介護報酬の加算・減算
2024年の介護報酬改定にて、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」を一本化し、「介護職員等処遇改善加算」となりました。
本記事では、介護職員等処遇改善加算について、算定要件の概要やサービス種別の加算率一覧表などが、一目で分かるように簡単にまとめられています。
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介護職員等処遇改善加算(以下、新処遇改善加算)は、2024年度の介護報酬改定で創設される新たな加算です。
簡単にまとめると、従来の介護職員処遇改善加算(以下、旧処遇改善加算)、介護職員等特定処遇改善加算(以下、旧特定加算)及び介護職員等ベースアップ等支援加算(以下、旧ベースアップ等加算)(以下、これらを「旧3加算」)を一本化し、制度の簡素化と取得率の引上げを図ったものです。
一本化の具体的な目的は以下の3点です。
1.事業者の賃金改善や申請に係る事務負担を軽減するため
2.利用者にとって分かりやすい制度とし、利用者負担の理解を得やすくするため
3.事業所全体として、柔軟な事業運営を可能とするため
新処遇改善加算は、2024年6月より開始され、同年6月以降も一定額以上の賃金改善を達成するよう、加算率の引き上げや配分方法の工夫が行われる予定です。
これにより介護現場で働く方々の賃金が、2024年度は2.5%、2025年度は2.0%のベースアップへとつながるものと期待されています。
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介護職員等処遇改善加算の資料をダウンロード2024年4月及び5月については、旧処遇改善加算、旧特定加算及び旧ベースアップ等加算(旧3加算)が算定可能です。
旧3加算の算定率の一覧表は、以下の通りです。
引用元:厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
※注:介護予防・日常生活支援総合事業によるサービスを行う事業所は、訪問型は訪問介護と、通所型は通所介護と同じとする。
また、2024年2月から5月までの間、介護職員等ベースアップ等支援補助金が実施されます。
これは、2024年度の介護報酬改定による新処遇改善加算による賃上げ効果を前倒しで実施するための補助金です。
対象は介護職員ですが、事業所の判断により介護職員以外の職種の処遇改善にも充てることが可能とされています。
月額平均6,000円相当(給与の約2%)の賃上げに相当する額が補助され、サービス種別ごとに一律の交付率が設定されています。
引用元:厚生労働省資料「令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金について」
※ (介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導、居宅介護支援、介護予防支援は交付対象外。
※ 対象サービスごとに介護職員数(常勤換算)に応じて必要な交付率を設定し、各事業所の総報酬にその交付率を乗じた額を支給。
本補助金は旧ベースアップ等支援加算を取得している事業所であれば、旧3加算とは別に取得が可能なため、忘れずにご確認ください。
2024年6月以降の新処遇改善加算の算定率の一覧表は、以下の通りです。
介護職員等処遇改善加算 | ||||
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | |
訪問介護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
夜間対応型訪問介護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
(介護予防)訪問入浴介護 | 10.0% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
地域密着型通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
(介護予防)通所リハビリテーション | 8.6% | 8.3% | 6.6% | 5.3% |
(介護予防)特定施設入居者生活介護 | 12.8% | 12.2% | 11.0% | 8.8% |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 12.8% | 12.2% | 11.0% | 8.8% |
(介護予防)認知症対応型通所介護 | 18.1% | 17.4% | 15.0% | 12.2% |
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
看護小規模多機能型居宅介護 | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 18.6% | 17.8% | 15.5% | 12.5% |
介護老人福祉施設 | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
地域密着型介護老人福祉施設 | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
(介護予防)短期入所生活介護 | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
介護老人保健施設 | 7.5% | 7.1% | 5.4% | 4.4% |
(介護予防)短期入所療養介護(老健) | 7.5% | 7.1% | 5.4% | 4.4% |
(介護予防)短期入所療養介護 (入院等(老健以外)) |
5.1% | 4.7% | 3.6% | 2.9% |
介護医療院 | 5.1% | 4.7% | 3.6% | 2.9% |
(介護予防)短期入所療養介護(医療院) | 5.1% | 4.7% | 3.6% | 2.9% |
引用元:厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
※注:介護予防・日常生活支援総合事業によるサービスを行う事業所は、訪問型は訪問介護と、通所型は通所介護と同じとする。
ただし、新処遇改善加算への円滑な移行を図る観点から、経過措置として令和6年度中に限り新処遇改善加算Ⅴが設けられております。
その加算率は2023年5月31日時点における旧3加算の算定状況に応じて、下記の14区分が設定されています。
各区分の算定要件などは厚生労働省の通知などをご確認ください。
引用元:厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
※画像はクリックすると拡大して確認可能です
※注:介護予防・日常生活支援総合事業によるサービスを行う事業所は、訪問型は訪問介護と、通所型は通所介護と同じとする。
新処遇改善加算Ⅰを算定するためには、以下の要件を満たす必要があります。
① 月額賃金改善要件Ⅰ(月給による賃金改善)
② 月額賃金改善要件Ⅱ(旧ベースアップ等加算相当の賃金改善)
③ キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
④ キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
⑤ キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)
⑥ キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)
⑦ キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
⑧ 職場環境等要件
ただし、新処遇改善加算ⅡについてはキャリアパスⅤの要件、新処遇改善加算Ⅲについては⑥及び⑦の要件、新処遇改善加算Ⅳについては⑤から⑦までの要件を満たさなくても算定可能です。
詳しい対応表は下記となります。
引用元:厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
※画像はクリックすると拡大して確認可能です
※注:(○)は新加算Ⅰ~Ⅳの算定前に旧処遇改善加算を算定しており、かつ旧ベースアップ等支援加算が算定だった場合に満たす必要がある要件
また、2024年度中は、キャリアパス要件について一定の経過措置が設けられています。
具体的には、キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲについて、就業規則等の整備や研修の計画策定等を2025年3月末までに行うことを誓約すれば、2024年度当初から要件を満たしたものとみなされます。
さらに、月額賃金改善要件Ⅰ、及び職場環境等要件の一部については、後の章で解説する通り2024年度は適用が猶予されます。
月額賃金改善要件Ⅰは、新処遇改善加算Ⅳを算定した場合に得られる加算額の1/2以上を、基本給又は決まって毎月支払われる手当(以下、基本給等)により賃金改善することを求める要件です。
例えば、介護報酬が1,000万円の訪問介護事業所が新処遇改善加算Ⅳを算定する場合、加算額は145万円(=1,000万円×14.5%)となりますから、そのうちの1/2である72.5万円以上を基本給等で賃金改善する必要があります。
新処遇改善加算ⅠからⅢまでの加算を取得する場合も、新処遇改善加算Ⅳを算定した場合に得られる加算額を基準として、同様の賃金改善を求められます。
なお、月額賃金改善要件Ⅰは、2024年度中は適用が猶予されますが、2025年度以降の算定に向けた準備を求める観点から、2024年度の届出の際にも任意の記載事項とされています。
月額賃金改善要件Ⅱは、旧処遇改善加算を算定していたが旧ベースアップ等加算を算定していなかった事業所が、2026年3月末日までに新処遇改善加算Ⅰ~Ⅳのいずれかを新規に算定する場合に適用される要件です。
旧ベースアップ等加算を算定した場合の加算額の3分の2以上を基本給等で改善することが求められます。
なお、旧ベースアップ等加算に相当する加算額は、新処遇改善加算の加算額に一定の係数を乗じて算出します。
キャリアパス要件Ⅰは、介護職員の任用要件(賃金に関するものを含む)及び賃金体系を定めることを求める要件です。
具体的には、次の3点を全て満たす必要があります。
1.介護職員の任用の際における職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む)を定めていること
2.「1.」に掲げる職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く)について定めていること
3.「1.」及び「2.」の内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること
2024年度中は、就業規則等の整備を2025年3月末までに行うことを誓約すれば、当該年度当初から要件を満たしたものとみなされます
キャリアパス要件Ⅱは、資質向上のための目標及び具体的な計画を策定し、研修の実施又は研修の機会を確保することを求める要件です。
具体的には、次の2点を満たす必要があります。
1.介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び次のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること
・資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT等)するとともに、介護職員の能力評価を行うこと
・資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること
2.上記「1.」について、全ての介護職員に周知していること。
また2024年度中は、研修の計画策定等を2025年3月末までに行うことを誓約すれば、当該年度当初から要件を満たしたものとみなされます。
キャリアパス要件Ⅲは、経験や資格等に応じた昇給の仕組みを設けることを求める要件です。
具体的には、次の2点を満たす必要があります。
1.介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。
具体的には、次のいずれかに該当する仕組みであること
・経験に応じて昇給する仕組み:「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み
・資格等に応じて昇給する仕組み:介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組み
・一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み:「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組み
2.上記「1.」の内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
また2024年度中は、就業規則等の整備や昇給の仕組みの整備を2025年3月末までに行うことを誓約すれば、当該年度当初から要件を満たしたものとみなされます。
キャリアパス要件Ⅳは、経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金が年額440万円以上となることを求める要件です。
ただし、次のような例外的な場合であって、合理的な説明がある場合は当てはまりません。
・小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
・職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合
なお、2024年度中は、「経験・技能のある介護職員のうち1人以上は年額440万円以上」に代えて、「新処遇改善加算の加算額のうち旧特定加算に相当する部分による賃金改善額が月額平均8万円以上の職員を1人以上設定」でも要件を満たすこととしても、問題はありません。
キャリアパス要件Ⅴは、一定以上の介護福祉士等を配置することを求める要件です。
具体的には、サービス種類ごとに下表に掲げる加算の算定が必要とされています。
引用元:厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
※画像はクリックすると拡大して確認可能です
※注1:地域密着型通所介護のサービス提供体制強化加算Ⅲイ又はロは療養通所介護費を算定する場合のみ
※注2:訪問型サービス(総合事業)は、対象事業所に併設する指定訪問介護事業所において、「特定事業所加算Ⅰ」または「Ⅱ」を算定していること。または対象事業所において、特定事業所「加算Ⅰ」若しくは「Ⅱ」に準じる市町村独自の加算を算定していることを要件とする。
職場環境等要件は、新処遇改善加算Ⅰ~Ⅳのいずれかを算定する場合に適用される要件です。
2025年度以降は、下表の6区分について、新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合は、各区分ごとに2以上の取組を実施(「生産性向上のための取組」のみ3以上の取組を実施(うち⑰又は⑱は必須))し、新加算Ⅲ又はⅣを算定する場合は、各区分ごとに1以上の取組を実施(「生産性向上のための取組」のみ2以上の取組を実施)する必要があります。
※画像はクリックすると拡大して確認可能です
2024年度は、上記の要件が適用猶予され、新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合は、各区分ごとに1以上の取組を実施し、新加算Ⅲ 又はⅣを算定する場合は、各区分すべての中から1以上の取組を実施することで要件を満たすことができます。
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アドバイザーに相談する処遇改善加算の計算方法としては、以下の3つのステップで進めることが可能です。
まずは、1ヵ月あたりの総単位数を計算します。
次に、総単位数に加算率を掛けましょう。
最後に処遇改善加算の総単位数を金額に換算します。
補足
※各単位数の参照元は以下でご確認ください
※地域区分の参照元は「地域区分」にてご確認ください。
上で計算した「処遇改善加算の総額」が処遇改善加算の計算方法の答えとなります。
また、エクセルでの処遇改善加算計算方法を知りたい方は、各都道府県で発行しているエクセルをダウンロードするか、厚生労働省のHP上で必要な別紙様式のエクセルからダウンロード可能です。
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新処遇改善加算を算定手順を簡単にまとめると、
1.体制等状況一覧表等の届出(居宅系サービスの場合には算定開始月の前月15日まで、施設系サービスの場合は当月1日まで)
2.処遇改善計画書等の作成・提出 (算定開始月の前々月の末日まで)
3.実績報告書等の作成・提出(各事業年度における最終の加算の支払があった月の翌々月の末日まで)
が必要となります。
複数の事業所を有する事業者については、処遇改善の計画等について法人単位で一括して届出書を作成することも可能です。
また、小規模事業者(同一法人内の事業所数が10以下)や、2024年3月以前に加算を算定しておらず同年6月以降に新処遇改善加算Ⅲ又はⅣを新規に算定する事業所については、別様式を用いた処遇改善計画書・実績報告書等の作成・提出が可能となっています。
処遇改善加算1と2の違いは、以下の画像「令和7年度以降の新加算Ⅰ~Ⅳの算定要件(賃金改善以外の要件)」を見ればわかりやすいです。
上記の画像で、処遇改善加算1と2の違いは「キャリアパス要件Ⅴ」の「介護福祉士等の配置要件」を満たす必要があるかどうかの違いが分かります。
処遇改善加算Ⅰ~Ⅳの配分ルールとしては、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な配分を認める」とされています。
「新加算(Ⅰ~Ⅳ)は、加算・賃金改善額の職種間配分ルールを統一する」ことが原則です。
厚生労働省のホームページ上で公開されている、介護職員の処遇改善の計画書記入例は以下からダウンロード可能です。
出典:厚生労働省 処遇改善計画書記入例
処遇改善加算の作成用、基本情報入力シートとなりますので、計画書の記入例として参考にしてみてください。
処遇改善加算は原則ピンハネはできない制度となっております。
ピンハネできない理由は、「国や地方自治体から支給されたお金は、全額介護職員に支払わなければならない」ためです。
指定権者(都道府県等)に計画書や実績書を提出し、指定権者(都道府県等)から国保連に情報提供されたのちに、加算の支払いが行われる仕組みとなっております。
ピンハネ、内部告、未払い違法などは良くある質問となりますが、これらは原則できません。
2024年度の介護報酬改定では、介護現場で働く職員の処遇改善を図るため、新たな介護職員等処遇改善加算が創設されました。
本記事では、新処遇改善加算の概要と算定要件、事務処理手順等について簡単に分かりやすく説明してきました。
新処遇改善加算は、従来の加算を一本化し、事業者及び職員にとってよりわかりやすく、取得しやすい仕組みとなっています。
一方で、キャリアパス要件の適合や職場環境等要件の充足など、算定要件はより高度化・多様化しています。
介護人材の確保・定着は喫緊の課題であり、処遇改善は採用や離職防止の重要な要素の一つです。
加算の趣旨を理解し、適切に算定・実施することで、魅力ある職場づくりにつなげていきましょう。
また、その他介護報酬改定2024の変更点を知りたい方は、以下の記事を読めば要件をすぐに知ることができます。
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