介護施設の経営・運営改善
「ある日突然、運営指導の通知が届いた…!何から準備すればいいか分からない…」
「たくさんの書類があるけど、具体的にどの項目を見られるんだろう?」
訪問介護事業所を運営する上で、避けては通れないのが運営指導(旧:実地指導)です。多くの事業所の皆様が、このような不安を抱えているのではないでしょうか。
運営指導は、介護サービスの質の確保と保険給付の適正化を目的として、都道府県や市町村が介護事業所に対して行う行政指導です。決して「事業所のあら探し」をするものではありません。しかし、準備が不十分だと、予期せぬ指摘を受け、報酬返還や行政処分につながる可能性もゼロではありません。
そこでこの記事では、厚生労働省の公式マニュアルと最新の法令(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)に基づき、訪問介護の運営指導で必ず確認される「6つの大領域」の全項目を網羅した、完全版チェックリストを作成しました。各チェック項目について、根拠法令、準備すべき確認書類はもちろん、よくある指摘事例と具体的な対策まで徹底的に解説しています。
✔ 運営指導で絶対に見られる「6つの大領域」の全体像
✔ 人員・設備・運営に関する全チェック項目と根拠法令
✔ 各項目で準備すべき「確認書類」の一覧
✔ 指摘を受けやすいポイントと具体的な対策
✔ 勤務形態一覧表や運営規程など重要書類の記載ポイント
✔ 2024年度義務化のBCP・虐待防止への対応方法
この記事を上から順に読み進め、自事業所の体制と照らし合わせるだけで、運営指導に向けた万全の準備が整います。ブックマークして、いつでも見返せる「お守り」としてご活用ください。
本記事は、厚生労働省が公表する「介護保険施設等運営指導マニュアル」および「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の最新版に基づき、訪問介護事業所に特化したチェックリストとして作成しています。2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で新たに義務化された項目(BCP策定、虐待防止措置の完全義務化、認知症介護基礎研修の受講義務化など)にも完全対応していますので、最新の基準でチェックしていただけます。
なお、運営指導の全体像(通知から改善報告までの流れ、オンライン指導の注意点など)について先に詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みいただくのがおすすめです。
▶ 訪問介護の運営指導(実地指導)完全ガイド|通知から改善報告までの全流れと対策
【領域1:人員基準】サービス提供責任者・訪問介護員等のチェックリスト
【領域3:個別サービスの質①】説明・同意・心身の状況把握のチェックリスト
【領域3:個別サービスの質②】サービス提供記録・身体的拘束・訪問介護計画のチェックリスト
【領域4:体制①】勤務体制・管理者・利用料・緊急時対応のチェックリスト
【領域5:体制②】運営規程・研修・BCP・虐待防止等のチェックリスト
【領域6:管理③】秘密保持・広告・苦情処理・事故対応等のチェックリスト
訪問介護の運営指導で確認される項目は、大きく分けて以下の「6つの大領域」に分類されます。これは、厚生労働省が示す「介護保険施設等運営指導マニュアル」に基づいた分類であり、全国どの自治体の指導でも共通の考え方です。
【運営指導の6大領域】
✔ 領域1:人員に関する基準(指定居宅サービス等基準 第5条〜第6条)
サービス提供責任者や訪問介護員が、定められた人数・資格要件を満たしているか。管理者が常勤専従で配置されているか。
✔ 領域2:設備に関する基準(同基準 第7条)
事業所として必要な事務室や相談室、備品などが適切に確保されているか。
✔ 領域3:個別サービスの質に関する事項(同基準 第8条〜第24条)
利用者への説明と同意、訪問介護計画の作成、サービス提供記録、身体的拘束の取り扱いなどが適切か。
✔ 領域4:個別サービスの質を確保するための体制①(同基準 第25条〜第28条)
勤務体制の確保、管理者の責務、利用料の受領、緊急時の対応などが適切か。
✔ 領域5:個別サービスの質を確保するための体制②(同基準 第29条〜第37条の2)
運営規程の整備、衛生管理、BCP策定、研修の実施、虐待防止措置、ハラスメント対策などが適切か。
✔ 領域6:事業の人員、設備及び運営の管理③(同基準 第32条〜第39条)
秘密保持、広告、苦情対応、事故対応、会計の区分、記録の整備などが適切に行われているか。
運営指導は、原則として事前通知のうえで実施されます。通知から実施までの期間は自治体によって異なりますが、概ね1か月〜3か月程度の猶予があるのが一般的です。この期間を有効に活用し、計画的に準備を進めることが重要です。なお、不正が疑われる場合には「監査」として事前通知なしに実施されることもありますが、通常の運営指導であれば事前に日程調整が行われます。
運営指導の当日は、通常2〜3名の指導員が事業所を訪問し、書類の確認やヒアリングを行います。所要時間は概ね2〜3時間程度です。指導員は、事前に提出を求めた書類(自己点検シートや勤務形態一覧表など)をもとに、現地で原本を確認しながら質問を行います。近年では、オンライン(リモート)での運営指導を実施する自治体も増えており、書類の電子化やデータ管理の重要性がますます高まっています。
以降のセクションで、これら6つの領域ごとに、具体的なチェック項目と根拠法令、準備すべき確認書類、そしてよくある指摘事例と対策を一つひとつ詳しく解説していきます。

事業運営の根幹である「人」に関する基準です。特にサービス提供責任者(サ責)の配置と資格要件は、減算に直結する最重要項目として厳しくチェックされます。人員基準を満たしていない場合、「人員欠如減算」として介護報酬が30%減額されるだけでなく、最悪の場合は指定の取消しにもつながりかねません。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 利用者の数に応じて、常勤のサービス提供責任者を適切な人数配置しているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第5条第2項 |
| 確認項目 |
|
サービス提供責任者の配置基準は、利用者数が40人またはその端数を増すごとに1人以上です。「利用者数」は、前3ヶ月の平均値で計算します。具体的な配置基準は以下の通りです。
| 利用者数 | 必要なサ責の人数 |
|---|---|
| 1人〜40人 | 1人以上 |
| 41人〜80人 | 2人以上 |
| 81人〜120人 | 3人以上 |
| 121人〜160人 | 4人以上 |
ただし、以下の条件を満たす場合は、利用者数50人またはその端数を増すごとに1人以上に緩和される特例があります。
【サ責の配置基準緩和の条件】
以下のいずれかを満たす場合:
① サービス提供責任者を常勤で3人以上配置している場合
② サービス提供責任者のうち1人以上が常勤の介護福祉士である場合
【よくある指摘事例】
利用者数の増加に伴い、サ責の配置が基準を下回っていた(前3ヶ月の平均値の計算を怠っていた)
サ責が退職した後、後任の配置が遅れ、一時的に基準を下回っていた
サ責が長期の病気休暇に入ったが、代替者を配置していなかった
【対策】
毎月の利用者数を把握し、3ヶ月平均を定期的に計算する仕組みを作りましょう。サ責の退職や休職が発生した場合に備え、後任候補の育成や、派遣等による一時的な人材確保の手段を事前に検討しておくことが重要です。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | サービス提供責任者は、定められた資格要件を満たしているか? |
| 法廷根拠 | 指定居宅サービス等基準 第5条第3項 |
| 確認書類 |
|
サービス提供責任者になれるのは、以下のいずれかの資格を持つ者に限られます。
| 資格 | 備考 |
|---|---|
| 介護福祉士 | 最も一般的な資格要件 |
| 実務者研修修了者 | 2013年度以降の修了者 |
| 旧介護職員基礎研修課程修了者 | 経過措置により引き続き有効 |
| 旧ヘルパー1級課程修了者 | 経過措置により引き続き有効 |
なお、初任者研修(旧ヘルパー2級)修了者は、2018年度の基準改正によりサービス提供責任者の資格要件から除外されました(3年間の経過措置あり、現在は完全に不可)。初任者研修修了者をサ責として配置している場合は、「サービス提供責任者体制の減算」として介護報酬が減算されますので注意が必要です。
【よくある指摘事例】
資格証の写しがファイルに保管されておらず、確認に時間がかかった
資格証の有効期限が切れていた(更新手続きの失念)
【常勤換算方法の計算例】
常勤換算方法とは、非常勤の職員を含めた事業所全体の人員を、常勤職員の人数に換算する方法です。
計算式:常勤換算人数 = 非常勤職員の勤務延時間数 ÷ 常勤職員が勤務すべき時間数
【計算例】
事業所の常勤の勤務時間数が週40時間の場合:
常勤職員A:週40時間勤務 → 1.0人
非常勤職員B:週30時間勤務 → 30÷40=0.75人
非常勤職員C:週20時間勤務 → 20÷40=0.5人
非常勤職員D:週15時間勤務 → 15÷40=0.375人
合計:1.0+0.75+0.5+0.375=2.625人(常勤換算)
常勤換算の計算を誤ると、人員基準を満たしていないと判断される可能性があります。特に、兼務している職員がいる場合は、訪問介護事業所に従事している時間のみを算入する必要がありますので注意しましょう。
【認知症介護基礎研修の受講義務化について】
2024年4月1日から、医療・福祉関係の資格を持たない訪問介護員等については、認知症介護基礎研修の受講が完全義務化されました(経過措置期間終了)。運営指導では、対象となる職員が研修を修了しているかが確認されます。研修はeラーニングでも受講可能で、所要時間は約150分です。まだ受講していない職員がいる場合は、早急に受講手続きを進めましょう。
なお、介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者(旧ヘルパー2級以上)は、認知症介護基礎研修の受講が免除されます。ただし、これらの資格を持つ職員についても、資格証明書のコピーが事業所に保管されているかが確認されますので、必ず整備しておきましょう。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 常勤換算方法で2.5人以上の訪問介護員等を確保しているか? (サービス提供責任者を含む) |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第5条第1項 |
| 確認書類 |
|
「常勤換算方法」とは、事業所の全従業者の勤務延時間数を、常勤従業者が勤務すべき時間数(通常は週40時間)で割ることで計算します。この計算で「2.5」を上回っている必要があります。
常勤の勤務すべき時間数が週40時間の事業所の場合:
・常勤ヘルパーA(週40時間勤務)= 1.0
・常勤ヘルパーB(週40時間勤務)= 1.0
・非常勤ヘルパーC(週20時間勤務)= 0.5
・非常勤ヘルパーD(週10時間勤務)= 0.25
合計 = 2.75(基準の2.5を満たしている)
訪問介護員等の資格要件として、介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者(旧ヘルパー2級含む)のいずれかが必要です。無資格者はサービスに従事できません。
【よくある指摘事例】
非常勤ヘルパーの退職が相次ぎ、常勤換算で2.5を下回っていた
勤務形態一覧表の記載と実際の勤務実績が一致していなかった
資格証の写しが一部の職員分しか保管されていなかった
【対策】
毎月の勤務形態一覧表を作成する際に、常勤換算数を必ず計算し、基準を下回っていないか確認する習慣をつけましょう。また、全職員の資格証の写しを一元管理し、新規採用時には必ずコピーを取得する運用フローを整備しておくことが大切です。ICTツールを活用して勤怠管理と常勤換算の自動計算を行うと、より確実です。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 管理者は、常勤で専ら管理の職務に従事しているか? (兼務の場合、管理業務に支障がないか?) |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第6条 |
| 確認書類 |
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管理者は、原則として常勤で専ら管理の職務に従事する必要があります。ただし、以下の場合は兼務が認められます。
【管理者の兼務が認められるケース】
① 同一事業所内のサービス提供責任者や訪問介護員との兼務
② 同一敷地内(または隣接する敷地内)にある他の事業所の管理者や職務との兼務
※いずれの場合も「管理業務に支障がない」ことが条件です。
なお、2024年4月から「労働条件明示のルール」が変更されており、雇用契約書(労働条件通知書)の記載事項が追加されています。管理者の雇用契約書が最新の様式に対応しているかも確認されるポイントです。
【よくある指摘事例】
管理者が他の事業所の管理者も兼務しており、実質的に管理業務に従事できていなかった
管理者の勤務実績(タイムカード等)が保管されておらず、常勤であることを証明できなかった
雇用契約書が古い様式のままで、2024年改正に対応していなかった
【対策】
管理者の勤務実績は、タイムカードや勤怠管理システムで確実に記録・保管しましょう。兼務の場合は、管理業務に充てている時間が十分であることを客観的に示せるよう、業務日誌等に管理業務の内容を記録しておくことが望ましいです。

2024年4月から、労働基準法施行規則の改正により、労働条件の明示事項が追加されました。運営指導では、最新の法令に基づいた労働条件通知書が交付されているかも確認される可能性があります。
【2024年4月から追加された明示事項】
就業場所・業務の変更の範囲:雇入れ直後の就業場所・業務だけでなく、将来の配置転換等による変更の範囲も明示が必要
更新上限の有無と内容:有期労働契約の場合、通算契約期間や更新回数の上限を明示
無期転換申込機会と無期転換後の労働条件:無期転換申込権が発生する契約更新時に明示が必要
訪問介護事業所では、パートタイムの訪問介護員を多く雇用しているケースが一般的です。有期労働契約を更新する際には、上記の新しい明示事項が漏れなく記載されているか確認しましょう。詳しくは、厚生労働省の「令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります」をご確認ください。
設備基準では、事業運営に必要な最低限の設備が整っているかが確認されます。特に個人情報を守るための「鍵付き書庫」と、プライバシーに配慮した「相談スペース」は必ずチェックされるポイントです。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 事業の運営を行うために必要な広さの事務室があるか? プライバシー保護に配慮した相談スペースが確保されているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第7条第1項・第2項 |
| 確認書類 |
|
事務室の広さに明確な規定はありませんが、机や椅子、パソコン、鍵付き書庫などを置いても業務に支障がない程度のスペースが必要です。相談スペースは、パーテーションで区切るなどして、他の職員や来客に会話の内容が聞こえないように配慮されている必要があります。
【対策】
事務室と相談スペースの区分は、パーテーション(高さ180cm以上が望ましい)やカーテンで仕切ることで対応できます。完全な個室である必要はありませんが、利用者や家族が安心して相談できる環境を整えることが重要です。また、運営指導の当日は、指導員が事業所内を目視で確認しますので、日頃から整理整頓を心がけ、書類が散乱していないようにしましょう。
なお、運営指導の際には事業所の平面図の提出を求められることがあります。平面図には、事務室、相談スペース、鍵付き書庫の位置を明記しておくと、指導員への説明がスムーズです。
【よくある指摘事例】
事務室と相談スペースが明確に区切られておらず、プライバシーが確保されていなかった
パーテーションの高さが不十分で、会話が筒抜けだった
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | サービス提供に必要な設備及び備品等を確保しているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第7条第3項 |
| 確認書類 |
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具体的には、以下の備品が揃っているかを確認します。
【必須備品リスト】
✔ 机、椅子
✔ パソコン、プリンター、電話、FAX
✔ 鍵付き書庫、キャビネット
✔ 感染症予防のための手指消毒液、石鹸、ペーパータオル等
【よくある指摘事例】
個人情報を含む書類が、鍵のかからない棚に保管されていた
手指消毒液が設置されていなかった
【設備基準のポイント:他事業所との共用の場合】
同一建物内で複数の事業所を運営している場合や、他の事業と事務室を共用している場合は、訪問介護事業所としての専用区画が明確に区分されているかが確認されます。具体的には、事業所の平面図上で訪問介護事業所の区画が明示されていること、利用者の個人情報が他の事業の職員からアクセスできない状態で管理されていることが求められます。
また、訪問介護は利用者の居宅でサービスを提供するため、事業所に大規模な設備は不要ですが、訪問介護員が訪問先で使用する感染症対策用品(使い捨て手袋、エプロン、マスク等)の備蓄も確認されることがあります。特にコロナ禍以降、感染症対策用品の備蓄状況は運営指導でも注目されるポイントとなっています。
【対策】
個人情報保護の観点から、鍵付き書庫の設置は必須です。指導員は必ず施錠されているかを確認します。また、感染症対策として、手指消毒液や石鹸などの衛生用品も常備しておきましょう。

サービスの根幹である「個別サービスの質」に関する領域です。利用者との契約から計画作成、サービス提供、記録に至るまで、一連のプロセスが適切に行われているかが問われます。特に「説明と同意」の記録と、「訪問介護計画」と「サービス提供記録」の整合性は、指導員が最も重視するポイントです。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | あらかじめ、利用申込者に対し、運営規程の概要、訪問介護員等の勤務体制その他利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、同意を得ているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第8条 |
| 確認書類 |
|
契約時に、重要事項説明書を用いてサービス内容や料金、苦情窓口などを丁寧に説明し、利用者またはその家族から署名・捺印を得る必要があります。この「説明と同意」のプロセスは、利用者との信頼関係の第一歩であり、万が一のトラブルを防ぐためにも極めて重要です。
【よくある指摘事例】
重要事項説明書に利用者(または家族)の署名・捺印がなかった(口頭での説明のみで済ませていた)
契約日がサービス開始日よりも後になっていた(いわゆる「後追い契約」)
重要事項説明書の内容が古く、最新の料金や運営規程が反映されていなかった
【重要事項説明書に記載すべき主な項目】
事業所の概要:事業所名、所在地、管理者名、電話番号、指定年月日等
運営方針:事業所の基本理念と運営方針
サービスの内容:提供するサービスの種類と具体的な内容
職員体制:管理者、サービス提供責任者、訪問介護員の配置状況
営業日・営業時間:サービス提供可能な曜日と時間帯
利用料金:介護保険適用時の自己負担額、保険外サービスの料金
苦情窓口:事業所の苦情受付担当者、国保連の連絡先
事故発生時の対応:事故発生時の連絡体制と対応方針
個人情報の取り扱い:個人情報の利用目的と管理方法
重要事項説明書は、利用者がサービスを選択する際の判断材料となる重要な書類です。運営指導では、記載内容が最新の運営規程と一致しているか、特に料金表が最新の介護報酬改定を反映しているかが確認されます。介護報酬改定のたびに料金が変更されるため、改定時には速やかに重要事項説明書を更新し、既存の利用者にも変更内容を説明・同意を得る必要があります。
【対策】
契約関連の書類は、必ずサービス開始前に取り交わしましょう。また、介護報酬改定や運営規程の変更があった場合は、速やかに重要事項説明書を改訂し、利用者へ再説明・再同意を得る必要があります。この際、変更点が一目でわかるように新旧対照表などを用意すると親切です。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 被保険者証により、被保険者資格、要介護認定の有無及び要介護認定の有効期間を確かめているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第10条 |
| 確認書類 |
|
サービス提供の前提として、利用者が介護保険の対象者であるかを確認する義務があります。被保険者証のコピーを保管し、特に要介護認定の有効期間は必ず確認しましょう。有効期間が切れていると、その間のサービスは保険給付の対象外となり、全額自己負担または事業所の持ち出しとなってしまいます。
【よくある指摘事例】
認定有効期間が切れたままサービスを提供していた
被保険者証のコピーが保管されていなかった
更新後の被保険者証の確認を失念していた
【被保険者証の確認で特に注意すべきポイント】
□ 被保険者証の写しが利用者ごとにファイリングされているか
□ 要介護認定の有効期間が切れていないか(期限管理表で一覧管理が望ましい)
□ 認定区分変更があった場合、新しい被保険者証の写しに差し替えているか
□ 負担割合証(1割・2割・3割)の写しも保管しているか
□ 介護保険負担限度額認定証の該当者について、認定証の写しを保管しているか
【対策】
利用者ごとに認定有効期間を一覧で管理し、期限が近づいたらケアマネジャーと連携して更新手続きの状況を確認する体制を整えましょう。更新された被保険者証は、速やかに提示してもらい、コピーを保管することが重要です。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | サービス提供に当たっては、利用者の心身の状況、その置かれている環境、他の保健医療サービス又は福祉サービスの利用状況等の把握に努めているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第16条 |
| 確認書類 |
|
適切な訪問介護計画を作成するためには、利用者の状態を多角的に把握するアセスメントが不可欠です。ケアマネジャーから提供されるケアプランの情報だけでなく、事業所独自の視点で利用者の生活課題やニーズを把握し、記録することが求められます。
【よくある指摘事例】
アセスメントシートの記載内容が乏しく、形式的なものにとどまっていた
ケアプランの情報が転記されているだけで、事業所独自の視点でのアセスメントが行われていなかった
【対策】
アセスメントは、単なる情報収集ではなく、利用者とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築く重要な機会です。本人の言葉や表情、生活環境などを観察し、ケアプランだけでは見えてこない潜在的なニーズやリスクを捉える視点を持ちましょう。把握した内容は、具体的な言葉でアセスメントシートに記録することが重要です。

領域3の後半では、日々のサービス提供記録の適切な管理、身体的拘束の禁止に関する取り組み、そして訪問介護計画の作成プロセスについて確認されます。これらは運営指導で最も指摘が多い領域の一つであり、特に重点的な準備が必要です。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目① | 指定訪問介護を提供した際には、提供日、サービスの内容、利用者に代わって支払を受ける居宅介護サービス費の額その他必要な事項を、利用者の居宅サービス計画を記載した書面又はサービス利用票等に記載しているか? |
| 確認項目② | 指定訪問介護を提供した際には、提供日及び提供した具体的なサービスの内容等を記録するとともに、利用者からの申出があった場合には、文書の交付その他適切な方法により、その情報を利用者に対して提供しているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第19条 |
| 確認書類 |
|
サービス提供記録は、訪問介護事業所にとって最も基本的かつ重要な書類です。運営指導では、記録の内容が適切であるかだけでなく、記録と居宅サービス計画(ケアプラン)の整合性も確認されます。
【サービス提供記録に記載すべき項目】
| 記載項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 提供日時 | 2025年4月1日 10:00〜11:00 |
| サービス内容 | 身体介護(入浴介助)、生活援助(掃除・調理)等の具体的な内容 |
| 利用者の状態 | バイタルサイン、体調、気分、皮膚の状態等 |
| 特記事項 | 利用者からの訴え、変化があった点、家族への連絡事項等 |
| 提供者名 | サービスを提供した訪問介護員の氏名 |
| 利用者確認 | 利用者またはその家族の確認印・署名 |
【よくある指摘事例】
サービス提供記録の記載内容が「入浴介助」「掃除」など簡略すぎて、具体的な介護内容が不明
ケアプランに位置づけられていないサービスが提供記録に記載されている(または逆に、ケアプランにあるサービスが記録にない)
提供時間と記録上の時間に大幅なズレがある
利用者の確認印・署名が漏れている
記録の修正に修正液が使用されている(二重線+訂正印が原則)
【対策】
サービス提供記録は、「いつ・誰が・どこで・何を・どのように・どうなったか」を第三者が読んでも理解できる具体性で記載することが重要です。例えば、「入浴介助」ではなく「浴槽への移乗を見守り、洗髪・洗身を一部介助。背部に発赤あり、サ責に報告済み」のように記載しましょう。
また、ICTツールを活用してサービス提供記録を電子化することで、記載漏れの防止や記録の質の向上が期待できます。タブレットやスマートフォンから入力できるシステムを導入すれば、訪問先でリアルタイムに記録を作成でき、「後からまとめて書く」ことによる記憶違いや記載漏れを防ぐことができます。
記録の電子化や業務効率化に興味がある方は、介護ソフトの比較・検討ができる「コミミのチーム」もぜひご活用ください。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 指定訪問介護の提供に当たっては、当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行っていないか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第11条の2 |
| 確認書類 |
|
訪問介護における身体的拘束とは、利用者の行動を制限する全ての行為を指します。施設サービスと比較すると頻度は低いものの、在宅でも身体的拘束に該当する行為が行われる可能性があります。
【訪問介護で注意すべき身体的拘束に該当し得る行為の例】
利用者を車いすやベッドにベルト等で固定する
利用者が自力で開けられない部屋に閉じ込める
利用者の意思に反して、つなぎ服(介護衣)を着用させる
行動を落ち着かせるために、医師の指示なく向精神薬を過剰に服用させる
【やむを得ず身体的拘束を行う場合の3要件】
切迫性:利用者本人または他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
非代替性:身体的拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
一時性:身体的拘束その他の行動制限が一時的なものであること
やむを得ず身体的拘束を行った場合は、その態様(どのような拘束を行ったか)、時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければなりません。この記録がない場合、運営指導で重大な指摘を受けることになります。

| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目① | サービス提供責任者は、利用者の日常生活全般の状況及び希望を踏まえて、居宅サービス計画に沿った訪問介護計画を作成しているか? |
| 確認項目② | 訪問介護計画の作成に当たっては、その内容について利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得ているか? |
| 確認項目③ | 訪問介護計画を作成した際には、当該訪問介護計画を利用者に交付しているか? |
| 確認項目④ | 訪問介護計画の作成後、実施状況の把握(モニタリング)を行い、必要に応じて訪問介護計画の変更を行っているか? |
| 確認項目⑤ | 居宅サービス計画に訪問介護の目標が記載されている場合は、当該目標に沿った訪問介護計画を作成しているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第24条 |
| 確認書類 |
|
訪問介護計画は、居宅サービス計画(ケアプラン)に基づいて、サービス提供責任者が作成する計画書です。運営指導では、この計画書の内容と実際のサービス提供が一致しているかが重点的にチェックされます。
【訪問介護計画書に記載すべき主な項目】
利用者の基本情報:氏名、要介護度、認定有効期間等
援助の目標:長期目標と短期目標(居宅サービス計画の目標と整合性を持たせる)
サービスの具体的内容:身体介護・生活援助の具体的な内容と手順
サービスの提供日時・所要時間:曜日、時間帯、1回あたりの所要時間
留意事項:利用者の状態に応じた注意点、禁忌事項等
緊急時の対応:緊急連絡先、かかりつけ医の情報等
【よくある指摘事例】
訪問介護計画が作成されていない、または一部の利用者について作成が漏れている
居宅サービス計画(ケアプラン)の内容と訪問介護計画の内容が整合していない
訪問介護計画の目標が抽象的すぎる(例:「安心して生活できるようにする」→ 具体的な達成基準がない)
利用者の同意を得た日付が、訪問介護計画の作成日より前になっている(いわゆる「後追い同意」)
モニタリングが定期的に実施されていない、または記録がない
利用者の状態が変化しているにもかかわらず、訪問介護計画が更新されていない
【対策】
訪問介護計画は、以下のサイクルで管理しましょう。
STEP 1アセスメント
利用者の心身の状況、生活環境、希望等を把握します。居宅サービス計画の内容も確認します。
STEP 2計画の作成
アセスメントの結果に基づき、具体的な目標とサービス内容を記載した訪問介護計画を作成します。
STEP 3説明・同意・交付
計画の内容を利用者(またはその家族)に説明し、同意を得て、計画書を交付します。同意日と交付日を必ず記録します。
STEP 4サービスの提供
訪問介護計画に基づいてサービスを提供し、提供記録を作成します。
STEP 5モニタリング・見直し
定期的にサービスの実施状況を評価し、必要に応じて計画を見直します。少なくとも月1回はモニタリングを実施し、記録を残しましょう。
訪問介護計画の作成・管理は、サービス提供責任者の最も重要な業務の一つです。運営指導では、計画の「質」だけでなく、「作成→説明→同意→交付→実施→モニタリング→見直し」という一連のプロセスが時系列で矛盾なく記録されているかが確認されます。
【モニタリングの具体的な実施方法】
モニタリングとは、訪問介護計画に基づくサービスが適切に提供されているかを定期的に確認し、評価する作業です。サービス提供責任者が中心となって実施し、以下の内容を確認・記録します。
目標の達成状況:訪問介護計画に設定した短期目標・長期目標の達成度合い
サービス内容の適切性:現在のサービス内容が利用者のニーズに合っているか
利用者の心身の状態変化:ADL・IADLの変化、新たな疾病や症状の出現
利用者・家族の満足度:サービスに対する満足度や新たな要望
他サービスとの連携状況:ケアマネジャーや他の事業所との情報共有の状況
モニタリングの頻度は法令上の明確な規定はありませんが、少なくとも月1回以上の実施が望ましいとされています。モニタリングの結果、利用者の状態やニーズに変化があった場合は、速やかに訪問介護計画を見直し、利用者への説明・同意・交付の手続きを行う必要があります。
訪問介護計画書の作成方法やテンプレートについて、さらに詳しく知りたい方は「訪問介護の運営指導(実地指導)完全ガイド」もあわせてご覧ください。

領域4では、安定したサービス提供を支える事業所の「体制」が確認されます。特に「勤務体制の確保」と「管理者の責務」は、人員基準とも密接に関わる重要な項目です。また、利用者から適切に利用料を受領しているか、万が一の緊急時に備えられているかもチェックされます。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 利用者に対し適切なサービスを提供できるよう、訪問介護員等の勤務体制を定めているか? 訪問介護員等の資質の向上のために、研修の機会を確保しているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第30条 |
| 確認書類 |
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事業所は、月ごとに訪問介護員等の勤務体制を定め、日々の業務が円滑に行えるようにしなければなりません。また、職員の資質向上のため、計画的に研修を実施することが義務付けられています。
【よくある指摘事例】
勤務形態一覧表が作成されていなかった、または予定のみで実績が記載されていなかった
研修計画が立てられていたが、実際には実施されていなかった(計画倒れ)
研修の参加記録がなく、誰がどの研修を受けたか不明確だった
【対策】
勤務形態一覧表は、必ず「実績」を記録し、保管しましょう。研修については、年度初めに具体的な研修計画を立て、計画通りに実施することが重要です。研修後は、参加者、内容、日時などを記録した「研修実施記録」を作成し、参加できなかった職員には別途伝達研修を行うなどのフォローも必要です。
【勤務形態一覧表の記載方法と確認ポイント】
勤務形態一覧表は、運営指導で必ず提出を求められる書類の一つです。この一覧表により、事業所が人員基準を満たしているかどうかが判断されます。以下の項目を正確に記載する必要があります。
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 職員氏名 | 全職員の氏名を記載 |
| 職種 | 管理者、サービス提供責任者、訪問介護員等の区分 |
| 勤務形態 | 常勤・非常勤の区分 |
| 専従・兼務の別 | 当該事業所に専従か、他の事業所と兼務かの区分 |
| 保有資格 | 介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者等 |
| 1週間の勤務時間数 | 当該事業所における1週間あたりの勤務時間数 |
| 兼務先の事業所名 | 兼務の場合、兼務先の事業所名と職種を記載 |
ここで特に注意すべきは、「常勤」と「非常勤」、「専従」と「兼務」の定義を正しく理解することです。
常勤とは、事業所が定める常勤の従業者が勤務すべき時間数(1週間に勤務すべき時間数が32時間を下回る場合は32時間)を勤務する者を指します。非常勤は、常勤の勤務時間数に満たない者です。
専従とは、原則として勤務時間を通じてもっぱら当該事業所の業務に従事することを指します。兼務は、同一法人内の他の事業所の業務にも従事する場合を指します。
勤務形態一覧表は、毎月作成し、少なくとも直近1年分は保管しておきましょう。運営指導では、通常3か月分程度の提出を求められますが、場合によっては1年分の提出を求められることもあります。
勤務形態一覧表は、事業所の人員体制を一覧で示す書類であり、運営指導では必ず提出を求められます。この書類をもとに、人員基準を満たしているか、常勤換算方法が正しいかが確認されます。
【勤務形態一覧表の作成で注意すべきポイント】
常勤・非常勤の区分を正確に記載する(常勤=事業所の定める常勤の勤務時間数を満たす者)
兼務の場合は、各事業所での勤務時間を明確に区分して記載する
常勤換算の計算方法を正しく理解し、小数点以下の端数処理も正確に行う
直近1か月分だけでなく、過去の勤務形態一覧表も保管しておく(指導員が過去の人員体制を確認することがある)
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 管理者は、サービス提供責任者や訪問介護員等の管理、利用の申込みに係る調整、業務の実施状況の一元的な管理、その他必要な管理を行っているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第26条 |
| 確認書類 |
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管理者は、事業所の「司令塔」として、職員の労務管理からサービスの質の管理まで、事業所全体を統括する役割を担います。運営指導では、管理者がその責務を適切に果たしているか、具体的な記録を通して確認されます。
【よくある指摘事例】
管理者が現場のサービス提供に追われ、本来の管理業務(職員の指導、業務改善など)を行う時間が確保できていなかった
職員の状況把握や指導を行った記録が何も残っていなかった
【対策】
管理者は、自身の業務内容を「業務日誌」として記録し、管理業務を適切に行っていることを客観的に示せるようにしておきましょう。また、定期的に職員と面談の機会を設け、その内容を記録しておくことも、適切な労務管理の証拠となります。
【管理者の業務日誌について】
運営指導では、管理者が実際に管理業務を行っているかを確認するために、管理者の業務日誌の提出を求められることがあります。業務日誌には、管理者が行った業務内容(職員への指導・助言、苦情対応、関係機関との連絡調整、書類の確認・決裁等)を日付ごとに記録しておくと、管理者としての職務遂行を客観的に示すことができます。
特に、管理者がサービス提供責任者を兼務している場合は、「管理業務」と「サービス提供責任者業務」のそれぞれにどの程度の時間を充てているかが確認されます。業務日誌や勤務表において、両方の業務に十分な時間が確保されていることを示せるようにしておきましょう。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 法定代理受領サービスを提供した際には、利用者から利用料の一部(1割~3割)の支払いを受けているか? 法定代理受領サービスに該当しないサービスを提供した場合は、その費用全額の支払いを受けているか? 事前に文書で説明し、同意を得ているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第27条 |
| 確認書類 |
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介護保険サービス費用の徴収に関する項目です。利用者負担割合に応じた利用料を適切に受領しているか、また、保険外サービス(自費サービス)を提供した場合は、その内容と料金について事前に説明・同意を得ているかが確認されます。
【よくある指摘事例】
領収書にサービス提供日や内訳の記載がなく、不備を指摘された
保険外サービスについて、口頭での説明のみで文書による同意を得ていなかった
【対策】
利用料の受領に関しては、以下の3点を徹底しましょう。
領収書の適切な発行:サービス提供日、サービス内容、金額の内訳(保険給付分と利用者負担分)を明記した領収書を発行する
請求明細書の交付:利用者が請求内容を確認できるよう、サービスの種類、回数、単位数、金額などを記載した請求明細書を交付する
保険外サービスの明確な区分:保険外サービス(自費サービス)を提供する場合は、保険給付のサービスと明確に区分し、料金や内容について事前に文書で説明し、同意を得る。重要事項説明書にも保険外サービスの料金を明記しておく
特に、保険外サービスについては、利用者が「どこまでが保険サービスで、どこからが自費なのか」を明確に理解できるようにすることが重要です。曖昧な説明は、後々のトラブルや運営指導での指摘につながります。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | サービス提供中に利用者の病状の急変等が生じた場合、速やかに主治医への連絡を行う等の必要な措置を講じているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第28条 |
| 確認書類 |
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訪問中に利用者の容体が急変した場合に備え、迅速かつ適切な対応ができる体制が整っているかが確認されます。
【よくある指摘事例】
緊急時対応マニュアルが作成されていなかった
利用者ごとの緊急連絡先(家族、主治医、ケアマネジャー等)がすぐに分かるように整備されていなかった
【緊急時対応マニュアルに記載すべき内容】
緊急時の定義:どのような状況を「緊急時」とするかの基準(例:意識レベルの低下、転倒による骨折の疑い、大量出血等)
初期対応の手順:利用者の安全確保、応急処置、119番通報の判断基準
連絡体制:管理者・サービス提供責任者への報告、利用者の家族への連絡、主治医・ケアマネジャーへの連絡の順序
事故報告の手順:市町村への報告が必要な場合の手順と報告書の様式
事後対応:事故報告書の作成、原因分析、再発防止策の検討
緊急時対応マニュアルは、作成するだけでなく、全職員が内容を理解し、いざという時に適切に行動できるよう、定期的な研修や訓練を実施することが重要です。特に訪問介護員は利用者の居宅で一人でサービスを提供するため、その場で迅速な判断が求められます。
【対策】
緊急時の対応手順を明記したマニュアルを作成し、全職員に周知徹底しましょう。また、利用者ごとの緊急連絡先を一覧にし、事務所の誰もがすぐに確認できる場所に掲示しておくことが重要です。

領域5は、事業所運営のルールブックである「運営規程」や、近年特に重要視されている「BCP(事業継続計画)」「虐待防止」「ハラスメント対策」など、事業所の組織的な取り組みに関する項目が中心です。2024年度から完全義務化された項目が多く、未対応の場合は指導の対象となるため、特に注意が必要です。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 事業所の運営に関する重要事項について、運営規程を定めているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第29条 |
| 確認書類 |
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運営規程には、以下の項目を必ず盛り込む必要があります。
【運営規程の必須記載事項】
1. 事業の目的及び運営の方針
2. 従業者の職種、員数及び職務の内容
3. 営業日及び営業時間
4. 訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額
5. 通常の事業の実施地域
6. 緊急時等における対応方法
7. 虐待の防止のための措置に関する事項
8. その他運営に関する重要事項
【よくある指摘事例】
運営規程に必須記載事項の一部が漏れていた(特に「虐待の防止」に関する項目)
事業の実態(営業日、サービス内容等)と運営規程の内容が一致していなかった
【対策】
厚生労働省や自治体が提供する「運営規程のひな形」を参考に、必須項目が全て網羅されているか確認しましょう。また、令和7年度からは運営規程のWebサイト等での公表が義務化されるため、今のうちから準備を進めておくと安心です。
【運営規程の変更手続き】
運営規程の内容に変更が生じた場合は、変更届を指定権者(都道府県または市町村)に提出する必要があります。変更届の提出期限は、変更があった日から10日以内と定められています。よくある変更事項としては、営業日・営業時間の変更、利用料金の変更(介護報酬改定時)、管理者やサービス提供責任者の変更などがあります。
運営指導では、運営規程の内容と実際の運営状況が一致しているかが確認されます。例えば、運営規程に「営業時間:9時〜18時」と記載されているのに、実際には17時で業務を終了している場合は指摘の対象となります。運営規程は「事業所のルールブック」ですので、実態に即した内容を維持することが重要です。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 感染症や非常災害の発生時においても、利用者に対するサービス提供を継続的に実施するための業務継続計画(BCP)を策定し、研修や訓練を実施しているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第30条の2 |
| 確認書類 |
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BCPの策定は、2024年4月1日から完全義務化されました。感染症(新型コロナウイルス等)と自然災害(地震、水害等)のそれぞれについて、具体的な対応手順を定めた計画書を作成する必要があります。
【よくある指摘事例】
BCPが策定されていなかった
計画書は作成したが、職員への周知や訓練が実施されていなかった
【BCPに盛り込むべき主な内容】
基本方針:事業継続に関する基本的な考え方
想定するリスク:自然災害(地震、水害等)、感染症(新型インフルエンザ、新型コロナウイルス等)
優先業務の選定:災害時に優先的に継続すべきサービス(例:独居の要介護度の高い利用者へのサービス)
職員の安否確認方法:連絡網、安否確認システムの活用
代替手段の確保:通常の訪問が困難な場合の代替サービスの提供方法
研修・訓練の計画:年1回以上のBCPに基づく訓練の実施計画
厚生労働省は、介護事業所向けのBCPひな形を公表しています。「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」のページから、自然災害編と感染症編のひな形をダウンロードできますので、まだ作成していない事業所は早急に対応しましょう。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 適切なサービスの提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより訪問介護員等の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第30条第3項 |
| 確認書類 |
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訪問介護は利用者の自宅という密室環境でサービスを提供するため、訪問介護員がハラスメント被害を受けるリスクが他のサービスに比べて高いと言われています。令和3年度の介護報酬改定により、全ての介護事業所にハラスメント対策が義務化されました。
【事業所が講じるべき4つの必要措置】
方針の明確化と周知・啓発:ハラスメントを許さないという事業所の方針を明確にし、就業規則等に規定するとともに、全職員に周知する
相談窓口の設置:ハラスメントに関する相談窓口を設置し、担当者を定める。相談者のプライバシーが保護されることを明確にする
事後の迅速かつ適切な対応:ハラスメントが発生した場合の対応手順を定め、事実確認、被害者への配慮、再発防止策の実施を迅速に行う
利用者等への周知:利用者やその家族に対しても、ハラスメント防止に関する事業所の方針を伝え、協力を求める(重要事項説明書への記載等)
特に訪問介護では、利用者やその家族からのカスタマーハラスメント(カスハラ)が問題になるケースがあります。暴言、暴力、セクシュアルハラスメントなどの被害を受けた場合に、職員が安心して相談できる体制を整備することが重要です。
【よくある指摘事例】
ハラスメント防止に関する方針が策定されていなかった
相談窓口は設置されていたが、職員に周知されていなかった
利用者からのハラスメント事案が発生していたが、組織的な対応が行われていなかった
【対策】
厚生労働省が公表している「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を参考に、事業所の実情に合った方針・指針を策定しましょう。また、訪問介護員が一人で利用者宅を訪問する特性を踏まえ、「2人訪問の検討」「訪問時の連絡体制の整備」「危険を感じた場合の退避ルール」なども具体的に定めておくことが望ましいです。
運営指導では、研修の実施状況も重要な確認項目です。研修計画が立てられているだけでなく、計画通りに実施され、その記録が適切に保管されているかが問われます。
【訪問介護事業所で実施すべき主な研修テーマ】
| 研修テーマ | 実施頻度の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 認知症介護に関する研修 | 年1回以上 | 令和6年度から義務化 |
| 虐待防止に関する研修 | 年1回以上 | 令和6年度から義務化 |
| 感染症対策に関する研修 | 年1回以上 | 令和3年度から義務化 |
| BCP(業務継続計画)に関する研修 | 年1回以上 | 令和6年度から義務化 |
| ハラスメント防止に関する研修 | 年1回以上 | 令和3年度から義務化 |
| 倫理・法令遵守に関する研修 | 年1回以上 | 推奨 |
| 事故防止・緊急時対応に関する研修 | 年1回以上 | 推奨 |
| 個人情報保護に関する研修 | 年1回以上 | 推奨 |
研修記録には、「研修日時」「研修テーマ」「講師名」「参加者名簿(署名)」「研修内容の概要」を必ず記載しましょう。参加できなかった職員に対しては、後日の伝達研修を実施し、その記録も残すことが重要です。

| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 訪問介護員等の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行っているか? 感染症の予防及びまん延の防止のための委員会開催、指針の整備、研修の実施等を行っているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第31条 |
| 確認書類 |
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感染症対策に関する委員会の開催、指針の整備、研修の実施も2024年4月1日から完全義務化されています。
【よくある指摘事例】
感染症対策委員会が定期的に開催されていなかった(議事録がない)
感染症対策マニュアルが作成されていなかった
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 虐待の発生又はその再発を防止するため、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者の設置等の措置を講じているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第37条の2 |
| 確認書類 |
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虐待防止措置も2024年4月1日から完全義務化された項目です。虐待防止委員会の定期的な開催、指針の整備、研修の実施、担当者の設置が求められます。
【よくある指摘事例】
虐待防止委員会が開催されていなかった、または議事録がなかった
虐待防止のための指針が整備されていなかった
担当者が任命されていなかった
【対策】
BCP、感染症対策、虐待防止の3つの義務化項目は、「委員会開催」「指針整備」「研修実施」がセットになっています。これらは一体的に取り組むと効率的です。例えば、「リスクマネジメント委員会」として3つのテーマを同時に扱う、研修もまとめて実施するなどの工夫が考えられます。厚生労働省が提供する各種マニュアルやひな形を積極的に活用しましょう。

令和3年度の介護報酬改定以降、感染症対策は運営指導における重要な確認項目となっています。訪問介護事業所においても、以下の3つの取り組みが義務化されています。
①感染症対策委員会の開催:おおむね6か月に1回以上開催し、その結果を従業者に周知すること
②感染症対策の指針の整備:事業所としての感染症対策マニュアルを作成し、定期的に見直すこと
③感染症対策の研修・訓練の実施:年1回以上の研修と、年1回以上の訓練(シミュレーション)を実施すること
運営指導では、これらの取り組みが「形式的に行われているだけでなく、実効性があるか」が確認されます。例えば、感染症対策委員会の議事録に具体的な議論内容が記録されているか、研修の参加者名簿と研修内容が保管されているかなどが確認されます。
特に訪問介護は利用者の居宅でサービスを提供するため、訪問時の手指消毒、マスク着用、使い捨て手袋の使用など、訪問先での感染予防策が適切に実施されているかも確認のポイントとなります。
| 確認書類 | 確認のポイント |
|---|---|
| 感染症対策委員会の議事録 | 6か月に1回以上開催されているか、具体的な議論内容が記録されているか |
| 感染症対策マニュアル | 訪問介護の特性を踏まえた内容になっているか、定期的に見直されているか |
| 研修の実施記録 | 年1回以上実施されているか、参加者名簿と研修内容が保管されているか |
| 訓練の実施記録 | 年1回以上のシミュレーション訓練が実施されているか |
最後の領域6は、個人情報の取り扱いや広告、利用者からの苦情や事故への対応など、事業所の信頼性に関わる重要な項目が集まっています。特に「秘密保持」と「苦情処理」「事故対応」は、利用者とのトラブルに直結しやすいため、確実な体制構築が求められます。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 従業者は、正当な理由なく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしていないか? 従業者であった者が、正当な理由なく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第34条 |
| 確認書類 |
|
職員には守秘義務があり、退職後もその義務は継続します。事業所は、職員に対して秘密保持に関する誓約書を取り交わすなど、具体的な措置を講じる必要があります。
【よくある指摘事例】
入職時に職員から秘密保持に関する誓約書を取得していなかった
利用者から個人情報の使用に関する同意書を取得していなかった
【個人情報保護に関する具体的な対策チェックリスト】
□ 個人情報保護に関する方針(プライバシーポリシー)を策定し、事業所内に掲示しているか
□ 利用者から個人情報の使用に関する同意書を取得しているか
□ 個人情報を含む書類は鍵付き書庫に保管し、施錠管理しているか
□ パソコンにはパスワードを設定し、離席時にはスクリーンロックをかけているか
□ USBメモリ等の外部記憶媒体の使用ルールを定めているか
□ 退職した職員に対しても秘密保持義務があることを雇用契約書等で明示しているか
□ 個人情報の漏洩が発生した場合の対応手順を定めているか
□ 個人情報保護に関する研修を年1回以上実施しているか
訪問介護事業所では、職員が利用者の居宅を訪問するため、利用者の生活環境や家族関係など、非常にセンシティブな個人情報に触れる機会が多くあります。職員一人ひとりが個人情報保護の重要性を理解し、日常業務の中で適切に取り扱うことが求められます。
【個人情報の取り扱いに関する具体的な対策】
個人情報の保護は、運営指導で必ず確認される重要な項目です。訪問介護事業所が取り扱う個人情報には、利用者の氏名、住所、要介護度、病歴、家族構成、経済状況など、極めてセンシティブな情報が含まれます。
【事業所が整備すべき個人情報保護の体制】
| 措置 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 利用目的の特定と公表 | 個人情報の利用目的を特定し、事業所内に掲示するとともに、重要事項説明書にも記載する |
| 同意書の取得 | サービス担当者会議等で個人情報を使用する場合は、あらかじめ利用者及びその家族から文書による同意を得る |
| 秘密保持誓約書 | 全職員(パート・派遣を含む)から秘密保持誓約書を取得する。退職後も秘密保持義務が継続する旨を明記する |
| 物理的安全管理措置 | 個人情報を含む書類は施錠できるキャビネットに保管する。パソコンにはパスワードを設定する |
| 技術的安全管理措置 | USBメモリの使用制限、メールの誤送信防止策、ウイルス対策ソフトの導入等 |
特に訪問介護では、訪問介護員が利用者宅で知り得た情報を、他の利用者やその家族、近隣住民等に漏らさないことが極めて重要です。「○○さんの家では…」といった何気ない会話が、重大な個人情報漏洩につながる可能性があります。
【よくある指摘事例】
個人情報の同意書が一部の利用者について取得されていなかった
退職した職員の秘密保持誓約書が保管されていなかった
個人情報を含む書類が施錠されていないキャビネットに保管されていた
利用者の個人情報が記載された書類を、訪問介護員が自家用車内に放置していた
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 事業所について広告をする場合、その内容が虚偽又は誇大なものとなっていないか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第32条 |
| 確認書類 |
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パンフレットやウェブサイトに掲載する内容が、事実と異なっていないか、利用者を誤解させるような表現になっていないかが確認されます。近年では、ウェブサイトやSNSでの情報発信も広告と見なされ、チェック対象となります。
【よくある指摘事例】
「24時間365日対応可能」と広告に記載していたが、実際には夜間対応できる職員がいなかった
経験豊富なスタッフが多数在籍していると記載していたが、実際には未経験者がほとんどだった
サービス提供にあたり、担当のケアマネジャーと密接に連携しているかが確認されます。特に、訪問介護計画の作成・変更時や、モニタリング結果の報告などが重要です。
人員、設備、会計に関する諸記録を整備し、その完結の日から最低2年間(自治体によっては5年間)保存する義務があります。どの記録が何年保存か、自治体の条例を必ず確認しましょう。
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、必要な措置を講じているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第35条 |
| 確認書類 |
|
苦情受付窓口の設置、対応体制の整備、対応記録の作成・保存が求められます。
【よくある指摘事例】
苦情受付簿や対応記録が作成されていなかった
苦情対応の進捗や結果が、苦情を申し出た本人にフィードバックされていなかった
| チェック項目の詳細 | |
|---|---|
| 確認項目 | 利用者に対するサービスの提供により事故が発生した場合の対応方法が定められているか? 市町村、利用者の家族、利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じているか? 事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しているか? |
| 根拠法令 | 指定居宅サービス等基準 第37条 |
| 確認書類 |
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事故発生時の報告体制、対応手順をマニュアルとして整備し、実際に事故が起きた際には、速やかな報告と適切な対応、そして詳細な記録が求められます。
【よくある指摘事例】
軽微な事故(擦り傷など)について、報告・記録がされていなかった
事故報告書の原因分析や再発防止策が具体的でなかった

【苦情処理の具体的なフロー】
苦情処理は、利用者の権利を守り、サービスの質を向上させるための重要な仕組みです。運営指導では、苦情を受け付けてから解決に至るまでの一連のプロセスが適切に機能しているかが確認されます。
STEP 1苦情の受付
利用者やその家族からの苦情を受け付けます。苦情の内容、申出人、受付日時、受付者を記録します。電話、面談、書面など、どのような方法でも受け付けられる体制を整えましょう。
STEP 2事実確認
苦情の内容に基づき、関係する職員や利用者への聞き取り調査を行い、事実関係を確認します。客観的な記録(サービス提供記録等)も確認します。
STEP 3原因分析と改善策の検討
事実確認の結果に基づき、苦情の原因を分析し、具体的な改善策を検討します。必要に応じて、サービス提供責任者や管理者を交えたカンファレンスを開催します。
STEP 4申出人への回答
調査結果と改善策を申出人に説明します。対面での説明が望ましいですが、状況に応じて書面での回答も検討します。
STEP 5改善策の実施と記録
検討した改善策を実施し、その経過と結果を記録します。改善策が効果を上げているかどうかのフォローアップも行います。
苦情処理の記録は、苦情の内容、対応経過、結果を時系列で整理し、保管しておきましょう。また、苦情の傾向を分析し、再発防止に活かすことも重要です。
【事故報告書の記載項目と作成のポイント】
事故が発生した場合は、速やかに事故報告書を作成し、市町村や利用者の家族等に報告しなければなりません。事故報告書には、以下の項目を漏れなく記載しましょう。
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 事故発生日時 | 年月日、時刻を正確に記載 |
| 事故発生場所 | 利用者宅の具体的な場所(居室、浴室、玄関等) |
| 利用者の状況 | 事故発生時の利用者の状態、受傷の程度 |
| 事故の経緯 | 事故に至った経緯を時系列で具体的に記載 |
| 事故発生後の対応 | 応急処置、医療機関への連絡、家族への連絡等の対応内容 |
| 原因分析 | 事故の原因を多角的に分析(環境要因、身体要因、介護方法等) |
| 再発防止策 | 具体的な再発防止策と実施スケジュール |
| 市町村への報告 | 報告日、報告先、報告方法 |
事故報告は、事業所にとって「不利な記録」ではなく、サービスの質を向上させるための貴重な学びの機会です。事故を隠蔽したり、報告を怠ったりすることは、運営指導で最も重大な指摘事項の一つとなります。また、損害賠償の必要が生じた場合に備え、賠償資力の確保(損害賠償保険への加入等)も求められています。

【虐待防止のために事業所が講じるべき5つの措置】
虐待防止のための対策を検討する委員会の設置と定期的な開催:委員会は年1回以上開催し、虐待防止に関する取り組み状況の検証、課題の抽出、改善策の検討を行う
虐待防止のための指針の整備:虐待の定義、虐待防止のための体制、発生時の対応手順、研修計画等を明記した指針を作成する
虐待防止のための研修の実施:全職員を対象に年1回以上の研修を実施し、虐待の早期発見・早期対応の意識を高める
虐待防止の担当者の設置:虐待防止に関する取り組みを推進する担当者を配置する
虐待の早期発見・通報体制の整備:虐待(疑いを含む)を発見した場合の通報先(市町村)と通報手順を全職員に周知する
虐待防止は、令和6年度から全ての介護事業所に義務化されました(経過措置期間終了)。運営指導では、上記5つの措置が全て講じられているかが厳格にチェックされます。特に、委員会の議事録、指針の内容、研修の実施記録は必ず確認されますので、漏れなく整備しておきましょう。
なお、虐待防止の取り組みについては、厚生労働省の「高齢者虐待防止に関する施策」のページに、各種マニュアルやガイドラインが掲載されていますので、参考にしてください。
【Web広告・ホームページに関する注意点】
近年の運営指導では、事業所のホームページやSNS等のWeb上の広告も確認対象に含まれるようになっています。特に以下の点に注意が必要です。
ホームページに記載されているサービス内容や料金が、実際の運営規程や重要事項説明書の内容と一致しているか
「地域No.1」「最高品質」など、根拠のない誇大な表現を使用していないか
他の事業所を誹謗中傷するような内容がないか
利用者の写真や個人情報を、本人の同意なく掲載していないか
Web広告は、紙媒体の広告と異なり、常に最新の状態を維持する必要があります。介護報酬改定や運営規程の変更があった場合は、速やかにホームページの内容も更新しましょう。
【令和7年度からの情報公表制度の見直し】
令和6年度の介護報酬改定により、令和7年度(2025年度)から、全ての介護事業所は「介護サービス情報公表システム」を通じて、運営規程の概要等の情報をインターネット上で公表することが義務化されました。これにより、運営指導の際にも、公表されている情報と実態が一致しているかが確認される可能性があります。
公表すべき情報には、事業所の基本情報、運営規程の概要、従業者に関する情報、利用料に関する情報などが含まれます。まだ対応していない事業所は、早急に準備を進めましょう。詳しくは、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」をご確認ください。
これまでの6大領域のチェックリストを見て、「うちの事業所、大丈夫だろうか…」と不安になった方もいるかもしれません。しかし、ご安心ください。運営指導の通知が来てからでも、計画的に準備を進めれば、指摘事項を最小限に抑えることは可能です。
ここでは、この記事のチェックリストを最大限に活用し、運営指導を乗り切るための「自己点検の進め方」を5つのステップでご紹介します。
ステップ1:チェックリストを印刷し、領域ごとに担当者を決める
まずは本記事のチェックリストを印刷し、6大領域ごとに担当者を割り振りましょう。管理者1人で全てを確認するのは現実的ではありません。サービス提供責任者や事務担当者など、各領域に詳しい職員を巻き込むことで、効率的かつ正確な自己点検が可能になります。
ステップ2:確認書類を一覧にし、所在を確認する
各チェック項目に対応する確認書類がどこに保管されているかを確認します。紙の書類はファイリングの場所を、電子データはフォルダのパスを明確にしましょう。この段階で「見つからない書類」があれば、早急に作成・整備する必要があります。
ステップ3:チェック項目に沿って、書類の内容を確認する
書類が「存在する」だけでは不十分です。記載内容が法令の要件を満たしているか、実態と一致しているかを確認します。例えば、運営規程の営業時間と実際の営業時間が一致しているか、訪問介護計画書に利用者の同意日が記載されているかなど、細部まで確認しましょう。
ステップ4:不備を発見したら、改善計画を立てて実行する
自己点検で不備が見つかったら、「いつまでに」「誰が」「何をするか」を明確にした改善計画を立てます。運営指導の通知から実施日までは通常1〜3か月程度の猶予がありますので、優先順位をつけて計画的に改善を進めましょう。
ステップ5:模擬運営指導を実施する
可能であれば、管理者やサービス提供責任者が「運営指導員役」となり、実際の運営指導を想定した模擬訓練を行いましょう。書類の提示方法や質問への回答を練習しておくことで、当日の緊張を軽減し、スムーズな対応が可能になります。

【自己点検で特に重視すべき3つの書類】
訪問介護計画書:ケアプランとの整合性、目標の具体性、説明・同意・交付の記録、モニタリングの実施状況
サービス提供記録:記載内容の具体性、訪問介護計画との整合性、利用者の確認印、提供時間の正確性
勤務形態一覧表:常勤換算の正確性、サービス提供責任者の配置基準、資格証明書との整合性
この3つの書類は、運営指導で最も時間をかけて確認される書類です。自己点検の際には、これらの書類を最優先でチェックしましょう。
なお、自己点検を効率的に進めるためには、ICTツールの活用も効果的です。記録の電子化や書類管理のデジタル化により、「書類が見つからない」「記載漏れに気づかなかった」といった問題を未然に防ぐことができます。介護ソフトの導入を検討されている方は、コミミのチームで、自事業所に最適なソフトを無料で相談することもできます。
また、運営指導の全体像や準備の流れについて詳しく知りたい方は、訪問介護の運営指導(実地指導)完全ガイドも併せてご覧ください。
本記事では、訪問介護事業所の運営指導(実地指導)で確認される全項目を、6大領域に分けてチェックリスト形式で徹底解説しました。
【6大領域の確認ポイント】
・領域1(人員基準):サービス提供責任者の配置、訪問介護員の資格確認、勤務形態一覧表の整備
・領域2(設備基準):事業所の専用区画、必要な設備・備品の確保
・領域3(個別サービスの質):利用者への説明と同意、アセスメント、訪問介護計画、サービス提供記録
・領域4(体制①):勤務体制の確保、管理者の責務、利用料の受領、緊急時対応
・領域5(体制②):運営規程、BCP、感染症対策、虐待防止、ハラスメント対策
・領域6(管理③):秘密保持、広告、苦情処理、事故対応、記録の整備
運営指導は、決して事業所を「罰する」ためのものではありません。利用者に質の高いサービスを安定的に提供するための「健康診断」のようなものです。このチェックリストを活用して日頃から自己点検を行い、不備があれば早めに改善する。その積み重ねが、運営指導を恐れることなく、自信を持って迎えられる事業所づくりにつながります。
【今すぐ始められる3つのアクション】
ACTION 1この記事をブックマーク&印刷する
まずはこの記事をブックマークし、チェックリスト部分を印刷しましょう。紙のチェックリストがあれば、書類を確認しながら一つひとつチェックを入れていくことができます。
ACTION 2直近3か月分の書類を点検する
運営指導では、直近の利用者3〜5名分の書類を抽出して確認するのが一般的です。まずは直近3か月分のサービス提供記録と訪問介護計画書を確認し、記載漏れや不整合がないかチェックしましょう。
ACTION 32024年度義務化項目の対応状況を確認する
BCP策定、虐待防止措置、感染症対策の3つの義務化項目について、「委員会の開催」「指針の整備」「研修の実施」が全て完了しているか確認しましょう。未対応の項目があれば、最優先で取り組む必要があります。
記録管理や書類整備に課題を感じている事業所は、介護ソフトの導入による業務効率化も有効な選択肢です。コミミのチームでは、事業所の規模や課題に合わせた最適な介護ソフトを無料でご提案していますので、お気軽にご相談ください。

最後に、運営指導は「指摘を受けないこと」が目的ではありません。運営指導を通じて自事業所の課題を発見し、改善につなげることで、利用者により良いサービスを提供できる事業所へと成長していくことが本来の目的です。仮に指摘を受けたとしても、誠実に改善に取り組む姿勢を示すことが、行政との信頼関係を築く第一歩となります。
運営指導の準備は、一朝一夕にはいきません。しかし、日々の業務の中でこのチェックリストを意識し、一つひとつの記録を丁寧に積み重ねていけば、運営指導を「怖いもの」から「自事業所の強みを確認する機会」に変えることができます。
この記事が、訪問介護事業所の皆様にとって、運営指導への不安を解消し、日々の業務改善に役立つ「実践的なガイド」となれば幸いです。
※本記事は、厚生労働省の公表資料および関連法令に基づき、一般的な情報を整理したものです。法令の解釈や具体的な運用は自治体(指定権者)によって異なる場合がありますので、最終的な判断は所管の自治体にご確認ください。
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