介護の「囲い込み問題」は何が問題?今後事業者に求められる姿勢と行動とは?

介護施設の経営・運営改善

介護の「囲い込み問題」は何が問題?今後事業者に求められる姿勢と行動とは?
#囲い込み問題 #サービス付き高齢者向け住宅
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こみたろう

「囲い込み問題ってなに?」
「どうすれば囲い込み問題を避けれるの?」

介護業界の「囲い込み問題」を解決するため、行政によるチェック体制の厳しさが増しています。

介護の囲い込み問題にどのように向き合えばいいのか悩む経営者様も多いことでしょう。

本記事では、囲い込み問題の何が問題なのか、発生する理由、政府の対応などについて解説します。

さらに、介護事業所が介護の囲い込み問題にどう向き合えばいいのか、具体的な方法も紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

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介護の囲い込みとは?

介護業界で問題視されている介護の囲い込みについて、改めて確認しておきましょう。

介護の囲い込みとは、サ高住の入居者に対して、過剰な介護サービスを提供してしまうことを指します。

サ高住とは、サービス付き高齢者向け住宅の略称で、比較的要介護度の低い高齢者を対象にした住宅のことで、入居者が自立に近い生活を送るためのサービスを提供しています。

サ高住で提供されるサービスは、生活相談や安否確認などが挙げられ、民間の介護施設である有料老人ホームとは別物になります。

有料老人ホームとは、要介護度に関係なくすべての高齢者を対象に、食事や介助、健康管理、介護などの生活全般にかかわるサービスを提供する施設です。

一方で、サ高住は介護サービスを提供できないため、入居者に介護サービスが必要になった場合は、外部の介護サービスや訪問介護などを利用しなければなりません。

介護の囲い込み問題は、サ高住が入居者に対して併設した介護サービスの利用を強制したり、過剰・過小なサービスを利用させたりする行為によって引き起こされています。

サービス付き高齢者向け住宅についてより詳しく解説した記事がありますので、そちらも参考にしていただけると幸いです。

介護業界で「囲い込み問題」が発生する理由

以下の3つの理由により、介護業界で囲い込み問題が起きていると言われています。

・介護サービスを提供する介護事業所を指定できる
・行政による実地指導が不十分
・公的資金が投入される福祉事業なのに業者間の自由競争が認められている

介護の囲い込み問題が発生するのは、サ高住が入居者に提供する介護サービスの介護事業所を指定できる背景があるためです。

また、行政が実施する実地指導が行き届いていないことも囲い込み問題が起きている要因の一つです。

さらに、福祉事業には補助金などの公的資金が投入されているにもかかわらず、業者間の自由競争が認められているという矛盾した制度が、囲い込み問題を発生させています。

詳細は、以下で解説します。

介護サービスを提供する介護事業所を指定できる

有料老人ホームなどの介護施設は、介護保険制度上で「特定施設入居者生活介護」が採用され、入居者に対して直接介護サービスを提供できる仕組みです。

一方で、サ高住は介護サービスを提供しない「区分支給限度額方式」を採用するのが一般的です。

実は、介護サービスを提供する「特定施設入居者生活介護」よりも、介護サービスを提供しない「区分支給限度額方式」の方が介護報酬は高く設定されています。

しかし、サ高住では介護サービスの提供はできないため、入居者が外部の介護サービスを利用しても、サ高住に利益は1円も入りません。

そのため、一部のサ高住は低価格を売りにして要介護度の高い入居者を集めています。

さらに、併設もしくは近接した訪問介護などのサービスを入居者に提供し、「区分支給限度額」の限度額まで算定することで、囲い込みというビジネスを作り出しています。

また、サ高住側が入居者の了解を得た上で、介護サービスを提供する介護事業所を指定できるため、入居者を無理やり説得したり、外部のサービスの利用を制限したりするなどの行為が囲い込み問題につながっています。

行政による実地指導が不十分

行政による実地指導が十分に行き届いていないことも、介護の囲い込みが発生している理由の一つです。

実地指導とは、都道府県などの自治体が介護サービスを提供する事業所を対象に、介護保険制度の基準を満たしたサービスの質が保たれているかを指導監督するためのものです。

たとえば、利用者や入居者に対し、身体拘束や虐待をしていないか、適したサービスが提供されているか、算定基準に基づいた運営や体制が取れているかなどが挙げられます。

指定都市・中核市で実施された実地指導では、指定取消や効力停止処分を受けた事業所の3割はサ高住が占めているとの報告もあり、実地指導による成果が発揮されています。

一方で、サ高住の増加によって、すべての事業所への実地指導が行き届いていない自治体も少なくありません。

このように、行政による実地指導が十分に行われていないため、入居者に提供されるサービスが適正であるかを評価できず、サ高住での囲い込み問題が起きやすくなっています。

公的資金が投入される福祉事業なのに業者間の自由競争が認められている

サ高住で介護の囲い込み問題が発生しやすくなる理由として、業者間の自由競争が認められていることが挙げられます。

サ高住は、福祉事業の一環として設立時に補助金を受けられる一方で、業者間の自由競争が認められているという特殊な立ち位置にいます。

自由競争が認められている背景の一つが、入居者を集められずにサ高住が倒産するケースがあることです。

サ高住が倒産すれば、有料老人ホームなどへ入れず、行き場を失っている高齢者の問題を解消できなくなる恐れがあります。

また、サ高住は原則として介護サービスを提供できないため、介護度の低い高齢者で満室にできても、安定した経営には及ばないわずかな利益にしかなりません。

業者間での自由競争を認め、家賃や食費などの生活支援サービスの価格を自由に設定できるようにしています。

しかし、自由競争ができる状況が裏目に出ているのが囲い込み問題です。

サ高住では、相場よりも低価格で入居者を集め、併設の事業所の介護サービスを入居者に利用させることで利益を得ているケースも増えています。

 関連記事 介護現場における2025年問題とは?各事業所別対策

「介護の囲い込み問題」に対する政府の対応

政府は、サ高住における介護の囲い込み問題を重く受け止め、自治体に対し実地指導の徹底を推進しています。

しかし、上述したように行政による実地指導は、一部では指定取消や効力停止処分にするなどの一定の成果を出しているものの、十分に指導監督が行われていないのが実状です。

実地指導を行う自治体としては、対象の事業所を回りながら実施するにも人員や時間、コストの確保する必要があるなど、対応に追われています。

実地指導を行う自治体への補助金上限額が300万円から600万円に増加

政府は、実地指導を実施する自治体への補助金の上限額を300万円から600万円に引き上げることを決定しました。

自治体への補助金の金額は、実地指導を実施した件数によって異なります。

たとえば、サ高住や有料老人ホームに介護サービスを提供している事業所に対し、実地指導を20件以上実施した場合は450万円の補助金が交付されます。

また、30件以上の実地指導を実施した場合は、上限額の600万円が自治体に交付される仕組みです。

補助金の上限額を上げた理由は、自治体による実地指導を促し、介護の囲い込みを行っている事業所への指導監督を強化したい狙いがあるためです。

 関連記事 今知りたい!介護問題を5つに要約!わかりやすく解説

「介護の囲い込み問題」はどこに問題があるのか?

介護の囲い込み問題は、入居者へ提供するサービスの適正化が疑問視される一方で、擁護する声も上がっています。

介護の囲い込み問題がなぜ問題視されているのか、改めて確認しておきましょう。

介護の囲い込み問題で指摘されているのは、介護保険制度の土台となるケアマネジメントにおいて中立性が保たれないことにあります。

一部のサ高住では、経営者が利益を得るために、外部の介護サービスではなく併設した訪問介護や介護サービスを利用することを入居者に強要したり、職員から説得されたりするケースも少なくありません。

また、経営側が利益を出しやすくするように、高齢者住宅の商品設計や事業計画が行われているケースも増えています。

このように、本来入居者が利用すべきサービスが提供されず、過剰・過少なサービスが提供されたり、本人の希望を無視したりする行為が、介護の囲い込み問題と言われる要因です。

本人の意思や希望を無視すれば、入居者が自由にサービスを選択できる権利を奪うことになります。

さらに、要介護度に合わせた適切な介護サービスが受けられなければ、自立した生活はもちろんのこと、要介護度の重度化や生活が不安定になることも考えられます。

一部のサ高住では、併設する介護サービスを積極的に利用させるために、あえて要介護度の重い高齢者をターゲットにしているケースも珍しくありません。

また、介護の囲い込みをビジネスモデルの一つとして捉えている経営者が多いことも問題の一つです。

介護事業所は「介護の囲い込み問題」にどう向き合うべきか?

サ高住が、併設する介護事業所を指定し、入居者に介護サービスを提供することに違法性はありません。

問題視されているのは、入居者が自由に介護事業所を選べるのか、入居者に必要なサービスが提供されるのかという点です。

上記の2点を押さえた上で、質の高い介護サービスを併設する介護事業所で提供できるのであれば、正当性を訴えることができます。

たとえば、入居者に介護サービスの提供が必要になった際に、外部のサービスも選べると説明しておくことで、入居者の選択の自由を妨げずに済みます。

入居者が外部のサービスを利用すると、サ高住の経営が成り立たないのであれば、医療・介護サービスを提供できる重度の要介護者に対応できる施設として認定を受けるのも一つの方法です。

介護サービスを提供できる施設に認定されれば、介護サービス込みで施設を経営できるため、介護の囲い込み問題に発展することはありません。

そして、入居者の希望や要介護度に合ったサービスを適切に提供するためには、サービスの質を上げる努力が不可欠です。

サービスを提供する入居者ごとに必要なサービスをカバーできるような商品設計や事業計画を行うことが重要です。

さらに、サ高住に対するネガティブなイメージを払拭するためには、高品質なサービスを提供し続けることが求められます。

入居者ごとに適したサービスを提供して安定した生活を支援できれば、入居者を通じてケアマネージャーなどからの評価が高まり、信頼できる事業所として認識されるようになるでしょう。

まとめ

政府が自治体への補助金上限額を引き上げたことからも、介護事業所は介護の囲い込み問題に向き合わなければならないでしょう。

とはいえ、介護事業所は安定した経営を目指しつつ、サービスの利用者に必要とされる質の高いサービスを提供しなければならない難しい立場にあります。

さらに、介護保険制度の改正にも対応しなければならないため、法令を遵守する事業所であり続けるには定期的な情報収集が不可欠です。

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この記事の筆者・監修者

  • 介護のコミミ編集部

    介護のコミミ編集部

    介護のコミミのコンテンツである「コミミマガジン」の編集者。 介護現場から施設運営など、介護に関わる幅広い分野で月間5万人以上の介護職員に情報発信をしている。 記事は介護職員だけでなく、メーカーや行政からの関心も高まっているため、メーカーと介護現場を繋ぐ第三者目線を第一に、日々情報を提供している。

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