごとの対応可能時間

説明文書は、契約時に交付する重要事項説明書に盛り込む方法でも差し支えありません。

(6) 24時間連絡・訪問体制の確保、及び看取り期の体制整備【令和6年度改定で新設】

本要件は、令和6年度改定で新設されたものです。

以下のような取り組みが求められています。

  • 訪問看護ステーション等の看護師と24時間連絡が取れる体制を整備し、必要に応じて訪問介護を行うことができる体制を整えること
  • 看取り期における対応方針を定めること
  • 看取りケアに関する職員研修を実施すること

 

なお、厚生労働省のQ&Aによれば、「24時間連絡ができる体制」の具体的なイメージは以下の通りです。

  • 夜間に訪問介護事業所の訪問介護員等が常駐している必要はない
  • 管理者を中心として、連携先の訪問看護ステーション等と夜間における連絡・対応体制に関する取り決めがなされていること
  • 管理者を中心として、訪問介護員等による利用者の観察項目の標準化(どのようなこ とが観察されれば連携先の訪問看護ステーション等に連絡するか)がなされていること
  • 事業所内研修等を通じ、訪問介護員等に対して上記の内容が周知されていること

※参照元:「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月 15 日)」の送付について

(7) 中山間地域等に居住する者へのサービス提供【令和6年度改定で新設】

事業所の通常の実施地域内において、中山間地域等に居住する利用者に対し継続的にサービス提供を行っている実績が必要となります。

当該実績を出すにあたっては、特別地域加算等を算定している利用者を除いた利用実人員を用いて算定することになります。

前年度又は前3月の平均利用人数が1人以上であれば、算定要件を満たします。

詳しくは厚生労働省が公表している、「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15 日)の送付について」をご確認ください。

(8) 利用者の心身の状況等の変化に応じた訪問介護計画の見直し【令和6年度改定で新設】

本要件は、令和6年度改定で新設されたものです。

利用者や家族を取り巻く状況に変化が生じた際に、サービス提供責任者が中心となって介護支援専門員、医療関係職種等と共同し、訪問介護計画の見直しを行うことを求めるものです。

なお、令和6年度改定に関する厚生労働省のQ&Aにおいては、具体的なイメージが下記のように記載されています。

  • 計画の見直しに係る多職種協働は、必ずしもカンファレンス等の会議の場で行われる必要はない
  • 通常の業務の中で、主治の医師や看護師、介護職員等の意見を把握し、計画の見直しを行えば差し支えないこと
  • 要件を満たすことのみを目的として、新たに多職種協働の会議を設けたり書類を作成したりする必要はないこと

※参照元:「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月 15 日)」の送付について

事業所の状況に合わせて無理のない方法で取り組んでいくことが大切といえるでしょう。

人材要件の詳細

(9) 訪問介護員等のうち一定割合以上の介護福祉士等の配置

訪問介護員等のうち、介護福祉士が100分の30以上、あるいは介護福祉士・実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・1級課程修了者の合計が100分の50以上配置されている必要があります。

なお、算定にあたっては次の点に留意が必要です。

  • 割合の算出は、常勤換算方法により、前年度(3月を除く)又は届出が属する月の前3ヶ月の平均により行う
  • 前年度の実績が6月に満たない場合は,届出月の属する前の3月について計算する
  • 前3月の実績により計算した場合は、届出以降、毎月継続的に所定の割合を維持しなければならない。割合を下回った場合、加算の取り下げが必要となる
  • 各月の前月の末日時点で資格を取得している、又は研修の課程を修了している者であること
  • 看護師等の資格を有する者については、1級課程修了者に含めて差し支えない

(10) 全てのサービス提供責任者が一定の実務経験を有する者であること

全サービス提供責任者が、3年以上の実務経験を有する介護福祉士、あるいは5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者のいずれかに該当する必要があります。

なお、算定にあたっての留意点は下記となります。

  • 実務経験年数はサービス提供責任者としての経験年数ではなく、在宅や施設を問わず介護職としての経験年数をいう
  • 資格取得前の実務経験年数も含めて差し支えない

(11) サービス提供責任者の常勤配置及び基準を上回る数の常勤配置

常勤のサービス提供責任者の配置が2人必要な訪問事業所については、(非常勤の常勤換算ではなく)常勤のサービス提供責任者を2人以上配置する必要があります。

また、常勤のサービス提供責任者の必要な配置が2人以下の訪問介護事業所については、基準により配置する必要がある常勤のサービス提供責任者の数を上回る数のサービス提供責任者を1人以上配置する必要があります。

令和6年度改定では、この要件が加算区分(Ⅲ)(Ⅳ)にも適用されることになりました。

(12) 勤続年数7年以上の訪問介護員等の配置

訪問介護職員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が100分の30以上であることが必要です。

なお、算定にあたっては以下の点に留意が必要です。

  • 割合の算出は、常勤換算方法により、前年度(3月を除く)又は届出が属する月の前3月の平均で行う
  • 勤続年数の算定は各月の前月の末日時点で判定する
  • 勤続年数には同一法人等が運営する他の介護サービス事業所や医療機関、社会福祉施設等での勤務年数を通算できる
  • 産前産後休業や育児・介護休業等の取得期間も含めて差し支えない

重度対応要件の詳細

(13) 利用者のうち一定割合以上の重度者の割合

事業所の利用者のうち、要介護4・5、日常生活自立度Ⅲ以上、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が100分の20以上である必要があります。

留意点は以下の通りです。

  • 割合の算出は、前年度(3月を除く)又は届出が属する月の前3月の平均により行う
  • 日常生活自立度の判定にあたっては、主治医の判定結果を用いる。医師の判定が無い場合は、認定調査票の「認知症高齢者の日常生活自立度」欄の記載を用いる
  • たんの吸引等を必要とする者の算定は、事業所が自治体から登録認可を受けている場合に限る

(14) 看取り期の利用者への対応実績【令和6年度改定で新設】

前12ヶ月間に、看取り期の利用者に対し、連携先の訪問看護ステーション等と24時間連絡体制を確保しながら訪問介護を実施した実績が1人以上ある必要があります。

(6)に記載しているような、看取り期の対応方針の策定と研修の実施も同時に求められます。

最後に

以上が特定事業所加算の主な算定要件です。

令和6年度の介護報酬改定では、中山間地域等でのサービス提供や看取り期の対応など、地域の特性に応じた柔軟な対応がより一層評価されるようになりました。

加算を取得するには、関係書類を整えた上で、体制等状況一覧表で届出を行う必要があります。

日々の業務の中で算定要件を意識し、必要な記録をつけておくことが重要です。

特定事業所加算は単なる加算という以上に、サービスの質の「見える化」という意味合いを持っています。

事業所の実情を踏まえながら、特定事業所加算の算定を目指してみてはいかがでしょうか。

利用者により質の高いサービスを提供できるとともに、事業所の信頼やブランド力の向上にもつながるはずです。

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この記事の筆者・監修者

  • 那須智樹

    那須智樹

    東京大学大学院 経済学研究科修士課程を修了。楽天株式会社の新サービス開発事業部や、NTTデータ経営研究所のコンサル業に従事した後、「介護のコミミ」を運営する株式会社Giver Linkにジョイン。現在は会社運営を行いながら、加算をはじめとしたお役立ち情報の発信や、ICTツール普及へ向けたセミナーなどを実施している。

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