介護施設の経営・運営改善
「高齢者住宅事業は儲かるのか?」
「運営の費用や補助金は出るのか」
サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの経営者の中には、このような疑問を持っている人も多いと思います。
高齢者住宅事業は人件費の削減が容易でなく利益確保が難しいからこそ、収益構造を理解して改善策を打たないと経営悪化に苦しむリスクを高めます。
今回はサービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの経営者に向け、高齢者住宅事業の利益率や運営での課題、デメリット、収益改善のヒントを3つに絞ってご紹介しています。
ぜひ、運営改善の参考にしていただけると幸いです。
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口コミランキングを見るサービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームで比較すると、サービス付き高齢者向け住宅のほうが安く設立しやすい傾向にあります。
サービス付き高齢者向け住宅は有料老人ホームと支出の差はありません。
しかしサービス付き高齢者向け住宅では補助金や税制の優遇措置を受けられるため、費用の負担が少なく済むのが両者の大きな違いです。
サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの支出や収入源を比較する前に、本章ではサービス付き高齢者向け住宅の設立、運営にかかる費用や受けられる補助金と、税制の優遇措置について確認していきましょう。
関連記事 :サービス付き高齢者向け住宅とは?費用や入居条件など徹底解説!
サービス付き高齢者向け住宅の収入に関する詳しい調査データが公表されていないので、利益率の計算は難しいのが現状です。
ここではサービス付き高齢者向け住宅の運営に必要な支出を確認していきましょう。
今回は土地面積250坪、定員18名のをご紹介します。
・土地購入費 約1億円
・建築費 約2億1,000万円
・会社設立費用 約20~30万円
・備品、設備 約1,500万円
・販促、営業費 約200万円
・求人費 約20万~300万円
・人件費 規模により異なる
・固定資産税 土地や家屋によって異なる
土地購入費や建築費は地域や建物の種別(木造、マンション、階数)などにより大きく変動するため、1億円は目安の1つに過ぎません。
土地購入費から固定資産税までを合算すると、おおよそ3~4億円前後が設立・運営に必要となります。
通常の賃貸経営と異なり、介護保険制度で定められた人員を配置する必要があり、多くの人件費が発生します。
サービス付き高齢者向け住宅を運営するときは、経費削減で人員を減らせない点に留意しておきましょう。
次に、サービス付き高齢者向け住宅が利用できる補助金や優遇措置を3つ、ご紹介します。
・新築であれば建設工事費の10分の1の範囲内で補助(1戸につき上限120万円)
・高齢者生活支援施設の合築・併設(1戸につき上限120万円、デイサービスや診療所、住宅部分は除く)
・税制の優遇措置(所得税、固定資産税、不動産所得税などが対象)
これらは有料老人ホームでは支給されないため、サービス付き高齢者向け住宅であれば、比較的金銭の負担が少なくお得に設立できる可能性が高いです。
なお、補助金や税制の優遇措置は年度により要件が変動するので、自治体や国税庁のホームページを事前にチェックしておきましょう。
参考:厚生労働省「令和元年版高齢社会白書」
ここではサービス付き高齢者向け住宅の収入源がいくつあるのかを解説します。収入源は以下の通りです。
・家賃
・敷金、礼金
・管理費
・生活支援サービス費
・食費、その他のサービス費
サービス付き高齢者向け住宅の収益構造は、賃貸住宅のため一般の介護施設と異なり、不動産賃貸事業と同じ仕組みで家賃収入が収益の大部分を占めます。
収入の金額の調査データがないので、収入がいくらかの相場など具体的な数字は不明です。
有料老人ホームの利益率やどのくらい儲かるのかは、利益の調査や目安が公表されていないため、はっきりとした数値はわかりません。
有料老人ホームの支出について目安をご紹介するので、参考にしてみてください。
本章では、有料老人ホームの設立や運営に必要な費用、補助金、収入源などを詳しく解説します。
有料老人ホームの説立から運営にかかる費用はサービス付き高齢者向け住宅と同じで以下の通りです。
こちらも先ほどサービス付き高齢者向け住宅と同じく、土地面積250坪、定員18名のに挙げています。
・土地購入費 約1億円
・建築費 約2億1,000万円
・会社設立費用 約20~30万円
・備品、設備 約1,500万円
・販促、営業費 約200万円
・求人費 約20万~300万円
・人件費 規模により異なる
・固定資産税 土地や家屋によって異なる
設立や運営に関する費用の金額は、サービス付き高齢者向け住宅も有料老人ホームに差はありません。
しかし、有料老人ホームでは補助金や税制の優遇措置なく、サービス付き高齢者向け住宅よりも費用が大きくなる傾向にあります。
参考:ネオキャリア
次に有料老人ホームの収入源について確認していきましょう。
・家賃
・管理費
・一時入居金
・生活支援サービス費
・介護費用
・食費、その他サービス費
サービス付き高齢者向け住宅との大きな違いは、一時入居金の収入があることです。
一時入居金の額は施設によって変動があり、0円のところや数千万円ほどかかる場合があります。
しかし高齢者の住まい法が改正され、近年では一時入居金0円が一般的となりました。
収益構造はサービス付き高齢者向け住宅と同様に家賃、管理費、食費が大部分を占めていますが、特に大きな収入となるのが前述した入居一時金です。
参考:イエウエール
サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム運営で浮上する課題・デメリットは主に以下の4つです。
・人件費の削減が難しい
・入居者の介護度に合わせた介護サービス提供・利益確保が難しい
・人材確保が難しく空床が減らせない
・介護報酬の改定による経営悪化が懸念される
介護業界は特に採用しても職員が定着しづらく、人材確保が難しい業界と言われています。
また国による介護報酬の改定も、経営に大きな影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
以下で詳しく確認していきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅のところでも触れましたが、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームには人員の基準が決まっているため、人件費の削減が容易ではありません。
また介護をする上で入浴介助や食事介助など、あらゆる場面で職員によるサポートが必要です。
人件費を削って法定を下回る人員にすることはできませんし、ぎりぎりの人数で運営をするとサービスの質の低下や、事故のリスクを高めるといった可能性があります。
人件費を適切にして利益を得るためには、人員数を適切に確保して人員不足や人員過剰にならない経営をすることが大切です。
関連記事 :ヘルパーの離職率が上昇?コロナ禍で安定の介護業界は本当?
2つ目の課題は適正な介護サービスの提供と、利益の確保です。
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの人員配置基準に、要介護度は影響しません。
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームでは要介護度の低い利用者を想定しており、介護サービスや認知症へのケアが十分に行える環境が整っていないケースが多いです。
また入居当時は元気でも、時間の経過により認知症の症状が進むことや、介護度も重度になる可能性もあり得るでしょう。
介護度が重度になったときや認知症が進んで介護職員の負担が増えたときでも、利益の確保ができるよう、経営戦略を立てておくことが重要なポイントです。
空床による家賃収入の減少も、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームが抱える課題の1つです。
少し古いデータですが、みずほ情報総研が実施した2017年3月の調査では特別養護老人ホームのうち、約3割近くが空床を抱えていること分かりました。
空床の原因として、人材確保が難しいことが理由に挙げられます。
人材が確保できないと施設の人員基準が満たせないため、入居者を受け入れられません。
その結果、空床が発生して収入が得られなくなる事態に陥ります。
また、高齢者向け住宅や有料老人ホームではなく、なるべく自宅で介護したい、過ごしたいという人が増えていることも、空床の要因と言えます。
職員の離職率を食い止めて定着する仕組みを作り、集客の戦略を練って課題解決に取り組みましょう。
4つ目の課題は介護報酬の改定による影響です。
介護報酬とは利用者が介護サービス利用時に対価として事業者に支払う報酬を指します。
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの家賃、管理費といった自由に金額を決定できるものと違い、介護サービスは介護報酬を国から受給するため、介護保険制度で金額が詳細に設定されています。
そのため事業経営者の判断はおよばず、代金や費用の変更は認められません。
介護報酬は3年に一度改定され、場合によっては切り下げになり、経営悪化の原因になることもあり得ます。
サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの設立時には、介護報酬による経営悪化のリスクも念頭においておき、リスクに備えた経営をしましょう。
参考:厚生労働省「介護報酬の仕組みについて」
関連記事 :介護報酬ファクタリング会社2選!介護ソフトで工数削減
前章ではサービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの課題やデメリットをお伝えしました。
ここからは、具体的にどうやって収益アップを目指せば良いか、4つのポイントをご紹介します。
・介護ロボット・ツールの導入
・ケアマネージャーによる適切な介護保険利用
・施設見学のオペレーション改善
・広報活動の改善
収益改善を図るには、ツールを新しく導入したり広報活動を見直したり、あらゆる角度からアプローチするのが重要です。
以下でそれぞれの詳細をみていきましょう。
1つ目の方法は介護ロボット・ツールの導入です。
介護ロボット・ツールを導入するメリットは業務負担の軽減です。
介護ロボットは歩行アシストにより外出をサポートしたり、排泄物の処理をしたり業務のサポートを行ってくれます。
また介護ツールを使って請求処理をシステムで管理でき、マニュアルの作成やスマートフォンで入力した内容をシステムと連携して提供したサービスの管理ができるなど、業務効率化が可能です。
介護ロボット・ツールを導入することで、職員の負担を軽減し、定着率の向上を目指して空床を防ぐことが、収益改善につながるでしょう。
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関連記事 :【介護ロボット】種類は6つ!各種導入効果も解説します
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関連記事 :500人が決めた介護ソフト人気ランキング20選!無料版も紹介
収益改善を図るために、介護保険の適切な利用も効果的です。ケアマネージャーとは介護支援専門員のことで、ケアプランの作成やサービス事業者と利用者の仲介役となって利用者が適切な介護保険サービスを受けられるようにする人を言います。
ケアマネージャーが適切に介護保険を利用できるよう利用者へケアプランを提示することで、利用者の生活や金銭の負担が軽減されます。
このように適切な支援を通し、利用者の満足度が上がれば経営するサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの評判が良くなり、収益改善にも良い影響を与えると考えられます。
施設見学のオペレーション改善も、収益改善の重要なポイントの1つです。
オペレーションとは、目標達成のための手順、目標達成に付随する作業や実務のことを指します。
オペレーション改善とは具体的に言うと、無駄な作業を減らす、効率の悪いことから効率の良いことに方法を変える、などです。
見学者への対応は、成約率につながる重要な業務です。
オペレーションを改善して見学者数を増やし、見学の稼働率を上げることで入居者が増え、収益改善の可能性を高めるでしょう。
収益改善には広報活動の見直しも効果的です。広報活動とは事業活動の報告をしたり、事業方針を発表したりすることです。
主な手法として、下記のようなものがあります。
・プレスリリース配信
・取材
・ブログ配信
・イベント企画
この活動で企業をPRすることにより、事業と地域社会の人たちとの関係を築き、他の事業者との差別化を図るのに役立ちます。
多くの見学者に来てもらうためには、まず事業を認知してもらわなければなりません。そのために広報活動は非常に有効な手段です。
今回の記事ではサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの利益率をはじめ、運営の課題・デメリットなどをご紹介しました。
高齢者向け住宅事業は高齢者の生活を支える重要な役割を担っていますが、人材確保や集客をはじめ経営の課題を改善しないとサービスの質の低下を招き、経営が悪化につながります。
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームでの収益改善を図るには、特に介護ロボット・ツールの導入が有効です。
介護者の負担の軽減だけではなく、製品によって24時間録画機能があるので利用者の安全につながり、事故などのトラブルが発生したときは原因究明に役立つなど、大きなメリットが得られます。
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