介護報酬の加算・減算
「今日もガソリン代が高かったな…」
「利用者さんのお宅が本当に遠くて、移動だけで時間が過ぎていく」
「スタッフが足りない。募集してもなかなか人が集まらない」
「報酬単価、もう少し何とかならないものか…」
訪問介護事業所を運営されている経営者やサービス提供責任者のみなさん、このような悩みを抱えていらっしゃいませんか?
もしあなたの事業所が、中山間地域で経営している小規模事業所であれば中山間地域等における小規模事業所加算を取得することで、これらの課題を解決できるかもしれません。
特に2025年5月からは、中山間地域等における小規模事業所加算の算定要件が緩和されて、算定対象となりうる範囲が大幅に拡大されました。
そこで、この記事では、中山間地域で小規模な訪問介護事業所を運営されているみなさんに向けて
を、2025年5月時点の最新情報を元に詳しく、わかりやすく解説します。
この記事を読むことで、あなたの事業所がこの加算の対象となる可能性や収益改善できる可能性を見出すことができるので、ぜひ最後までお読み下さい。
※この記事の内容はYouTube動画でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。(以下をクリックすると動画を再生することができます)
まずは、中山間地域等における小規模事業所加算がどのような加算なのか、基本的なところから確認しましょう。
この加算は、その名の通り「中山間地域等」に所在し、かつ「小規模」な介護サービス事業所が取得できる加算です。
中山間地域等は、人口が少なく、利用者様のお宅が広範囲に点在していることが多いですよね。そのため、訪問介護サービスを提供する際には、どうしても移動に多くの時間とコストがかかってしまいます。また、人材の確保も都市部に比べて難しいのが実情です。
こうした事業運営上の不利な条件を抱えながらも、地域住民にとってなくてはならない訪問介護サービスを提供し続けている小規模な事業所の収益を支援する目的でこの加算は生まれました。
この加算を取得する最大のメリットは、言うまでもなく収益の増加です。
加算によって得られた収入は、以下に活用できるようになるため、事業所の収益や経営課題を解決する一助になります
このように、加算の取得は単に収入が増えるだけでなく、事業所の抱える様々な課題解決への糸口となり得るのです。特に経営難に悩む小規模事業所にとっては、まさに「経営改善の切り札」となる可能性を秘めています。
この加算は、様々な介護サービスが対象となっていますが、もちろん訪問介護も対象に含まれていて、その他にも訪問系のサービスとしては、以下のサービス種別が対象となります。
また、これらのサービスの「介護予防サービス」も対象です。
さらに、直接的な訪問サービスではありませんが、在宅ケアを支える以下のサービスも対象です。
算定単位数は一部サービスを除き、所定単位数の「10%を加算」となっています。
例えば、訪問介護の基本報酬(所定単位数)が1回あたり300単位だとすると、その10%である30単位が上乗せされる計算になります。
「10%か・・・」と思われるかもしれませんが、令和6年の報酬改定で改訂された基本報酬のマイナス分を十分に回収できる加算率ですし、毎回の訪問、毎月の請求で積み重なると、決して小さくない金額になるため、減収に苦しむ事業所は無視すべきではないでしょう。
さらに2025年には、訪問介護をはじめとする昨今の深刻な経営状況を受けて、この中山間地域等における小規模事業所加算の算定要件が緩和されることとなりました。変更の内容の要点は以下の通りです。
なお、訪問回数の「概ね200回以下」の解釈については、厚生労働省の通知では以下のように明記されています。
なお、「概ね200回」は400回程度を想定しており、例えば、前年度の平均延訪問回数600回以下の事業所等も対象となり得るものである。引用元:厚生労働省『介護保険最新情報 Vol.1382』(2025年5月2日)
上記から分かる通り、今回の要件緩和によって対象となりうる事業所が大幅に増えることとなりました。該当する可能性がある事業所の方は、以下の算定要件も確認し、今すぐ算定の準備を進めましょう。
さて、先述の2025年5月の最新情報を踏まえて、算定要件の全体像を今一度確認しましょう。
まず、あなたの事業所が厚生労働省が定める中山間地域等に所在している必要があります。具体的には、以下のいずれかに該当していることが要件となります。
なお、先述のとおり2025年5月に行われた要件緩和によ理、上記のいずれかに該当すれば、地域区分は問われないこととなりました。
地域要件を満たしていても、事業所の規模が一定以下でなければ、この加算は算定できません。訪問介護事業所の場合、最新の基準では前年度のいずれかの月の1ヶ月あたりの延べ訪問回数が200回以下であること が要件として定められています。
2025年4月以前は、「前年度の1月あたりの訪問回数が平均200回以下」であったところが、「平均」ではなく「いずれか」が基準の回数を下回っていれば良いことになり、またその基準も「概ね200回」とされている点が、2025年5月の変更によってかなり緩和されています。(「概ね200回」の解釈も400回程度を想定していると、厚生労働省は明言しています)
上記の地域要件と規模要件の両方を満たしていても、自動的に加算されるわけではありません。以下の手続きが必要です。
項目 | 内容 |
---|---|
利用者への説明と同意 | 加算を算定する前に、利用者様やご家族に対して、この加算を算定することについて、その趣旨や内容を事前に説明し、同意を得ておく必要があります。重要事項説明書などに記載し、同意の署名をもらうなどの対応が一般的です。 |
都道府県等への体制届の提出 |
加算を算定したいと考えたら、あらかじめ事業所の所在地を管轄する都道府県知事等(市町村の場合もあり)に対して、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」(いわゆる体制届)を提出し、「中山間地域等における小規模事業所加算を算定できる体制にあります」と届け出る必要があります。 この届出が受理されて初めて、加算の算定が可能になります。提出期限や様式は自治体によって異なる場合があるので、必ず確認しましょう。 |
2024年度(令和6年度)に行われた介護報酬改定で、この「中山間地域等における小規模事業所加算」に関して、重要な変更がありました。
それは、算定対象となる過疎地域の定義が明確化されたことです。
具体的には、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」という法律で、「過疎地域とみなされる地域」(いわゆる「みなし過疎地域」)についても、この加算の対象地域に含まれることが、厚生労働省の告示改正によって明記されました。
参考:『令和6年度介護報酬改定における改定事項について(訪問介護)』(和歌山県福祉保健部介護サービス指導課)
これまで、「うちは『みなし過疎地域』だから、この加算の対象になるのかならないのか、よく分からない・・・」と判断に迷っていた事業所があったかもしれません。しかし今回の改定で、こうした「みなし過疎地域」も正式に対象となることが明確になったため、これまで対象外だと思っていた事業所が実は加算を算定できる可能性が出てきたのです。
もし、ご自身の事業所が「過疎地域」や「みなし過疎地域」に該当するかもしれないと思われる場合は、改めて市町村等に確認し、加算算定の可能性を検討してみる価値は十分にあります。
また、今回の改定では、訪問介護の「特定事業所加算」の見直しの中で、中山間地域等で継続的にサービス提供を行っている事業所を新たに評価する視点も盛り込まれました。これは国全体として、中山間地域等でのサービス提供の重要性や困難さをより重視する流れがあることを示唆しています。
今回は、中山間地域で小規模な訪問介護事業所を運営されている皆様にとって、経営改善の切り札となり得る中山間地域等における小規模事業所加算について詳しく解説してきました。
最後に、中山間地域等における小規模事業所加算の対象となる事業所であれば、併せて算定できる可能性がある加算を紹介します。
※加算名をクリックすると、その加算の加算率や算定要件を確認することができます
加算名 | 内容 |
---|---|
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 前述の通り、通常の実施地域を越えて、別の中山間地域等に住む利用者へサービスを提供した場合に算定できます。本加算(10%)と併算定できる可能性があり、合計15%の加算が見込めます。 |
特定事業所加算 | 中山間地域等における小規模事業所加算とは併算定できませんが、特定事業所加算(Ⅴ)以外の区分であれば、質の高いサービス提供体制を構築することで算定を目指せます。特に令和6年度改定では、中山間地域での継続的なサービス提供も評価される方向性が示されています。自所の体制や強みに合わせて、どちらの加算を目指すか検討する価値があります。 |
介護職員等処遇改善加算 | これは中山間地域に限りませんが、スタッフの賃金改善等に充てるための重要な加算です。令和6年度からは一本化され、より柔軟な配分が可能になりました。確実に取得し、人材確保・定着につなげましょう。 |
中山間地域での訪問介護事業所の運営は、決して楽な道のりではありません。しかし、そこには地域住民の生活を支えるという、かけがえのない使命とやりがいがあります。利用できる制度は最大限に活用し、少しでも経営を安定させ、スタッフが安心して働き続けられる環境を整えることが、結果として地域への貢献にもつながります。
この記事が、皆様の事業所の未来を少しでも明るく照らす一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
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