介護報酬の加算・減算介護施設の経営・運営改善
令和9年度(2027年度)の介護報酬改定は、2026年12月中に報酬・基準の基本的な考え方がとりまとめられ、令和9年1月頃に改定案が諮問・答申される予定です(令和8年10月15日時点)。改定率と施行日は、まだ決まっていません。
このコラム記事では、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会の資料にもとづき、スケジュール、9月30日に示された「基本的な視点(案)」、訪問介護で議論されている論点を解説します。
決定した事項と審議中の事項を分けて書いているので、あなたの事業所が今から確認しておくことを洗い出せます。分科会が進むたびに、このコラム記事を更新していきます。
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厚生労働省は、令和8年4月27日の第256回分科会で、令和9年度改定に向けた検討の進め方を示しました。日程は次のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年4月〜夏頃 | 主な論点について議論、事業者団体等からのヒアリング |
| 令和8年10〜12月頃 | 具体的な方向性について議論 |
| 令和8年12月中 | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ(基準は、自治体の条例の制定・改正に要する期間を踏まえ、先行してとりまとめ) |
| 令和9年度政府予算編成 | 12月のとりまとめと諮問・答申の間に位置づけられている |
| 令和9年1月頃 | 介護報酬改定案の諮問・答申 |
出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第256回(令和8年4月27日)資料4「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について」。日程は案の段階の記載です。
分科会は、これまでに次のように進んでいます。訪問介護を扱ったのは、6月29日の第259回です。
| 回(開催日) | 主な議題 |
|---|---|
| 第259回(6月29日) | 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、居宅介護支援、福祉用具など |
| 第262回(8月5日) | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護、高齢者住まいへのサービス提供のあり方、地域区分 |
| 第263回(8月28日) | 介護人材確保に向けた処遇改善等、生産性向上、災害時の業務継続、ハラスメント対策 |
| 第265〜267回(9月10日・14日・16日) | 関係団体等との意見交換会 |
| 第268回(9月30日) | 基本的な視点(案) |
| 第269回(10月9日) | 定期巡回、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護 |
| 第270回(10月14日) | 通所介護、通所リハビリテーション、短期入所など |
出典:厚生労働省「社会保障審議会(介護給付費分科会)」開催一覧。
令和8年度の期中改定では、令和7年12月の予算編成を経て改定率が示され、12月26日の第252回分科会に報告されました。令和9年度の改定率も、12月の予算編成を経て示される流れになる見通しです。
今後の注目点は、次の3つです。
これまでの分科会は、サービスごとに論点を整理する流れで進んできました。10月中旬の時点では、通所系、定期巡回、小規模多機能型などの議論が出そろい、全サービスの論点整理は終盤に入っています。次の山場は、12月のとりまとめです。

9月30日の第268回分科会で、厚生労働省は「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」を示しました。4月以降、計9回の分科会と3回の関係団体等との意見交換会を踏まえたもので、改定の方向性は次の5点に集約されています。
| 視点 | 資料に書かれている内容 |
|---|---|
| 第1:物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善 | 物価や賃金の上昇等を介護報酬に適切に反映し、経営の安定を図る。他職種と遜色のない処遇改善を実現し、人材の定着・離職防止につなげる |
| 第2:人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築 | 中山間・人口減少地域で「特定地域サービス」等が機能するよう、サービス提供のあり方、人員配置基準、報酬を検討。中山間地域の加算のあり方の見直しにも触れている |
| 第3:地域包括ケアシステムの深化 | 医療と介護の連携、認知症の高齢者への対応、業務継続や高齢者虐待防止、LIFEの一層の活用など |
| 第4:職場環境の改善と生産性の向上 | 居宅系サービスも含めた、AI等の介護テクノロジーの活用や業務のタスクシフト/シェアを推進 |
| 第5:制度の安定性・持続可能性の確保 | 報酬の評価の適正化・重点化を進め、報酬体系の整理・簡素化を図る |
出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第268回(令和8年9月30日)資料1。「案」の段階の資料です。
背景として資料は、令和7年度介護事業経営概況調査で全サービスの赤字事業者の割合が約4割だったことを挙げています。介護サービスは公定価格のため、物価や賃金の上昇によるコスト増を事業者が価格に反映しにくい点も指摘されています。
なお、特定地域サービスは、令和8年6月に成立した社会福祉法等の一部を改正する法律で創設された仕組みです。
令和8年度に行われた期中改定との違いは、次のコラム記事で確認できます。

訪問介護は、6月29日の第259回分科会で取り上げられました。資料には、現状と2つの論点が示されています。
| 項目 | 資料の数値・記載 |
|---|---|
| 請求事業所数 | 35,497事業所(令和2年以降、微増) |
| 1事業所あたりの平均利用者数 | 31.3人(直近) |
| 利用者数 | 約111万人。約60%が要介護2以下 |
| 費用額 | 約1.2兆円(令和5年度) |
| 収支差率 | 令和4年 7.8%、令和5年度 11.1%、令和6年度 9.6%。地域の特性や事業所規模・事業形態等に応じて様々 |
出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回(令和8年6月29日)資料1「訪問介護」。
資料は、訪問介護事業所の経営状況が立地、規模、事業形態によって様々であると指摘しています。そのうえで、令和9年度改定では、収支状況を全国平均の多寡だけで見るのではなく、こうした特性を踏まえて検討する必要があるとしています。
あわせて、訪問介護員の不足が大きな課題である点を踏まえ、利用者の状態に応じたサービスを地域で安定的に提供するための方策も論点に挙がっています。
報酬の加算は、累次の改定で種類が増え、要件が複雑になっています。令和6年度改定の審議報告では、利用者のわかりやすさと事務負担軽減の観点から、報酬体系の簡素化を引き続き検討するとされました。資料は、算定率が低い加算と高い加算を、どう考えるかを論点としています。
特定事業所加算については、地域別の算定状況に大きな変化は見られないこと、前回改定で新設した加算Ⅴをはじめ、算定が低調な区分があることが記載されています。
特定事業所加算の区分ごとの要件は、次のコラム記事で確認できます。
第259回の資料は、中山間・人口減少地域のサービス提供体制と、高齢者住まいに対するサービス提供のあり方を、別の回で議論する想定と記しています。また、9月30日の基本的な視点(案)では、居宅系サービスも含めたAI等の介護テクノロジーの活用が明記されました。訪問介護にも関わる論点なので、今後の資料に注目してみてはいかがでしょうか。

令和9年度の処遇改善加算がどうなるかは、まだ決まっていません。一方で、令和8年度に適用されている要件は確定しています。確定している事項と審議中の事項を分けて見ると、判断を誤りにくくなります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確定(令和8年度) | 令和8年6月以降、処遇改善加算はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの区分。ⅠロとⅡロには「令和8年度特例要件」があり、訪問・通所系サービスは、ケアプランデータ連携システムの利用などが示されている(申請時は利用の誓約で算定可能) |
| 確定(令和8年度) | キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)が必要なのはⅠイ・Ⅰロ。訪問介護では、特定事業所加算ⅠまたはⅡの届出が、この要件を担保するものとして示されている |
| 審議中 | 基本的な視点(案)は、他職種と遜色のない処遇改善の実現、報酬体系の整理・簡素化を掲げている。令和9年度の加算の形は未決定 |
| 未決定 | 改定率、施行日、各加算の単位数・要件の変更 |
出典:厚生労働省 老発0313第6号(令和8年3月13日)別紙1 表2-2・表3、厚生労働省「介護職員の処遇改善」、第268回分科会資料1。
つまり、処遇改善加算の上位区分を目指す訪問介護事業所は、特定事業所加算ⅠまたはⅡの届出が前提になります。令和9年度改定で特定事業所加算の要件や評価が変わるかは分かりませんが、今の届出状況と要件の運用状況を確認しておくと、改定後の判断が早くなります。
処遇改善加算の最新の要件と届出は、次のコラム記事で確認できます。

改定内容が決まる前でも、確認しておくと役立つ項目があります。次の表を、12月のとりまとめまでの目安にすると良いでしょう。
| 確認すること | 確認先・方法 |
|---|---|
| 分科会資料の更新(12月のとりまとめ、1月の諮問・答申) | 厚生労働省「社会保障審議会(介護給付費分科会)」のページ |
| あなたの事業所の収支と加算の算定状況 | 直近の請求実績。立地・規模・事業形態を踏まえた検討が論点になっている |
| 特定事業所加算の届出区分と要件の運用状況 | 体制等状況一覧表、指示出し・報告、研修、会議の記録 |
| 処遇改善加算の算定区分と、上位区分への移行の可否 | 処遇改善計画書、キャリアパス要件、特例要件 |
| 届出の期日 | 令和8年度の通知では、居宅系サービスの体制届出は算定を開始する月の前月15日。令和9年度分は、改定後の通知で示される |
特定事業所加算では、サービス提供前の指示出しと提供後の報告が、全訪問で求められます。紙やスプレッドシートで管理している場合、記録の整備に時間がかかりやすい部分です。
改定後に慌てないよう、今のうちから運用を見直しておくと安心です。
見直しのポイントは、次の2つです。

A. 厚生労働省の日程案では、令和8年12月中に基本的な考え方をとりまとめ、令和9年1月頃に諮問・答申の予定です。改定率は、令和9年度政府予算編成を経て示される流れです(令和8年10月15日時点)。
A. 令和8年10月15日時点では決まっていません。令和8年度の期中改定の改定率は、令和8年度介護報酬改定の解説コラム記事で確認できます。
A. 施行日は、令和8年10月15日時点の資料に示されていません。諮問・答申のころに明らかになる見込みです。
A. 決まっていません。第259回の資料は、収支状況を全国平均だけで見ず、立地・規模・事業形態を踏まえて検討する必要があるとしています。
A. 令和9年度以降の加算の形は決まっていません。基本的な視点(案)は、他職種と遜色のない処遇改善の実現と、報酬体系の整理・簡素化を掲げています。最新の要件は、処遇改善加算の解説コラム記事で確認できます。
令和8年10月15日時点の情報です。分科会の資料が更新され次第、このコラム記事を更新します。

改定の議論は、資料が出るたびに内容が変わります。訪問介護の経営全体の中で、加算や運営指導、人材の課題をどの順番で整えるかは、次のコラム記事で段階別に確認できます。
参考資料(厚生労働省)
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