【令和8年度版】処遇改善加算とは?障害福祉サービスの加算率・要件・届出を解説

介護報酬の加算・減算

【令和8年度版】処遇改善加算とは?障害福祉サービスの加算率・要件・届出を解説

障害福祉サービス事業所を運営するうえで、職員の処遇改善は経営判断の柱のひとつです。本記事では、障害福祉サービス等報酬における福祉・介護職員等処遇改善加算(以下「処遇改善加算」)の制度概要と算定要件、サービス別の加算率一覧を解説します。あわせて令和8年6月施行の改正要点も取り上げます。

掲載内容は、令和8年(2026年)3月時点で厚生労働省から公表されている告示・通知・改定検討チーム資料に基づいています。令和8年6月施行分は正式運用前の段階であり、詳細は各指定権者(都道府県等)へご確認ください。

処遇改善加算(障害福祉サービス等報酬)とは

制度の目的と報酬上の扱い

処遇改善加算は、障害福祉サービス事業所で働く職員の賃金改善を目的に、基本報酬に上乗せして支給される加算です。事業所が一定の要件(キャリアパス整備・賃金改善・職場環境改善)を満たし、指定権者へ処遇改善計画書を届け出ることで算定できます。

加算として受け取った額は、全額を職員の賃金改善に充てる必要があります。つまり事業所の収益ではなく、職員の給与・手当・賞与等へ確実に配分される仕組みです。

介護の「介護職員等処遇改善加算」との違い

名称が似ていますが、障害福祉サービスの処遇改善加算と介護保険の「介護職員等処遇改善加算」は根拠法令と報酬体系が異なります。障害福祉は障害者総合支援法・児童福祉法に基づく報酬で、介護保険は介護保険法に基づく報酬です。加算率や届出先も異なるため、両制度を運営する事業所は区別して管理する必要があります。

介護保険側の処遇改善加算について詳しくは以下の記事をご覧ください。

算定のしくみ — 加算区分の考え方

処遇改善加算は、事業所が満たす要件の水準に応じて加算Ⅰ〜Ⅳの4区分に分かれます。数字が小さいほど要件が厳しく、加算率が高い設計です。

  • 加算Ⅰ:キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳ+職場環境等要件をすべて満たす
  • 加算Ⅱ:キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲ+職場環境等要件を満たす
  • 加算Ⅲ:キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ+職場環境等要件を満たす
  • 加算Ⅳ:キャリアパス要件Ⅰ+職場環境等要件を満たす

令和8年6月からは、加算Ⅰ・Ⅱにそれぞれ上位区分「ロ」が新設されました(従来の区分は「イ」に再分類)。上位区分の取得には生産性向上等に関する「令和8年度特例要件」を満たす必要があります。Ⅲ・Ⅳには上位区分はありません。

サービス種別ごとの加算率一覧

対象となる障害福祉サービスの範囲

処遇改善加算の対象は幅広く、主に以下のサービスが該当します。

  • 訪問系:居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護
  • 日中活動系:生活介護・就労移行支援・就労継続支援A型/B型
  • 居住系:共同生活援助(グループホーム)
  • 児童系:児童発達支援・放課後等デイサービス

令和8年6月からは、計画相談支援・地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)・障害児相談支援が新たに対象に加わりました。

主なサービスの加算率(令和8年6月以降)

以下の表は、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定(令和8年6月1日施行)に基づく主要サービスの加算率です。

障害福祉サービス 処遇改善加算率一覧(令和8年6月1日以降適用)
出典:厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料)および告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)
サービス種別 加算Ⅰイ 加算Ⅰロ 加算Ⅱイ 加算Ⅱロ 加算Ⅲ 加算Ⅳ
居宅介護 44.6% 45.6% 43.1% 44.1% 37.6% 30.2%
重度訪問介護 44.6% 45.6% 43.1% 44.1% 37.6% 30.2%
生活介護 7.0% 7.6% 6.8% 7.4%
就労継続支援B型 4.9% 5.3% 4.7% 5.1%
共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型) 9.1% 9.7% 8.9% 9.5%
児童発達支援 13.1% 14.0% 12.9% 13.8%
放課後等デイサービス 13.1% 15.8% 13.0% 15.7%

※「—」の欄は、令和8年6月改定後のⅢ・Ⅳの数値を本記事執筆時点で突合できなかったサービスです。令和8年5月以前の加算率が適用される場合があります。最新の数値は厚生労働省告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号)の別表でご確認ください。

※加算Ⅰロ・Ⅱロは「令和8年度特例要件」を満たした場合に算定可能な上位区分です。Ⅲ・Ⅳには上位区分ロはありません。

令和8年6月から新たに対象となった相談支援系サービス

サービス種別 加算率
計画相談支援 5.1%
地域相談支援(地域移行支援) 5.1%
地域相談支援(地域定着支援) 5.1%
障害児相談支援 5.1%

相談支援系サービスは今回初めて処遇改善加算の対象となったため、加算区分はⅠ〜Ⅳではなく単一の加算率(5.1%)が設定されています。

算定要件の全体像

処遇改善加算を算定するには、以下の3種類の要件を満たす必要があります。

キャリアパス要件

  • 要件Ⅰ:任用に関する要件(賃金体系を就業規則等に規定)
  • 要件Ⅱ:研修に関する要件(研修計画の策定・実施)
  • 要件Ⅲ:昇給の仕組みに関する要件(昇給基準を就業規則等に規定)
  • 要件Ⅳ:経験・技能のある障害福祉人材のうち1人以上が年収460万円以上(令和8年6月以降。従来は440万円以上)

月額賃金改善要件

加算で受け取った額に相当する賃金改善を実施し、基本給または毎月支払う手当として配分する必要があります。

職場環境等要件

働きやすさを高める取り組み(腰痛対策、ICT導入、ハラスメント防止、生産性向上等)を一定数以上実施することが求められます。加算区分ごとに必要な取り組み数が異なります。

  • 加算Ⅰ・Ⅱ:各区分2つ以上、生産性向上は3つ以上(うち「現場課題の見える化」は必須)、全体で14項目以上
  • 加算Ⅲ・Ⅳ:各区分1つ以上、生産性向上は2つ以上、全体で8項目以上

令和8年度(2026年6月施行) — 事業所が押さえるべき改正の要点

対象サービス・職種の拡大

令和8年6月以降、処遇改善加算の対象は障害福祉従事者全体へ広がります。従来の福祉・介護職員に加え、事務職員や運転手など事業所で働く幅広い職種が対象です。

サービスとしては、前述のとおり計画相談支援・地域相談支援・障害児相談支援が新たに加わりました。これにより、相談支援専門員の処遇改善も加算の枠組みで行えるようになります。相談支援事業所向けのソフト選定については以下の記事をご覧ください。

新設区分「Ⅰロ・Ⅱロ」と令和8年度特例要件

生産性向上や協働化に取り組む事業所を評価するため、加算Ⅰ・Ⅱに上位区分「ロ」が新設されました。

令和8年度特例要件は以下の(ア)または(イ)に加え、(ウ)を満たすことで算定できます。

  • (ア) 生産性向上に関する取り組みを5項目以上実施(「現場課題の見える化」および「業務支援ソフト・情報端末の導入」は必須)
  • (イ) 社会福祉連携推進法人に所属
  • (ウ) 加算Ⅱロ相当の加算額の2分の1以上を月給(基本給または毎月支払う手当)の改善に充当

令和8年度中は(ア)・(ウ)について「対応の誓約」で算定可能とされています。ただし年度末の実績報告書で未対応が確認された場合、加算額の一部または全部の返還を求められる可能性がある点に注意が必要です。

令和8年度障害福祉報酬改定の全体像は以下の記事で解説しています。

届出・計画・実績報告 — 実務上の流れ

  1. 処遇改善計画書の作成・届出:算定を開始する前年度末〜当年度初め(自治体ごとに提出期限が異なる)に、指定権者(都道府県等)へ処遇改善計画書を提出します。
  2. 加算の算定開始:計画書が受理された翌月(または指定月)から、毎月の報酬請求で加算を算定します。
  3. 変更届出:算定期間中に加算区分や配分方法に変更がある場合は、別紙様式4(変更届出書)を提出します。
  4. 実績報告書の提出:年度終了後、計画に対する実績を報告します。令和7年度分の様式は厚生労働省「福祉・介護職員の処遇改善」ページで公開されています。

不明点がある場合は、厚生労働省コールセンター(050-3733-0230、9:00〜18:00・土日含む)へ問い合わせが可能です。

よくある質問(FAQ)

処遇改善加算は職員に全額支給しなければならない?

はい。加算として受け取った額に相当する賃金改善を職員へ実施する必要があります。事業所の運営費に充当することはできません。配分方法は事業所が定めますが、計画書で示した配分ルールに従う必要があります。

加算Ⅲ・Ⅳから一気に加算Ⅰロ・Ⅱロへ移行できる?

令和8年度に限り、加算Ⅲ・Ⅳまたは未算定の事業所であっても、「令和8年度特例要件」を満たせば加算Ⅱロへ移行可能です。キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳおよび職場環境等要件は令和8年度中の誓約で算定が認められています。ただし、実績報告時に未対応であれば加算返還のリスクがある点にご注意ください。

障害福祉と介護保険の両方を運営している場合、届出は別々に必要?

はい。障害福祉サービスの処遇改善加算と介護保険の介護職員等処遇改善加算は制度が異なるため、それぞれの指定権者へ個別に届出が必要です。ただし、計画書の様式や基本的な考え方は共通する部分が多く、厚生労働省も介護側の説明動画を障害福祉の参考資料として案内しています。

相談支援事業所は令和8年6月からどの区分で算定する?

計画相談支援・地域相談支援・障害児相談支援は今回初めて対象となったサービスです。加算率は一律5.1%で、以下いずれかの要件を満たせば算定できます。

  • ルート1:キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ+職場環境等要件(従来の加算Ⅳ相当)
  • ルート2:令和8年度特例要件

まとめ:経営・管理者が次に取るアクション

令和8年6月施行の改正により、対象職種とサービスが拡大し、上位区分の新設で加算率の天井が引き上げられました。実務では、上位区分の要件を満たすための生産性向上の取り組みと届出スケジュールの管理が同時に求められるため、早めの準備が欠かせません。経営者・管理者は以下のステップで対応を進めることをおすすめします。

  1. 現在の算定状況を確認:自事業所が算定している加算区分と加算率を把握する
  2. 上位区分への移行可否を検討:令和8年度特例要件(生産性向上5項目・業務支援ソフト導入等)をクリアできるか確認する
  3. 届出期限を管理:指定権者ごとの提出スケジュールを確認し、処遇改善計画書を期限内に準備する
  4. 職員への周知:加算率の変更と賃金改善の方針を職員へ説明し、人材確保・定着に活かす

業務支援ソフトの導入は上位区分の必須要件のひとつです。障害福祉ソフトの比較・選定にあたっては以下の記事もあわせてご覧ください。

この記事の筆者・監修者

  • 伊藤証

    伊藤証

    「介護のコミミ」を運営する株式会社Giver Linkの執行役員CTO。介護のコミミの開発・運用を全般的に統括する傍ら、介護施設から行政まで多岐にわたる業界関係者にインタビュー活動を行う。スマート介護士Expert保有。

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