「はっぴーの家 ろっけん」に聞く!利用者の自己決定を尊重する新しい介護のかたち

介護施設への取材

「はっぴーの家 ろっけん」に聞く!利用者の自己決定を尊重する新しい介護のかたち

「介護」と聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか?規則正しい生活、決められたスケジュール、そして何より「ケアされる側」と「ケアする側」という明確な区分け…

しかし今回訪れた施設「はっぴーの家 ろっけん」では、そんな従来の介護施設のイメージを覆す取り組みが行われていました。

利用者の自己決定を最大限に尊重し、スタッフと利用者が共に生活するコミュニティとしての場づくりを目指す「はっぴーの家」の魅力について、スタッフの岩本さんと沼田さんにお話を伺ってきました!


インタビュアー鈴木

どうしても「はっぴーの家 ろっけん」さんにインタビューさせていただきたく、社長に直談判をし、仙台から神戸にはるばる参りました!(笑)質問攻めして、たくさん魅力を探っていきます~!

「はっぴーの家 ろっけん」とは

神戸・長田にある「はっぴーの家 ろっけん」は、多世代がともに暮らすシェアハウス型のサービス付き高齢者向け住宅です。

高齢者だけでなく、子どもや子育て世代、学生、外国人、アーティストなど、実に多様な人たちが自然に関わり合いながら生活しています。看板もなくひっそりとした佇まいながら、口コミだけで人が集まり、なんと1週間で約200人が出入りすることも!

「ごちゃまぜの大家族」とも言えるこの場所では、利用者の自己決定が尊重され、スタッフと利用者さんが対等な関係で日常を共にしています。介護サービスでありながら、“暮らし”そのものを大切にしている、温かなコミュニティが広がっています。

「はっぴーの家 ろっけん」の理念と特徴とは

▲和やかな雰囲気でインタビューがスタート!

まずは、「はっぴーの家 ろっけん」とはどのような施設なのか教えてください

利用者さん一人ひとりに合わせた柔軟な支援を提供する一方で、施設全体が「ごちゃ混ぜ」の雰囲気を大切にしています。

過剰にケアするのではなく、場合によっては放っておくことも大事。
利用者さんが自然に生活できるように意識しているので、利用者さん同士で集まって雑談をしていたり、一人で静かに過ごしていたり、本当にそれぞれです。

放課後には子供たちが集まってきて宿題をしたり、ゲームをしたり、利用者さんと関わったり、とにかく自然に自由に過ごしています。
色んな人が出入りしますが、「違和感も3つ以上重なるとどうでもよくなる」というモットーがあるので、多様性を受け入れる姿勢が特徴です。

「はっぴーの家」は外から見ると特別に見えるかもしれません。でも私たちにとっては、これが当たり前の日常なんです。


インタビュアー鈴木

素敵です~!本当に大家族のようですね。周りにたくさんの人がいるから、自然と空間に溶け込めて孤独感も生まれにくいですね!

▲はっぴーの家のコミュニティに属している十平さんも「楽しそうやから」と緊急参加してくれました!なごやかな雰囲気でインタビューが続きます♪

従来の介護施設との違いはどこにありますか?

従来の介護施設では、決められたスケジュールや規則に沿って日常生活が営まれることが一般的です。でも「はっぴーの家」では、利用者さん一人ひとりの希望や選択を尊重し、より自由な生活スタイルを実現しています。

例えば食事一つとっても、食べたい人は食べるし、食べたくない人は食べない。

また、外出についても利用者の希望を尊重しています。
散歩に行くおじいちゃんとかいて、大体迷子になって帰ってきます!パトカーで帰ってきたり、うまいこと帰ってくる時もあるし、6時間とか9時間ぐらい歩き続けてた時もあって。でも本人の選択したことだし、歩き続けるっていうのが今の彼のストレス発散とか運動にもつながってるから悪いことじゃないと思っています。

念のため、利用者にはGPSを所持してもらいますが、僕らがGPSを見るんじゃなくて、家族さんに全部お願いします。一緒に楽しむみたいな。ここにいてどういうルートで帰ってくるかなとか、どこに探しに行こうかなとか、一緒に楽しみながらやる。そういうの「脱出ゲーム」って言ったりするんですけど(笑)


インタビュアー鈴木

脱出ゲーム!!普通なら大問題になりそうなことでも、ご家族参加型で楽しみながら受け入れていくんですね!出来事の捉え方が大きく変わりますね。

利用者の自己決定を尊重するとはどういうことですか?

「はっぴーの家」では、利用者さん一人ひとりの“自己決定”を何よりも大切にしています。
一人ひとりの希望や選択を理解し、それを実現するためのサポートをするんです。

たとえば、トラブルが起きたときも、それをただの問題として捉えるのではなく、「お題」として扱うんです。
「じゃあ、これについてどうしていこうか?」と、みんなで話し合って解決策を探る。その過程そのものが大切だと思っています。
もちろん、すぐに解決できることもあれば、どうしても解決が難しいこともある。でも、その人の背景や気持ちを知ろうとする姿勢、想像することが何より大事なんです。

ただ、実際の現場では、その判断が本当に難しい場面も多いです。
今、手を差し伸べるべきか、それともあえて少し距離を置くべきか。でも私たちは、よほど危険な状態でない限り、できるだけその人の「やりたい」を尊重したいと思っています。

たとえ、その結果として転んでしまっても、「ナイストライ!」と声をかける。それくらいの気持ちで関わっています。
ご家族の方にも、この方針についてしっかりご理解いただいた上で、入居していただいています。


インタビュアー鈴木

利用者さん一人ひとりを本当に理解しようと、たくさん考え続けることが大事ですよね。課題の内容ではなく、人と向き合うお考えが本当に素晴らしいです。

印象的なエピソードがあれば教えてください

「はっぴーの家」では日常的に様々なイベントが行われています。イベントがある時には日付をまたいでから帰宅する人もいるくらいに自由です(笑)

印象的なイベントとしては、利用者さんの希望を叶えるためにみんなで海水浴に行ったことですね。そのまま海水浴ができる車イスを使って入りました。最初は数人で行く予定が、「それやったらみんなで行ったらいいや」とご家族も含めてたくさんの人を巻き込んで行きました。

そういうイベントがあることで思い出が増え、「楽しかった」「また行きたいわ」など会話が増えるし、表情が明確に変わるんです


インタビュアー鈴木

「みんなで」行くからこそ、かけがえのない思い出になるんでしょうね^^

スタッフの働き方について

沼田さんはどのように介護に向き合っていますか?

▲大学在学時から介護に携わっていた沼田さん。とても熱く深い考えをお持ちです。

「ハッピー」って、ただの面白さとか楽しさではなくて、結果として生まれるものだと思うんです。だから、最初から「楽しい仕事をしましょう」という話ではなくて、実際には大変なことや苦しいことのほうが多い、という声もたくさん耳にします。

もちろん、僕らの仕事も大変なことはたくさんあります。一般的な介護施設と同じように、基本的なケアもありますし、この建物の中だけじゃなくて、外の施設にも出向いて対応しています。

でも、僕たちが日々大切にしているのは、「どうやってケアをこなすか」よりも、「どうやってその人の生活に寄り添うか」という視点です。

外部のスタッフだと、週に1回しか会えないケースもありますよね。そういう限られた時間の中で、その人の生活感や状況を読み取る力がすごく大切になります。
僕たちは、施設の中にいる人も外で働く人も、同じ目線で「その人にとっての豊かでハッピーな暮らしとは何か」を考えながら関わっています。そういう意味では、業務量も精神的な負担も、決して軽くはないと思います。

でも、だからこそ、そこにやりがいがあるし、深い関係性を築ける仕事でもあるんです。


インタビュアー鈴木

沼田さんが介護の仕事とも利用者さんとも、しっかりと向き合ってこられたことが伝わります。続いて、沼田さんの考えをさらに深堀っていきます!

スタッフとしての働き方や心構えについて教えてください

結局のところ、「いかに楽しむか」が大事だと思っています。たとえ人数が少なくても、これだけ人の出入りがあると、毎日いろんなことが起きるんです。
それは、スタッフが増えても変わらない。だからこそ、大切なのは出来事をどう捉えるか。そして、自分ひとりで抱え込まず、他の人と共有すること。不安やしんどさを“面白さ”に変える視点が大事なんです。

メンタル面も誰かにケアしてもらうことは当たり前で、それを「弱さ」とせず、みんなの共通認識にできたらいいなと思っています。

外から見ると、「はっぴーの家」は特別な人しか働けない場所に見えることもあるみたいですが、実際はみんな悩んでいます。
でも、「何か変えたい」「一歩踏み出したい」と思って来てくれる人がたくさんいるんです。だから、ここで働くことは決して“特殊”じゃない。

想いを持った人たちが集まっているからこそ、みんなが変化していくし、自分自身とも向き合える。
そして、失敗も経験しながら一緒に乗り越えていくことで、この業界で働く意味が自然と見えてくると思います。


インタビュアー鈴木

不安も弱さも共有できる環境が素敵です。お互いに理解しようとする姿勢があるからこそだと思います。

介護業界で働く方々へのメッセージはありますか?

逆に僕の方が、メッセージをもらいたいくらいです(笑)
同世代の人たちと話していると、「自分はすごく恵まれた環境にいるな」と実感することが多くて。だからこそ日々意識して、目の前にいる人たちとちゃんと関わっていくことがすごく大事だなと思っています。

悩んでいる人や苦しんでいる人とも、できるだけ同じ時間を共有したいし、「どうしたら状況が良くなるか」を一緒に考えていきたい。
組織の仕組みを変えないと難しいこともあるけれど、日々の関わりやコミュニケーションは一人ひとりで変えていけると思うんです

ケアする・介護するだけじゃなく、日常の中にちょっとした“きっかけ”を落としていくような関わり方が、僕はすごく大事だと思っていて。
その積み重ねで、小さくても変化は生まれると思いますし、この業界をもっと面白くしていけたら最高ですね。

結局、リーダーかスタッフかなんて関係なくて、「自分がどう関わるか」は全部自分次第。
一つひとつの出会いや経験に意味があるし、これからも自分らしく取り組んでいきたいですね。

 


インタビュアー鈴木

他責にしないお考え、尊敬します。変えられないものよりも自分で変えられる部分に目を向けていくことは大事ですよね。沼田さんの言葉に私も身が引き締まる想いです‥!

十平さんに聞く「はっぴーの家の魅力」

十平さん、はっぴーの家は印象はどうですか?

「はっぴーの家」は日本の縮図だと思います。優しいおもてなしの心があると思います。
それに放っておいてくれるのが良いね。なのに、肝心な時にはすぐ来てくれる。みんな見ていないようでよく見てくれているよね。ここにいるみんな、生かされてる。娘はおもろいところを見つけてくれたと思う。「はっぴーの家」に来てよかったですよ。
京都や海外にも広めて欲しいです(笑)


インタビュアー鈴木

十平さんは、娘さんが「はっぴーの家」をネットで見つけてくれたそう!去年広島から引っ越しをされて、「はっぴーの家」には入居しているわけではなく、ご近所に住んでおり頻繁に「はっぴーの家」で過ごしているそうです。「はっぴーの家」のコミュニティに属し、十平さんの居場所として確立しています!

たくさんの写真で思い出につつまれる空間

▲施設には何百枚もの利用者との想い出の写真が飾られていました

利用者さんがお亡くなりになった際には、スタッフやご家族を中心にしながら、普段から出入りしていて関わりのある人や子供たちも一緒にお別れの会を作り上げます。
たくさんの写真で思い出いっぱいの空間を作り上げて、みんなで明るくお見送りをするんです。

▲利用者さんとの写真を眺めながら想い出を語る岩本さん

編集後記

みんなのハッピーに繋がる考え方であふれた「はっぴーの家 ろっけん」さんでした。

利用者さんと職員さん、コミュニティに集まる皆さん、どこにも線引きがなくごちゃ混ぜになっている空間がとても居心地良く、私自身も自然と住民のような感覚になりました。

明るく陽気な空気感が印象的で、インタビュー後もいつまでも余韻に浸っていました(笑) 介護の仕事に「正解」はなく、毎日が選択と挑戦の連続だと思います。

今回のインタビューを通して見えたのは、その中でも“楽しさ”や“面白さ”を大切にしながら、誰かを想う気持ちがエネルギーになっているということでした。

誰かを支えるということは、同時に自分自身とも向き合うということ。 今回のインタビューで交わされた対話やたくさんの笑顔は、きっと他の事業所にも希望として届くと信じています。

この取材のインタビュアー

  • 鈴木

    鈴木

    Giver Linkのミッションとバリューに共感し入社後、ICTコンサルタントとして事業所様にあったICTツールの選定相談に日々携わる。 介護職員の方との対話では、「事業所様ファースト」をモットーに寄り添い、入社後に培ったICTの知識を活かし、少しでも現場の負担を軽減できるようサポートを行っている。 自身の長期入院経験から、福祉への想いは社内随一と自負。

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