2025年6月に義務化された熱中症対策!介護施設や訪問訪問でとるべき対応とは?

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2025年6月に義務化された熱中症対策!介護施設や訪問訪問でとるべき対応とは?

近年、介護現場における熱中症のリスクが年々深刻化している背景から、2025年6月以降は職場での熱中症対策が義務化されることとなりました。

これにより、介護事業所において職員と利用者の安全確保の観点に加え、法的責任という点においても適切な対策を徹底する必要性が高まっています。

この記事では、介護現場特有の熱中症リスクから、施設系・訪問系サービスそれぞれに適した具体的な対策、法的責任の詳細、緊急対応マニュアルまで、実践ですぐに活用できる情報を網羅しています。

この記事を最後まで読めば、介護事業所として実践すべき熱中症対策の全体像を把握し、職員と利用者の安全を守るための具体的なアクションを計画することができ、少しでも熱中症のリスクを低減できるはずです。

※この記事の内容は、介護のコミミのYouTubeでも動画として解説しています。(以下をクリックすると動画を再生できます)

熱中症対策の研修実施で、職員の安全を守りましょう

熱中症対策の研修を実施することで、職員の安全や熱中症事故防止を徹底することができます。

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介護現場では今、熱中症によるリスクがとても深刻

介護現場では、職員と利用者の両方にとって熱中症が深刻なリスクとなっています。特に高齢者は体温調節機能が低下しているため、一般成人よりも熱中症になりやすく、重症化しやすい特徴があります。令和6年の総務省の調査によると、65歳以上の高齢者の熱中症による救急搬送件数は、全体の約50%以上*を占めており、介護施設での事故防止が急務となっています。

*総務省『令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況

このように、介護現場では熱中症によるリスクがとても深刻ですが、介護職員と利用者のリスクもそれぞれ把握しておきましょう。

介護職員の熱中症リスク

介護職員は、身体介護や移動介助などで体力を消耗しやすい仕事であることから、夏場の高温多湿な環境下では、以下の要因により熱中症リスクが高まります。

  • 重労働による発熱量の増加
  • マスク着用による体温上昇
  • 水分補給のタイミングが取りにくい
  • 休憩時間の確保が困難

高齢者(利用者)の熱中症リスク

高齢者は以下の理由により、特に熱中症に注意が必要です。

  • 体温調節機能の低下
  • 発汗量の減少
  • のどの渇きを感じにくい
  • 持病による体温調節への影響

2025年からは熱中症対策が義務化

2025年6月から、職場での熱中症対策が義務化されました。労働環境の安全や衛生について定めた省令「労働安全衛生規則」の改正により、事業者には以下の対応が求められることになります。

  • 熱中症を防止するための体制整備
  • 発生時の対応手順作成
  • 関係者への周知徹底

この改正は特定の職種や業種に限定されるものではなく、熱中症リスクのある環境下での作業を対象としています。そのため、訪問看護や訪問介護などで屋外移動や入浴介助が発生する医療・福祉業界をはじめ、熱中症が起こりうるあらゆる職場が対象となります。

介護現場で効果的な熱中症予防の対策一覧

効果的な熱中症予防には、環境、職員、利用者の3つの側面からの包括的な対策が必要です。さらに、サービス種別によっても対策が異なるため、それぞれに必要な対策をここでは紹介します。

全サービス種別の共通の対策

まず、全サービス種別の共通の対策を紹介します。

職員の体調や勤務体制の管理

職員の健康管理は、安全な介護サービスの提供に直結します。

  • 朝礼時の体調確認の徹底
  • 定期的な水分補給の推奨(1時間に200ml以上)
  • 適切な休憩時間の確保(2時間に1回、15分以上)
  • 軽装での勤務の許可
  • 体調不良時の早退・欠勤の容認

利用者の健康状態モニタリング

高齢者の熱中症は急激に進行するため、早期発見が重要です。

  • 定期的な体温測定(朝・昼・夕の3回)
  • 水分摂取量の記録(1日1.5L以上を目標)
  • 食欲や倦怠感の観察
  • 尿量や尿色の確認
  • 家族への体調報告

施設系サービスにおける熱中症対策

介護施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム等)では、24時間利用者が滞在する環境での熱中症対策が重要です。施設特有の環境と運営形態を考慮した対策を実施してください。

施設環境の温度・湿度管理

介護施設の環境管理は、熱中症予防の基本となります。以下の対策を徹底しましょう。

  • 室温を28度以下、湿度を70%以下に保つ
  • エアコンの定期点検とフィルター清掃(月1回以上)
  • 直射日光を遮るカーテンやブラインドの設置
  • 換気扇や扇風機による空気循環の確保
  • 温度計・湿度計の設置と定期的な確認(2時間ごと)
  • 夜間の空調管理(就寝時も適切な温度維持)
  • 浴室・洗面所の換気設備の強化

施設特有の運営体制

24時間運営の介護施設では、以下の体制整備が重要です。

  • 夜間勤務者の体調管理強化(夜間の温度管理も含む)
  • シフト交代時の体調引き継ぎの徹底
  • 夜間の利用者体調チェックの実施(2時間ごと)
  • 緊急時の医療機関連携体制の整備
  • 家族への体調報告システムの構築

施設内での活動管理

施設内での各種活動における熱中症対策は以下の通りです。

  • 入浴時間の調整(暑い時間帯を避ける)
  • リハビリテーション時間の最適化
  • 屋外活動の制限(気温35度以上は中止)
  • 食事時間の調整(食欲低下を考慮)
  • 個室・相部屋の温度差管理

訪問系サービスにおける熱中症対策

訪問介護をはじめとする訪問系サービスでは、職員が利用者の自宅を訪問する形態のため、外部環境と室内環境の両方での熱中症対策が必要です。移動時のリスクと利用者宅の環境管理が重要となります。

移動時の熱中症対策

訪問介護職員の移動時の安全確保は以下の通りです。

  • 移動手段の最適化(徒歩・自転車・車の使い分け)
  • 移動時間の調整(暑い時間帯を避ける)
  • 携帯用冷却グッズの配布(保冷剤、冷却スプレー等)
  • 水分補給のための携帯ボトルの配布
  • 日傘や帽子の着用推奨
  • 緊急時の連絡体制の整備

利用者宅の環境確認と改善提案

訪問先での環境管理支援は以下の通りです。

  • 利用者宅の温度・湿度の確認
  • エアコン設置状況の把握
  • 換気設備の確認と改善提案
  • 直射日光対策の提案(カーテン、ブラインド等)
  • 水分補給環境の整備支援
  • 緊急時の連絡先確認

訪問介護特有のサービス提供

訪問時のサービス提供における配慮は以下の通りです。

  • 入浴介助時間の調整(暑い時間帯を避ける)
  • 調理介助時の換気強化
  • 買い物代行時の配慮(重い荷物の分散)
  • 外出介助時の経路選択(日陰の多いルート)
  • 服薬管理の確認強化
  • 家族への熱中症対策指導

訪問介護の安全管理体制

訪問介護事業所の安全管理は以下の通りです。

  • 訪問スケジュールの最適化(暑い時間帯を避ける)
  • 職員の位置情報管理システムの活用
  • 緊急時の代替訪問体制の整備
  • 利用者宅での事故発生時の対応マニュアル
  • 地域の医療機関との連携強化
  • 家族への定期的な体調報告

熱中症対策には介護事業所の法的責任もある?

介護事業所には、職員と利用者の安全を確保する法的責任があります。熱中症対策は単なる安全配慮ではなく、法的義務として位置づけられています。

労働安全衛生法の遵守義務

以下の通り労働安全衛生法第3条では、事業者は快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職員の安全と健康を確保することが義務付けられています。

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。

引用元:『労働安全衛生法

具体的な実践としては以下の方法が考えられます。

  • 職場環境の整備(温度・湿度管理)
  • 健康診断の実施
  • 安全衛生教育の実施
  • 労働時間の適正な管理

事故発生時の法的責任

これらを踏まえて、熱中症事故が発生した場合、介護事業所には以下の法的責任が問われる可能性があることに注意しましょう。

  • 労働災害としての責任(職員の場合)
  • 社会的信用の失墜

熱中症が発生してしまった時の緊急対応マニュアル

熱中症が疑われる症状が現れた場合、迅速かつ適切な対応が重要です。初期対応の遅れが重症化につながる可能性があります。ここでは代表的な対応手順を紹介します。

初期症状の見極め方

まずは熱中症の初期症状を見極めることが重要です。以下の症状がある場合は、すぐに対策を取りましょう。

  • めまいや立ちくらみ
  • 筋肉のけいれんや痛み
  • 大量の発汗
  • 頭痛や吐き気
  • 倦怠感や脱力感

応急処置の手順

上述の初期症状がある場合は、熱中症が疑われるため、以下の応急処置手順を実施しましょう。

  1. 涼しい場所への移動(エアコンが効いた室内)
  2. 衣服の脱衣と冷却(首筋、脇の下、太ももの付け根を冷やす)
  3. 水分・塩分の補給(経口補水液またはスポーツドリンク)
  4. 足を高くしての安静
  5. 体温の継続的な監視(10分ごとに測定)

医療機関への搬送判断基準

以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 意識障害やけいれん
  • 体温が40度以上
  • 水分が摂取できない
  • 症状が改善しない(30分以上)
  • 高齢者や持病がある方

定期確認に活用できる熱中症対策チェックリスト

効果的な熱中症対策のため、以下のチェックリストを活用してください。定期的な点検により、リスクを最小限に抑えることができます。週1回の実施を推奨します。

施設環境の点検項目

  • エアコンの稼働状況と設定温度(28度以下)
  • 湿度計の設置と記録(70%以下)
  • 日射遮蔽設備の効果
  • 換気設備の動作確認
  • 飲料水の常備状況(1人あたり2L/日)
  • 救急用品の配置と点検

職員教育の実施項目

  • 熱中症の症状と予防法の研修(年2回以上)
  • 応急処置の実技訓練(年1回以上)
  • 体調管理の重要性の周知
  • 水分補給のタイミング指導
  • 緊急時の連絡体制の確認
  • 個人防護具の使用方法

利用者ケアの確認項目

  • 個別の体調管理計画の策定
  • 水分摂取の記録と管理
  • 体温測定の実施状況
  • 服薬管理の確認
  • 家族への情報提供
  • 緊急連絡先の確認
熱中症対策の研修実施で、職員の安全を守りましょう

熱中症対策の研修を実施することで、職員の安全や熱中症事故防止を徹底することができます。

研修の実施はeラーニングを活用することで、専門的な準備も不要で、受講する職員の時間調整も容易になるので、ぜひご活用ください。

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まとめ

介護現場での熱中症対策は、単なる安全対策ではなく、事業所の持続的な発展につながる重要な取り組みです。職員と利用者の安全を最優先に考え、包括的な対策を実施することで、安心・安全な介護サービスの提供を実現しましょう。

この記事の筆者・監修者

  • 伊藤証

    伊藤証

    「介護のコミミ」を運営する株式会社Giver Linkの執行役員CTO。介護のコミミの開発・運用を全般的に統括する傍ら、介護施設から行政まで多岐にわたる業界関係者にインタビュー活動を行う。スマート介護士Expert保有。

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