【介護取材】コロナ禍で売上減少を防いだ二つの施策とは?

介護施設への取材

【介護取材】コロナ禍で売上減少を防いだ二つの施策とは?
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こみたろう

「業務改善を行っている実例を知りたいけど、成功体験や反省点も知りたいなぁ」
「実際の業務改善のお話を聞いてみたいなぁ」

このようなお悩みを抱えてはいませんか?
今回、介護のコミミ編集部がリハビリ型デイサービス施設で、日々意欲的にそしてマルチな活動、活躍をされている「レコードブック相模原星が丘」様に介護事業所様で行われている業務改善についてお話をうかがいました。

施設を運営する上で、導入したツール、課題解決事例や浮き彫りになった課題など、介護のコミミでは介護従事者様の「本音」を掲載していますので、是非参考にしていただけると幸いです。

この方にお話を伺いました

健康と笑顔をつくる3時間リハビリ型デイサービス

レコードブック相模原星が丘

管理者 市川博基さん

2013年東海大学体育学部を卒業してからスポーツトレーナーとなりフィットネス業界に従事、その後転職をされWEB広告系の会社やPR会社にお勤めになり、現在はHeritage Works株式会社の ヘルスケア事業部・事業部長としてフランチャイズのレコードブック相模原星が丘にて管理者を されながら、同時に業務委託やフリーランスで様々な企業様のご支援をされておられます。

今回伺った事業所様 レコードブック相模原星が丘
事業所名 レコードブック相模原星が丘
業種 医療・福祉業学術研究・専門・技術サービス業
事業内容 コンサル業リハビリ型デイサービスの経営
法人名 Heritage Works株式会社(※フランチャイズ経営)
職員数 非公開(利用定員数 18名/回)
利用しているICTツール 介護ソフト(SuiSuiRemon)
ビジネスチャットツール(Slack、Chatwork)
人員配置 ・施設長
・運動指導員
・生活相談員
・看護師
定員 10名/回
ホームページURL https://www.heritageworks-jp.com/
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女性

課題感や対策について

Q.業務改善に取り組む中での課題、実際改善に取り組まれた内容を教えてください。

市川

課題:新型コロナウィルスによる売上減少

一番大きい課題として、新型コロナウィルスにおける売上減少と捉えています。

介護の仕事自体はご利用者様がいて成り立っている事業です。

しかし、デイサービスはご利用者様に来ていただかない限り事業所の売上にならないことから、課題として考えるようになりました。

コロナ渦では、ご利用者様自体がデイサービスに通うことを自粛したり、ADL(日常生活動作)低下などがみられる中でご利用者様の利用人数が計画した通りにいかないことも多々ありました。

 関連記事 【令和4年】介護現場のICT促進具合!コロナ禍で加速か?

解決策:売上減少の課題解決に向けて行った二つの施策

施策一:オンライン(ICT)化

営業活動をオンラインに切り替えたことです。

今までは対面で、近隣のケアマネさんや地域包括さんに「新規の紹介をお願いします」、

といった営業をしていたのですが、電話やFAX、メール、Youtubeの動画を作成し見ていただくことで対面で会わなくてもいい方法に変えました。

施策二:人件費の削減

コストの削減です。

コロナ渦で売上げが低下しているなかで事業所のスタッフ人数を調整したり、今いらっしゃるご利用者様に合わせたサービス定員人数の削減で調整しました。

 関連記事 【介護施設】オンライン面談ツール5選!導入方法から面会までの流れも徹底解説!

結果【成功もあったが失敗もあった】

レコードブック相模原星が丘

レコードブック相模原星が丘様のリハビリ風景

コスト削減に成功した

スタッフのシフト調整やご利用者様のサービス定員人数の上限を減らすことで、コロナ渦におけるコストの削減は課題の解決に至ったと思います。

小規模型デイサービスの場合、人件費以外の変動費は非常に少ないです。

そうすると、コストの削減する=人件費を削るになるので、削減した結果、想定し売上にならなくても黒字化はさせることができると私の事業所で証明することができたと感じています。

スタッフの負担が増えた

しかし、失敗したと感じるところもあります。

人件費を削る=コストの削減をする、ということは給料は上がらないが、2人で行っていた作業を1人で行うこと、要は負担が増えます。

1人1人の役割分担をはっきりさせておかなければならない、つまり業務過多が起きやすいことでスタッフの不満や悩みが起きやすくなる状態になります。

実際に長く勤めていたスタッフが退職する、といったことが反省点の1つだと思います。

 関連記事 ICT・IoT活用で月20万以上のコスト削減【改善ロードマップ】

ICT化について

Q.これまで完全オフラインでされていた営業をオンラインに切り替えられた事で営業を受ける側の戸惑いやオンライン化への抵抗はありませんでしたか?

市川

はい、ありました。
介護業界のICT化が進まないといわれていますが、現場でもそれを感じることが経験上多々ありました。

例えば、「Zoomってどう使うの?」とか「メールに添付ファイルってどうやってつけるんだっけ?」など、1つ1つの動作を説明しないとわからないスタッフがすごく多かったです。

ただ、課題の1つとしてあったコロナ渦が長引いていることもあり、インターネット環境やICTツールを活用せざるを得ない状況になっているため、これまでより拒否感なく、出来なくても伝えたらやってくれる、わかってくれるスタッフは増えたかなという印象です。

Q.現在、現場で導入しているITツールの活用内容について教えてください。

立上げ当初から介護ソフトはセントワークス株式会社さんのSuiSuiRemonを利用しています。

また、自社の働きかけでビジネスチャットツール(Slackスラック、Chatworkチャットワーク)そう言ったものを使って、なるべくペーパーレス化をする形で取り組んでいます。

Q.介護ソフト(SuiSuiRemon)を使ってみて感じたメリットはなんでしょうか?

介護ソフト(SuiSuiRemon)は主に請求とアセス・計画書作成に使用しております。

私は請求業務については介護請求ソフトしか使用したことがないので、他の請求方法が分からないです。

請求業務だけではなく、記録業務に関しても自分でフォーマットを用意するのは、時間がかかりますし、介護ソフトがなければ正直面倒だなと思います。

そういったツールを導入したほうが1つ1つの作業に時間がかかりませんし、複数のスタッフが入社したとしても間違いや、ヒューマンエラーが起こりにくいという点では有益だと感じています。

請求に関してはFC本部が取りまとめる関係でsuisuiのみの使用感しかわかりませんが、SuiSuiRemon(スイスイレモン)は機能面で使いにくさを感じません。

また、シンプルな仕様なので、スタッフのスキル問わず使用できることがよいと感じます。

介護保険の有効期間切れ、計画書の期間切れのアラートが表示される点もよいです。

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Q.介護ソフト(SuiSuiRemon)を使ってみて感じたデメリットはなんでしょうか?

LIFE加算に対して、関連した帳票作成が一元化できない部分は不満です。

Q.ビジネスチャットツール(Slack、Chatwork)を導入されて感じたメリットはどういった所ですか?

伝え漏れが減ったことです。

もちろん、スタッフ自体が確認しないと元も子もないのですが…

よくある口頭伝達は、文書形式で残らなかったので内容を覚えていない。といったことがビジネスチャットツールを導入してなくなりました。

極端な話、携帯電話にツールを入れておけば、24時間いつ、どこにいても確認することができるので、わざわざ職場に行ってパソコンを開くことや残業をしてまで確認をすることがありません。

情報の変更や緊急時の確認が電話やホワイトボードでの確認よりも早く、効率的に行えます。

送迎の運転時などにも便利で、非常に効率化ができていると思っています。

 関連記事 介護・福祉向けおすすめビジネスチャット6選!料金や口コミを徹底比較!

Q.ビジネスチャットツール(Slack、Chatwork)を導入されて感じたデメリットはどういった所ですか?

有料版でないと、アカウントやデータ容量などに制限があり、運用者数が多くなるにつれて管理コストがかかることですかね。

あとはWEB通話機能が機能的に他のツールと比べて最低限になっていることですね。

Q.ICTツールにスタッフが馴染めるようにしている取り組みはありますか?

そうですね、最初は戸惑う部分やパソコン、インターネット環境に関して苦手意識があるスタッフもいました。

ちなみにあるスタッフは最初「ぃ」(小文字のい)が入力できませんでした。

ですが、基本的には介護ソフトも簡単でテンプレート化されているものを利用していたので、ICT化への抵抗も少ないのかなと感じています。

また、スタッフを採用する際に事前に介護ソフトやビジネスチャットツールを業務で使用する事を説明しています。

その為、全く使えない、使いたくないという方は採用した方にはいないです。

あとは、なかば強制的にビジネスチャットツールのアカウントを作ってもらい勤務を始めた最初の段階から使用方法を教育して馴染んでもらっています。

基本的にソフトやビジネスチャットツールは「この場所をクリックすればこうなる。」といったテンプレート化されている部分も多いので抵抗なく使えていると感じています。

 関連記事 IoTとは?基礎知識から導入のメリット・デメリットまで

Q.今後こんな介護ツール、介護ロボットがあれば便利だなと思われるようなものはありますか?

コミュニケーションがとれるペッパー君のようなロボットがあるといいなと思います。

例えば、ご利用者様にもよりますが、お手洗いに介助が必要な方がいてマンツーマンでスタッフが付いてしまうと他のご利用者様の対応や、スタッフが助けを求めているときに助けにいけないことなどが発生します。

その際、ご利用者様を見ているスタッフがいなくなる、ご利用者様だけになる瞬間が絶対にないとは言い切れません。

スタッフがいない1人の時間をご利用者様が安心してその場にいられるような、コミュニケーションがとれるロボットがあればいいなと思います。

 関連記事 介護ロボットはなぜ必要?注目される理由と導入メリット、今後の課題を解説

Q.ICTツールを活用して行っている取り組みがあれば、教えてください。

現在運営しているレコードブックでは取り組みとして、Zoomを利用し本部のトレーナーが体操や機能訓練、リハビリテーションを提供するといった取り組みをしています。

この取り組みの狙いは「実際に目の前にトレーナーがいなくてもリハビリはできるということ」を実証しているところなんです。

ただ、トレーナーが完全についていない状態にシフトチェンジできる、また、まったくトレーナーがいない状態でデイサービスが成り立つ、といったことが絶対にありえないという考えが軸にあります。

しかし、コミュニケーションの一部を担えるというところで、ライブ配信だったり、映像で体操などを指導することも、可能性の一つとして感じて、取り組みをしているんです。

Q.業務改善、ICT化が進んでいる事業所様と進んでいない事業所様では何が違うと思われますか?

情報収集をアクティブにしているか、していないかの違いがあると思います。

情報収集に疎い事業所さんは、ある問題や疑問を持った時に他の事業所さんはどうしているのか、世間的、一般的にはどう対処しているのかなどの情報を取得できていないことで推進のスピードを鈍化させている理由であると感じています。

また、情報収集をしっかりしていれば、問題や疑問が出てきたとしても自分で考えて対処方法を想像することができると考えています。

Q.情報に常にアンテナを張って置くことが大切ということですね、ではどのようにして情報を取得されておられるのですか?

私たちの事業所はフランチャイズで本部があるので、そちらをメインに情報収集として活用しています。

レコードブックは全国に200店舗以上あり、情報の濃度も濃く取得できるので便利です。

また、本部などがない場合は、介護のWeb情報サイトのJOINTさんや介護のコミミさんなどで情報収集をします。

あとは地域包括さんや地元の市役所、区役所の福祉課の方々と密に連携をとるということも重要だと思います。

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まとめ

レコードブック送迎車

今回取材させていただいた「レコードブック相模原星が丘」様では、ある程度ITリテラシーがある人材を採用していたり、スタッフがICTツールに慣れて貰うためにまずは簡単なビジネスチャットツールから慣れて貰うなど円滑にICT導入を行っていました。

介護ソフトやビジネスチャットを駆使しICT化に積極的に取り組んだおかげで、人件費削減に伴う影響をICTツールで補うことで、売上減少を防ぐことができていました。

失敗事例としては、コロナ禍による利益減により人件費削減を余儀なくされた結果、コロナ禍への対応も加えて現場へのしわ寄せによりスタッフが辞めてしまうことがあったそうです。

職員への負担軽減の為に営業をオンライン化するなど新たな施策も実施しましたが、それ以上に職員への負担が大きかったのでしょう。

このように課題解決に向けて新たな施策を行うことで、更に問題が浮き彫りになるケースは珍しくありません。

問題を早期解決できるケースは逆に少なく、介護職員からフィードバックを貰い、中長期的な目線で根気強くトライアンドエラーを繰り返していき振り返ることが重要になります。

事業所内に目を向けるだけでなく、他事業所でどのようなツールを導入しているか?どんな施策を行っているか?など、アンテナを高くして情報収集することが課題解決への近道になるでしょう。

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山田衛
取材担当者:山田

今後更に介護職員に求められるスキルは、ITリテラシーの有無です。

普段からPCやスマホを上手く扱っている人は介護業界では貴重で必要な人材で、介護転職市場での価値は比較的高いものになっています。

「レコードブック相模原星が丘」様では、早い段階でICT化に向けてITリテラシーのある人材を採用していました。

これも情報収集をしっかりと行っているおかげだと感じました!

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この取材のインタビュアー

  • 山田衛

    山田衛

    大阪府出身、大学卒業後に営業職として医薬品業界を経験し、その後商社、人材会社を経て2021年5月より株式会社Giver Linkへジョイン。 同居する両親の高齢化や体力の衰えを目にする中「いつか来た道、いつか行く道」と介護業界への関心が高まり、自身も何か介護業界の課題や発展に役立ちたいと志す。介護現場の課題解決のため、日々介護ツールの提案や情報発信を行う。

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