介護施設の経営・運営改善介護現場の声・悩み
介護現場における熱中症は、高齢者の体温調節機能の低下と、職員の身体介護による負担の両面から、年々深刻化しています。特に2025年6月以降は職場での熱中症対策が義務化され、介護施設・訪問介護を問わず、事業所には法的責任を伴う対策の徹底が求められています。
この記事では、介護事業所の管理者・経営者の方に向けて、介護の熱中症対策として、施設系・訪問系サービスそれぞれに適した具体的な予防策、義務化2年目(2026年)に確認すべきポイント、WBGT(暑さ指数)による作業中止の判断基準、法的責任と罰則、緊急対応マニュアル、チェックリストまで、実践ですぐに活用できる情報を網羅しています。
この記事を最後まで読めば、介護事業所として実践すべき熱中症対策の全体像を把握し、職員と利用者の安全を守るための具体的なアクションを計画することができ、少しでも熱中症のリスクを低減できるはずです。
熱中症対策の研修を実施することで、職員の安全や熱中症事故防止を徹底することができます。
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介護現場では、職員と利用者の両方にとって熱中症が深刻なリスクとなっています。特に高齢者は体温調節機能が低下しているため、一般成人よりも熱中症になりやすく、重症化しやすい特徴があります。令和6年の総務省の調査によると、65歳以上の高齢者の熱中症による救急搬送件数は、全体の約50%以上*を占めており、介護施設での事故防止が急務となっています。
*総務省『令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況 』
このように、介護現場では熱中症によるリスクがとても深刻ですが、介護職員と利用者のリスクもそれぞれ把握しておきましょう。
介護職員は、身体介護や移動介助などで体力を消耗しやすい仕事であることから、夏場の高温多湿な環境下では、以下の要因により熱中症リスクが高まります。
高齢者は以下の理由により、特に熱中症に注意が必要です。
2025年6月から、職場での熱中症対策が義務化されました。労働環境の安全や衛生について定めた省令「労働安全衛生規則」の改正により、事業者には以下の対応が求められることになります。
この改正は特定の職種や業種に限定されるものではなく、熱中症リスクのある環境下での作業を対象としています。そのため、訪問看護や訪問介護などで屋外移動や入浴介助が発生する医療・福祉業界をはじめ、熱中症が起こりうるあらゆる職場が対象となります。
熱中症対策の研修を実施することで、職員の安全や熱中症事故防止を徹底することができます。
研修の実施はeラーニングを活用することで、専門的な準備も不要で、受講する職員の時間調整も容易になるので、ぜひご活用ください。
無料で始められるおすすめeラーニング10選はこちら2025年6月の義務化施行から1年が経過し、2026年の熱中症シーズンを迎えるにあたり、介護事業所が改めて確認すべきポイントをまとめます。
義務化に伴い、WBGT(湿球黒球温度)を用いた熱中症リスクの客観的な評価が推奨されています。WBGTは気温だけでなく湿度や輻射熱を総合的に考慮した指標で、環境省や厚生労働省が作業管理の目安として示しています。
介護現場では、以下のWBGT基準を参考に作業管理を行いましょう。
訪問介護では、利用者宅の環境がWBGT 31℃を超える場合、入浴介助など負担の大きいサービスは時間をずらすか、短時間で実施するなどの配慮が必要です。
職員が業務中に熱中症を発症した場合、労働災害として認定される可能性があります。事業所は以下の報告体制を整備しておく必要があります。
2026年の熱中症シーズンに向けて、以下の項目を再確認しましょう。
これらの確認を通じて、義務化2年目の夏を安全に乗り切る体制を整えましょう。
効果的な熱中症予防には、環境、職員、利用者の3つの側面からの包括的な対策が必要です。さらに、サービス種別によっても対策が異なるため、それぞれに必要な対策をここでは紹介します。
まず、全サービス種別の共通の対策を紹介します。
職員の健康管理は、安全な介護サービスの提供に直結します。
高齢者の熱中症は急激に進行するため、早期発見が重要です。
介護施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム等)では、24時間利用者が滞在する環境での熱中症対策が重要です。施設特有の環境と運営形態を考慮した対策を実施してください。
介護施設の環境管理は、熱中症予防の基本となります。以下の対策を徹底しましょう。
24時間運営の介護施設では、以下の体制整備が重要です。
施設内での各種活動における熱中症対策は以下の通りです。
訪問介護をはじめとする訪問系サービスでは、職員が利用者の自宅を訪問する形態のため、外部環境と室内環境の両方での熱中症対策が必要です。移動時のリスクと利用者宅の環境管理が重要となります。
訪問介護職員の移動時の安全確保は以下の通りです。
訪問先での環境管理支援は以下の通りです。
訪問時のサービス提供における配慮は以下の通りです。
訪問介護事業所の安全管理は以下の通りです。
介護事業所には、職員と利用者の安全を確保する法的責任があります。熱中症対策は単なる安全配慮ではなく、法的義務として位置づけられています。
以下の通り労働安全衛生法第3条では、事業者は快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職員の安全と健康を確保することが義務付けられています。
事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。
引用元:『労働安全衛生法 』
具体的な実践としては以下の方法が考えられます。
2025年6月の労働安全衛生規則改正により、熱中症対策を怠った場合、事業者には罰則が科される可能性があります。
労働安全衛生法第120条により、同法に基づく省令(労働安全衛生規則)に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
参考:『労働安全衛生法 第120条』
また、熱中症による労働災害が発生した場合、以下のような法的責任が問われる可能性があります。
介護事業所においては、BCPの策定とあわせて熱中症対策を体制に組み込むことが重要です。詳しくは介護BCPの策定ガイドもご参照ください。
WBGT 33℃以上など、危険な環境下で作業を中止した場合、休業手当の支払い義務が生じる可能性があります。労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があると定められています。
ただし、熱中症による作業中止は労働者の安全確保のための正当な措置であり、事業所の都合による休業とは性質が異なります。実務上は、以下のような対応が考えられます。
いずれの場合も、職員の生命・健康を最優先にした判断が求められます。
熱中症が疑われる症状が現れた場合、迅速かつ適切な対応が重要です。初期対応の遅れが重症化につながる可能性があります。ここでは代表的な対応手順を紹介します。
まずは熱中症の初期症状を見極めることが重要です。以下の症状がある場合は、すぐに対策を取りましょう。
上述の初期症状がある場合は、熱中症が疑われるため、以下の応急処置手順を実施しましょう。
以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
効果的な熱中症対策のため、以下のチェックリストを活用してください。定期的な点検により、リスクを最小限に抑えることができます。週1回の実施を推奨します。このチェックリストを事業所のマニュアル代わりに活用することで、熱中症対策を体系的に管理できます。
A. はい、訪問介護も対象です。労働安全衛生規則の改正は、熱中症リスクのあるすべての職場に適用されるため、訪問介護職員が屋外を移動する際や、利用者宅で入浴介助などの身体介護を行う際も対象となります。事業所は、職員の移動経路の配慮、WBGT計の携帯、水分補給の徹底などを実施する必要があります。
A. 法律で「研修」という形式での義務化はされていませんが、労働安全衛生法第59条では、事業者は労働者に対して安全衛生教育を実施する義務があります。熱中症対策についても、職員が適切に予防・対応できるよう、教育・周知を行うことが求められます。年に1〜2回、熱中症シーズン前に研修やeラーニングを実施することを推奨します。詳しくは介護現場で活用できるeラーニングサービスもご参照ください。
A. WBGT計(暑さ指数計)を使用します。市販のWBGT計は数千円から購入でき、湿球温度・黒球温度・乾球温度を測定して自動でWBGT値を表示します。また、環境省の「熱中症予防情報サイト」では、全国の観測地点ごとのWBGT実況値・予測値を公開しているため、参考にすることができます。訪問介護の場合、携帯型のWBGT計を職員に配布することが有効です。
A. 丁寧な説明と、家族との連携が重要です。高齢者はのどの渇きや暑さを感じにくいため、本人が「暑くない」と感じていても、体温は上昇している可能性があります。以下の対応を検討しましょう。
A. 業務中または業務に起因する熱中症であれば、労災認定される可能性が高いです。労働災害として認定されるためには、業務と熱中症発症との因果関係が認められる必要があります。介護現場での身体介護中、訪問介護の移動中、施設内の高温環境での勤務中などに発症した場合は、労災として認定される可能性があります。事業所は、発生状況を記録し、休業4日以上の場合は労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出する必要があります。
A. 介護報酬に熱中症対策の専用加算はありませんが、通常の事業所運営経費として、介護報酬収入の中から支出することになります。エアコンの設置・点検費用、WBGT計の購入費用、経口補水液の備蓄費用、研修費用などは、いずれも職員と利用者の安全確保に必要な経費として、事業所が負担します。自治体によっては、熱中症対策設備の導入に対する補助金制度がある場合もありますので、管轄の自治体に問い合わせることをおすすめします。
A. 職員の安全確保のため、サービス提供の延期や内容変更は可能ですが、一方的な拒否は避けるべきです。利用者宅の室温がWBGT 33℃を超えるなど、職員に重大な健康リスクがある場合は、事業所として以下の対応を検討します。
いずれの場合も、利用者の安全と職員の安全の両立を目指し、関係者と十分に協議することが重要です。
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「熱中症対策の教科書」をダウンロードする介護現場での熱中症対策は、単なる安全対策ではなく、事業所の持続的な発展につながる重要な取り組みです。職員と利用者の安全を最優先に考え、包括的な対策を実施することで、安心・安全な介護サービスの提供を実現しましょう。
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