IoTとは?基礎知識から導入のメリット・デメリットまで

介護施設の経営・運営改善

IoTとは?基礎知識から導入のメリット・デメリットまで
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こみたろう

「よく聞く言葉だけれど、そもそもIoTってなに?」
「IoTは何に使われるもの?」

このような疑問を持った方は多いのではないでしょうか。

さまざまな場面で耳にするようになった「IoT」という言葉。

介護の現場でもIoTの活用が広がっています。

IoTをなんとなく理解している人も、具体的にどのような場面で役立てられるのか、思い浮かべることは難しいかもしれません。

この記事では、介護分野のIoT化を推進している厚生労働省や経済産業省の情報を基に、IoTの基礎知識、IoTと似た用語「ICT」「IT」との違い、IoTを導入することのメリットとデメリットなどを詳しく紹介していきます。

今回の記事は、介護の現場をより良くするために、どのような点に気を付けてIoTのメリットを活かせばよいのかについて詳しく解説していきます。

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IT・ICT・IoTそれぞれの違い

IOT

「IoT」と似た言葉に「ICT」と「IT」があります。

それぞれが何を指している言葉なのか、概要を説明していきます。

ITとは?

ITとは「Information Technology」の頭文字をとった言葉です。

単にパソコンやスマートフォンなどの情報技術を意味する場合と、コンピューターとネットワークを利用した技術を指す場合があります。

後者は、それまでのアナログな手法をコンピューターとネットワークで変えることを意味し、具体的には「手書きでつけていた帳簿が電子入力になる」「紙で配布されていた給与明細がメール送信になる」といった例をあげることができます。

2000年頃から盛んに使われるようになりました。

ICTとは?

ICTとは「Information and Communication Technology」の頭文字を取った言葉で「情報通信技術」を意味します。

ITに「Communication」が付け加えられていますが、意味合いとしては「IT」とほとんど変わりません。

例えば、経済産業省では「IT人材の育成」などITがよく使われていますが、総務省では「ICT施策」などICTが使われており、ほとんどの場合で言い換えても意味が通ります。

ICTは、情報技術を共有するための「コミュニケーション」の意味をより強めた言葉だと覚えておくとよいでしょう。

IoTとは?

IoTは「Internet of Things」を略した用語で、「アイオーティー」と読みます。

直訳すると「もののインターネット」となり、あらゆるものとインターネットがつながることを意味します。

これまでインターネットは、パソコンとサーバーなどコンピューター同士をつないで通信するためのものでした。

しかし、現在では、コンピューターだけでなく、スマートフォンやスマートスピーカーなどの「もの」とインターネットをつなぎ、音楽や映像といったデジタル化された情報をやりとりすることが可能になっています。

冷蔵庫やエアコン、洗濯機、テレビなどをインターネットとつなぎ、温度管理や遠隔操作を可能にした「IoT家電」も、その1つです。

IoTでは「もの」同士の通信も行われます。

介護現場でのIoT技術の市場規模

上昇傾向

厚生労働省によると、介護保険制度が創設された2000年から2019年までで、65歳以上の被保険者数は約1.6倍になり、施設サービス利用者数は1.8倍、在宅サービス利用者数は3.9倍に増加しています。

要介護認定者数は19年間で約3倍に増え、増加のペースも拡大しています。

2030年には、総人口に占める65歳以上の人口が31%を超えるといわれており、超高齢社会を超える「超超高齢社会」の到来も目前です。

介護現場におけるIoT技術の市場規模も右肩上がりで、2018年の約10億円から、2025年には22億円に増加すると見込まれています。

介護を受ける人が増える一方で、介護従事者となる若い世代の人口が少なく、人材と介護の質を担保するための施策として国がICTの活用を後押ししていることも、市場規模の拡大が見込まれる理由といえるでしょう。

参考資料:MONOist「介護・福祉関連市場の調査報告、介護業務効率化支援システムが2025年に2.2倍へ」

介護事業所にiotを導入するメリット・デメリット

メリットとデメリット

厚生労働省と経済産業省がタッグを組んで強力に後押しするだけあり、IoTの導入には多くのメリットがあります。

その一方で、デメリットも考慮しておかなければなりません。

ここでは、介護現場におけるIoT活用のメリットとデメリットについて、具体的に説明していきます。

メリット①業務負担軽減

慢性的に人手不足が発生し、今後もその傾向が続くと考えられる介護業界では、業務の負担を軽減することが早急の課題です。

離れた場所の情報収集が得意なIoTは、高齢者の見守りに最適だと言えるでしょう。

高齢者には急病や転倒、深夜の徘徊などのリスクがあり、長い時間、完全に目を離しておくことはできません。

しかし、IoTを活用すれば、遠くにいる高齢者の状態を把握することが可能です。

また、服薬管理にもIoTは役立ちます。

薬の種類や容量、服薬のタイミングなどを管理し、服薬後に記録するシステムの導入などで業務を簡略化することができるからです。

介護の現場はミスが命に関わる場面も多く、スタッフは緊張を強いられています。IoTを導入することで心理的な負担もやわらげることができるでしょう。

メリット②ケアの質の向上

介護のIoT化により、スタッフの業務負担が減ると、それまで忙しくて優先順位を下げざるを得なかったことにも手を回すことができるようになり、結果的にケアの質が向上していくと考えられます。

また、IoTの導入により、高齢者の体調や状況をリアルタイムで確認できるようになるため、急変時には迅速に駆け付けることが可能です。

服薬や食事、体調といった介護の記録を分析し、一人ひとりにあわせたきめ細やかな対応もできるようになります。

メリット③職員の定着率向上

2018年から2019年にかけて行われた調査によると、訪問介護に従事する介護職員のうち、20代はわずか1.0%でした。

50歳以上が73%、60歳以上も37%以上を占めており、介護の現場が高齢化していることが分かります。

若い世代はスマートフォンやタブレットの利用に慣れており、IoTを使った介護との相性も抜群です。

従来の介護にマイナスのイメージを抱いている若者であっても、IoTを活用し、効率よく質の高いケアを提供できる介護現場であれば働きたいと考える人も多いでしょう。

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こみたろう

介護のコミミではiot,ict導入についての職員定着率について詳しく解説している記事があるよ。こちらも要チェック!

 関連記事 介護のICT化と離職率には相関関係があった!【503法人に意識調査】

メリット④コミュニケーションの増加

よりよい介護サービスを提供するためには、スタッフ同士、スタッフと利用者が頻繁に情報交換をする必要があります。

病院やケアマネージャーとも連携して、伝達漏れがないように気を配ることも大切です。

一方で、コミュニケーション不足が原因で離職するケースが多いのも事実です。

介護にIoTを導入すれば、利用者から得られる情報が格段に増え、その情報に誰もがアクセスできるようになります。

例えば、1日の歩数が多い利用者に対しては「お散歩の距離を伸ばしましょうか」などと声かけをすることもできますし、医療スタッフと相談して歩行訓練に生かすことも可能です。

デメリット①導入費用がかかる

IoTの導入を考えるうえで、多くの人がデメリットだと感じるのは、「初期費用の負担が大きそう」「システムの利用費やインターネットの使用料も積み重なれば負担になる」といった費用面の問題ではないでしょうか。

IoTを導入するためには、インターネット環境の整備が必要不可欠なので、インターネット環境がない場合は初期費用がかかることになります。

また、パソコンやタブレットなどデバイスの購入や、システムの導入にも費用がかかります。

デメリット②教育コストがかかる

うまく活用すれば、介護の質の向上や業務負担の軽減が見込めるIoT化ですが、初めから誰もが簡単に使いこなせるわけではありません。

同じ現場で働くスタッフが共通認識を持つことが目的なので、全員が使えるようになる必要があります。

介護従事者には若い世代が少なく、50代以上が圧倒的に多いため、パソコンやタブレットの操作に慣れていない人も多く、使いこなせるようになるまでに時間がかかります。

教育コストがかかり、システムが機能するまでに時間がかかる点もデメリットです。

デメリット③利用者の情報漏洩の可能性

介護をIoT化して、情報を電子化する場合、インターネットを通じて情報漏えいのリスクがあることを理解しておかなければなりません。

介護施設が有している情報は、利用者の個人情報に健康状態や顔写真、動画などが紐づいていることが多く、個人を特定したり、悪用したりされかねないため、取扱いに配慮が必要です。

事業所に置いてある重要な書類を金庫に入れたり、鍵を入れたりして守るのと同様に、IoT導入時にセキュリティ対策を万全に整えておきましょう。

IOT導入に活用できる補助金制度

補助金制度

介護の現場にIoTを導入する際の費用面での負担を軽減するために、補助金制度が用意されています。

いずれも補助金額が大きいため、申請して活用したい制度です。

厚生労働省と経済産業省が実施する3つの制度について、詳しく紹介していきます。

1.ICT導入支援事業

ICT導入支援事業とは、介護分野の生産性を高めるため、ICT化を進める目的で厚生労働省が行っている事業です。

地域医療介護総合確保基金により、ICT導入支援事業費補助金の支給を受けることができます。

対象となるのは、記録業務、情報共有業務、請求業務などを一気通貫で行うことができるシステムの導入やタブレット端末の購入などです。

クラウドサービス費や保守、サポート費、導入研修費なども対象となります。

補助金の額は、職員数に応じて設定されており、かかった費用の2分の1(上限最大260万円)が補助されます。

IT導入補助金との併用はできないため、注意が必要です。

ICT導入支援事業の窓口は各自治体で、対象は各都道府県内の介護サービス事業所です。

2.介護ロボット導入支援事業

介護事業者が、介護ロボットの導入や見守り機器の導入に伴う通信環境整備を行う際に、費用の一部を補助します。

対象となるのは、経済産業省が行う「ロボット介護機器開発・標準化事業」において採択された介護ロボットです。

そのほかにも、「日常生活支援における移乗介護、移動支援、排泄支援など、介護従事者の負担軽減効果のある介護ロボットであること」といったさまざまな条件があります。

移乗支援や入浴支援で使用される介護ロボットについては上限100万円、それ以外のロボットについては上限30万円が補助されます。

見守り機器の導入に伴う通信環境整備への補助は、1事業所当たり上限750万円です。

各都道府県の地域医療介護総合確保基金によるもので、窓口は各自治体です。

3.IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)は、経済産業省が行う補助金制度で、中小企業や自営業へのITツールの導入を対象としています。

介護分野も対象になっているため、補助の対象となる項目や補助金額などをICT導入支援事業費補助金と比較して、どちらかを申請するとよいでしょう。

両方採択された場合は、どちらかを辞退する必要があります。

2021年に関しては、通常枠(A類型、B類型)、特別枠(低感染リスク型ビジネス、テレワーク対応類型)が用意されています。

通常枠ではソフトウェア費や導入関連費が対象となり、特別枠ではこれに加えて、ハードウェアレンタル費も補助されます。

補助金額は、申請する類型により30万~450万円です。

「IT支援事業者」よる申請サポートも充実しています。

介護現場でのIot製品の事例

介護ロボット 事例

IoT技術を介護の現場で活用した製品にはどのようなものがあるのでしょうか。

「実際にどのような形で介護の現場で生かせるのか、想像がつかない」という人もいるかもしれません。

ここからは、IoT技術を活用した製品の事例を紹介していきます。

事例1.介護記録ソフト「ケアカルテ」

ケアカルテの紹介

 

ケアカルテは、モバイル端末を使って、介護記録の入力や計画書の作成を行うことができる介護カルテです。

入力された記録をもとに、介護報酬の請求や利用者請求に必要な書類を自動作成してくれます。

入力された記録を利用することで面倒な転記作業を省くことができるほか、ナースコールや見守りシステムなど外部システムとの連携をすることにより、業務の負担を軽減しながらケアの質を向上させることが可能です。

ケアマネージャー、医療スタッフ、家族などが、書き込んだり閲覧したりできるシステムが用意されており、コミュニケーションツールとしても活用できます。

情報セキュリティの国際的な認証である「ISO27001」を取得しており、1万2000にも及ぶ事業者が導入しています。

事例2.見守り支援システム「眠りSCAN」

眠りスキャンの説明

眠りSCANは、パラマウントベッド株式会社が提供する見守り支援システムです。

ベッドのマットレス下に設置されたセンサーが、寝返り、呼吸、心拍など就寝時の体動を測定し、複数の利用者の睡眠状態を測定、記録します。

睡眠状態は、パソコンやタブレットなどでリアルタイムに確認することができ、体調の急変時はもちろん、睡眠の状態をチェックすることで本人が気づいていない体調の変化が分かったり、呼吸や心拍の変化を基にしたケアプランを立てることができたりする利点があります。

夜間の介護は負担が大きく緊張を強いられるものですが、一元管理ができるため、従業員の業務負担を大きく減らすことが可能です。

ナースコールと連携させて活用できます。

介護製品の展示会が開催されている

展示会

介護製品に特化した展示会が全国各地の会場やオンラインで定期的に開催されています。さまざまな介護用品が一堂に会し、担当者と直接話をすることができる機会です。

日本最大級の規模を誇る「CareTEX」は、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台で開催されています。

介護用品、介護施設向け設備・サービスに特化した展示内容で、見守りシステム、介護システムなどIoT技術を活用した製品も出品されています。

入場は業界関係者限定で、プロ同士のBtoBの商談のみが行われる点が特徴です。

「次世代介護テクノロジー展」「在宅医療総合展」「介護予防総合展」など6つの専門展をCareTEX東京と同時開催。

また、「CareTEX365オンライン」も開催されており、24時間365日どこからでもアクセスが可能です。

そのほか、「介護&看護EXPOオンライン」では、最先端の介護ロボット・AI、介護ICT、業務支援システムなどが出展されます。

チャットやウェブ会議を使って直接質問や商談ができるオンライン展示会です。

「介護・福祉設備機器展」は、病院・福祉・介護施設の経営者、介護福祉士、医療従事者などに対象を絞って行われます。

見守りシステムや介護ロボットなどを含む介護・福祉機器と、リハビリ機器が出展されます。

まとめ

まとめ

 

IoTを導入することで介護現場の負担は減り、質の高いケアを提供することが可能です。

介護に従事する人にも、サービスの利用者にもメリットが大きく、介護事業者の人手不足解消にもつながります。

デメリットの1つである初期費用の負担は、国が行っている補助金を活用することである程度カバーできるので、積極的な利用を検討しましょう。

IoT技術を活用したさまざまな製品が販売されています。

どの製品を導入すればよいか迷ったら、介護製品に特化した展示会に足を運ぶなどして、実際に製品に触れたり、担当者の話を詳しく聞いたりするとよいでしょう。

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この記事の筆者・監修者

  • 介護のコミミ編集部

    介護のコミミ編集部

    介護のコミミのコンテンツである「コミミマガジン」の編集者。 介護現場から施設運営など、介護に関わる幅広い分野で月間5万人以上の介護職員に情報発信をしている。 記事は介護職員だけでなく、メーカーや行政からの関心も高まっているため、メーカーと介護現場を繋ぐ第三者目線を第一に、日々情報を提供している。

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