介護現場の声・悩み
どのような行動に対処するべきか?
具体的な対策は何か?
もしも認知症の患者を介護することになった場合、このように気になっている人は多いでしょう。
認知症は記憶や思考が妨げられるので、患者はとても苦しんでいます。
それだけに、介護する側は患者の気持ちを理解し、寄り添っていかなくてはなりません。
また、認知症が原因となって、思わぬ事故が起きてしまうこともあります。
そうならないよう、介護士に求められる責任は重大なのです。
この記事では、認知症の初期症状や介護士に必要な対策までを解説していきます。
この記事を最後まで読めば、認知症にしっかりと向き合う心構えができるでしょう。
そして、介護の現場でも実践できる知識を得られます。
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口コミランキングを見る厚生労働省では、認知症を「脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」と定義してきました。
そもそも認知症はさまざまな種類に分けられます。
ここでは、中でも頻度の高いものを紹介していきます。
ただし、認知症に共通しているのは「認知機能が低下していく」ということです。
正常に働いていた認知機能が後天的に低下することで、日常生活に支障をきたすケースも珍しくありません。
認知症の介護には専門的なスキルと知識が必要です。
そのため、患者の家族だけでケアするのは難しく、介護士や介護施設が頼りにされているのです。
参考:厚生労働省「認知症」
記憶力や判断力の低下が、アルツハイマー型認知症の大きな特徴です。
初期段階では、「今朝の食事が思い出せない」「人の顔や名前を覚えられない」という軽度の記憶障害が現れます。
ただし、身体的には何も異変が起きないため、前兆が見過ごされてしまうケースも少なくありません。
やがてアルツハイマーが進行していくと、身近な人すらも認識できなくなります。
被害妄想やうつ状態、過度な興奮などもアルツハイマーによく見られる症状です。
アルツハイマーの原因は、異常なたんぱく質が脳神経を破壊することだとされています。
まずは記憶をつかさどる海馬が萎縮し、やがて脳全体の機能が低下していきます。
老化現象と似ているものの、症状が悪化するスピードはより急です。
参考:相談e-65.net「アルツハイマー型認知症の原因・症状」
アルツハイマー病情報サイト「アルツハイマー病の基礎知識」
比較的、判断力や記憶力に影響しにくいのが血管性認知症です。
そのかわり、感情の起伏が激しくなるのは特徴です。他人のささいな言葉や態度が気になり、怒りや悲しみを覚えることがあります。
激しく取り乱すケースも少なくありません。
また、手足の感覚が麻痺することもあります。
物をつかみにくい、手足に刺激を感じにくいと思ったら、血管性認知症の初期症状を疑いましょう。
血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの後遺症として発症することが多いといえます。
これらの障害が引き起こされると、脳の神経細胞に大きなダメージが残ってしまいます。
そして、これまでは正常だった心や体の動きに変調をきたしてしまうのです。
脳梗塞や脳出血が再発してしまうと、血管性認知症も進行してしまいます。
参考:相談e-65.net「血管性認知症の原因・症状」
恩賜財団済生会「血管性認知症」
注意力の欠如や視覚障害などの特徴を、レビー小体型認知症は持っています。
初期症状において、レビー小体型認知症はかすかに思考が鈍ったり、睡眠障害が現れたりします。
最初はささいな程度なので、認知症が始まったと自覚できないケースも少なくありません。
また、日によっては好調になりもするため、発覚が遅れがちです。
しかし、レビー小体型認知症が進行していくと、そこにないものが見えたり、抑うつ症状が起こったりします。
レビー小体型認知症の原因は「レビー小体」と呼ばれる異常性のたんぱく質です。
レビー小体が脳の神経細胞の中で塊になり、大脳の働きを阻害することで認知症を招きます。なお、レビー小体型認知症の進行は好不調を繰り返しながら、徐々に悪化していきます。
参考:相談e-65.net「レビー小体型認知症の原因・症状」
社会性や協調性が低下していき、他人といても苦痛になっていくのが前頭側頭葉変性症の特徴です。
「急に集団からいなくなってしまう」「毎日、同じ食べ物しか欲さない」などの症状が現れ、周囲を困らせます。
初期段階では単にこだわりの強い人物として認識されることも多く、なかなか認知症だと思われにくいでしょう。
そのまま症状がエスカレートすると危険な行動にまで発展しかねません。
また、言語や記憶の障害も起こり始めます。
前頭側頭葉変性症は、前頭葉と側頭葉を中心とした脳の萎縮が原因です。
ただし詳細は2021年9月の時点でまだ研究中であり、治療も対症療法にとどまっています。
認知症の中でも、比較的若い年代から起こりやすいとされています。
参考:日本医療研究開発機構「アルツハイマー病と前頭側頭葉変性症の共通病態を発見―新たなシグナルを標的とする早期治療法の開発にむけて―」
難病情報センター「前頭側頭葉変性症(指定難病127)」
介護施設で認知症対策を行うにあたり、もっとも重要なのは「安心と安全」を気にかけ続けることです。
認知症の患者の多くは、判断力や思考力が低下しています。
徘徊や暴力、暴言などの問題行動を起こすことも珍しくありません。
患者ごとの特徴や注意点を全スタッフで共有し、信頼関係を築いていくことが大事です。
そのうえで、認知症ではない利用者とフロアを分けるなどして、誰もが穏やかに過ごせる環境を整えましょう。
それでも、食堂やロビーなど、人が集まる場所ではトラブルが起きかねません。
これらのスペースには介護士を常駐させ、喧嘩や事故が起きる前に対処できるよう意識します。
最低でも、1つのテーブルに1人の介護士が付き添うようにしましょう。
介護士にとって、認知症患者の行動パターンを把握しておくことは重要です。
特に、事例を参考にすれば実践的な対策を練りやすくなるでしょう。
ここからは、介護施設利用者である認知症患者の事例や対策を紹介していきます。
認知症患者が勝手に外出したり、施設内をさまよったりする「徘徊」は、事故を引き起こしかねない危険行為です。
介護施設でも多くの利用者が徘徊をしてしまうため、介護士による対策は必須です。ただし、徘徊をする人に対し、「いけない」「ダメだ」と頭ごなしに否定するのは厳禁です。徘徊をするとき、利用者には自分なりの思いがあります。「家に帰りたい」「子どものころのように遊びまわりたい」という気持ちを否定されてしまうと、利用者は話を聞いてはくれません。 そこで、「では、お迎えが来るまで待ちましょう」というように、話を合わせながら引き留めるのが理想です。力で強引に止めるのも、本人の心に傷を残すので避けるようにしましょう。
認知症によって、人付き合いが難しくなってしまった患者もたくさんいるでしょう。
感情が安定しないので、他の利用者と喧嘩してしまうタイプもいます。
また、気分がふさぎ込んで人と話したがらない人も珍しくありません。
ただ、彼らや彼女らを介護士が放置してしまうと、認知症をますます進行させてしまう可能性があります。
なぜなら認知症の対策として、脳に刺激を与えることが肝心だからです。患者をコミュニケーションの場から引き離してしまうと、脳への刺激がなくなってしまいかねません。
そこで、手芸や簡単なゲームなど、他人と関われる趣味を勧めてみましょう。
そして、「よくできましたね」と積極的に褒めてあげれば、患者が自分から人と関われるきっかけを与えられます。
ときに介護士は、暴言や暴力など認知症患者の問題行動に向き合わなければなりません。
そのストレスから、患者に厳しくあたってしまうこともありえます。
しかし、認知症患者は思考力が低下していても、感情はしっかりと働いています。
もしも介護士からきつい言葉を浴びせられたとしたら、前後関係を飛ばして「嫌なことを言われた」という不快感だけを覚えてしまうのです。
結果的に、ますます介護士との関係性が悪化していくでしょう。
逆をいえば、介護士が優しく寄り添ってあげれば、患者にはポジティブな感情だけが残っていきます。
「あの介護士は信用できる」と思ってもらえれば、暴言が減っていく可能性もあるでしょう。
患者とのコミュニケーションでは感情に任せず、相手への思いやりが肝心なのです。
参考:公益社団法人認知症の人と家族の会「No.12–介護のコツは、ほめること-介護者は認知症になるべし」
認知症患者の症状は、その種類によってさまざまです。
記憶障害からうつ状態、被害妄想まで、患者によって個人差が現れるでしょう。
介護施設で働く以上、認知症患者を一括りにしないことが重要です。
それぞれの特徴をスタッフ間で共有しながら、一人ひとりの気持ちに寄り添っていく介護が求められます。
そうやって信頼関係を築ければ、患者との意思疎通がスムーズになって事故やトラブルも防ぎやすくなります。
覚えておきたいのは、認知症患者の問題行動には本人なりの理由があるという点です。
患者を一方的に否定してしまうとその誇りは傷つき、介護士への信頼も失われてしまいます。
患者の気持ちを理解できるよう、コミュニケーションを重視して介護に努めましょう。
認知症の方や施設利用者の方の気持ちを理解できるよう、書籍等の情報媒体を活用してより理解度を深めることが必要です。
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