介護ロボット・センサーの選び方
腰の負担軽減に介護ロボットが良いって聞いたけど、どんな介護ロボットがあるんだろう?メリットやデメリットは?どうやって介護ロボットを選べばいいの?
このような疑問にお答えしていきます。
介護ロボットを活用すれば身体的な負担を減らすことができます。
特に「移乗介助用」の介護ロボットは腰の負担軽減に大きな効果を発揮します。
しかし、選択肢が多い上、価格や導入効果も異なるため、「結局何を導入していいかわからない」と悩む方も少なくありません。
そのため、本記事では、「移乗介助用の介護ロボット」を活用するメリット・デメリットを説明した上で、移乗介助用の介護ロボットを5つご紹介していきます。
さて、本記事の筆者は「介護×ICT」の業界に10年以上携わって参りました。
大手介護ICTベンダーで経験を積んだ後、本メディア「介護のコミミ」を立ち上げ、中立的な第三者機関として月間数万人の介護職員に情報発信をしています。
また、正しい情報を分かりやすく伝える目的で、介護ロボット専門資格である「スマート介護EXPERT」も所持しています。
本記事を最後までお読みいただければ、移乗介助用の介護ロボットを比較検討するために必要な知識を手に入れることができますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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介護の現場の人材不足や負担軽減など様々なメリットがある介護ロボット!
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介護ロボットの選び方を知る厚生労働省「介護ロボットとは」では、介護ロボットの定義を以下のように説明しています。
1.ロボットの定義とは、
この3つの要素技術を有する、知能化した機械システム。
2.ロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を介 護ロボットと呼んでいる。
引用: 厚生労働省「介護ロボットとは」
介護ロボットは、さまざまな介助を支援するものがあり、移乗介助を支援する介護ロボットの例として、「装着型パワーアシスト」などがそれに該当します。
また、移乗介助用の介護ロボットは大きくわけて2種類のものがあります。
そこでここからは、移乗介助用ロボットの種類を紹介していきます。
移乗介助をサポートしてくれる介護ロボットは「装着型」と「非装着型」の大きくわけて2種類のものがあります。
介助者の身体に装着して使用するタイプのものが「装着型」で、そうでないものが「非装着型」になります。
装着型のメリットは、介護者が装着して移乗介助を行うことで腰の負担が軽減できたり、一人での介助が比較的可能になったりすることです。
非装着型の介護ロボットは、ベッドと車椅子間の移乗に用いることができることがメリットです。
移乗介助用の介護ロボットには「装着型」と「非装着型」の2種類が存在します。
簡単に言えば、介助者(介護職員)の身体に直接身につけて使用するのが「装着型」、そうではないのが「非装着型」になります。
「装着型」はイメージしやすいかと思いますが、介助者の腰にベルトを装着するタイプの介護ロボットです。
一方で「非装着型」はベッドや車椅子のように備え付けるタイプの介護ロボットです。
本記事では移乗介助用の介護ロボットを紹介していきますが、その前に最低限抑えておきたいメリットを説明していきます。
そもそも介護ロボットを導入するかどうかの判断材料にもなると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
移乗介助型の介護ロボットを導入するメリットは次の4つです。
共通点は「介護職員の満足度向上」につながるということです。
それでは見ていきましょう。
移乗介助は腰への負担が非常に大きい介護技術です。
多くの介護職員はボディメカニクスの活用により最小限の力で身体介助する努力をしているものの、それでも腰痛に悩まされる方は少なくありません。
そこで活躍するのが移乗介助型の介護ロボットとなります。
空気圧やモーターにより、人工筋肉を収縮させることで、力をほとんど使わずに高齢者をベッドや車椅子に移乗させることができます。
力を使わずに移乗介助できるため、結果的に腰への負担軽減へとつながります。
移乗介助型の介護ロボットを活用すれば、力の無い女性でも一人で移乗介助することができます。
仮に二人がかりで移乗介助していた場合、一人分の工数を削減できる可能性が大いにあります。
当然ながら人の手が空けば他の業務に費やすことができるため、生産性向上につなげることができます。
また、厚労省も「介護ロボットを活用して生産性向上」と掲げているように、深刻な人手不足を介護ロボットで補うといった動きは年々大きくなっています。
介護ロボットで「人手不足」を補うことで結果的に事故リスクを減らすことができます。
さて、白梅学園短期大学が行った調査研究によると、現場職員の35%が事故原因の1つとして、「介護職員の配置人数の不足」と答えたことが分かりました。
前提として、介護事業所には「3対1」(高齢者3人に対して最低1人の介護職員を配置)というルールがありますが、深刻な人手不足を背景に、ギリギリの人員配置をしている事業所は非常に多いです。
実際、日本政策投資銀行と日本経済研究所が行った調査によると、2013年時点で介護職員1人当たりの高齢者数は平均3.3人でした。(2001年には平均4.1人)
そのため、介護ロボットの活用で人手不足を補うことで、結果的に事故リスクの軽減につなげることができます。
サポートされる側(高齢者)の中には、介助されることに遠慮をしたり、「申し訳ない」「恥ずかしい」といった感情を抱く人も少なくありません。
その点において、「人間よりも介護ロボットを使ってもらったほうが頼りやすい」と感じる方もいます。
例えば、もしあなたがサポートされる側だとした場合、「力が弱そうな小柄な女性」に懸命に移乗介助されるのと、「力が弱そうな小柄な女性だけど、介護ロボットを装着している」場合、どちらが頼りやすいでしょうか。
おそらくほとんどの方は後者だと答えるはずです。
一見、介護職員にしかメリットがないように思えるかもしれませんが、高齢者にとってもメリットはあるということです。
移乗介助用の介護ロボットを導入する前に知っておきたいデメリット(注意点)を説明していきます。
あらかじめデメリットを把握しておくことで介護ロボットへの理解はさらに深まります。
それでは見ていきましょう。
介護ロボットは決して安い買い物ではありません。
介護のコミミチームが調査したところ、非装着型においては1台90万〜120万、装着型においてピンキリで1台あたり50万〜220万、いうのが価格相場でした。
あくまで1台あたりの計算になるため、大きい施設であれば数百万〜数千万になることも珍しくありません。
また、耐用年数は3年〜5年のことが多いため、「安い」と感じる人はほとんどいないでしょう。
しかし、介護ロボット導入に活用できる補助金もあるため、市区町村によって補助額に差はありますが、多くの場合1/3〜1/2の自己負担で済むことが多いです。
補助金に関しては下の記事で詳しく解説しています。
介護ロボットの取り扱いには注意が必要です。
特に移乗介助用の介護ロボットは装着方法を誤っていたり、操作手順を誤ってしまうと、かえって腰痛を悪化させたり、事故リスクを高めることにつながります。
そのため、正しく運用していくことが重要になりますが、運用に乗せるまでにはどうしても労力がかかります。
「全員が介護ロボットを使いこなせるようになる」ためには、練習から本番運用までに3ヶ月以上要することも珍しくありません。
装着型の介護ロボットにはSサイズ、Mサイズ、Lサイズなど身体に合わせたサイズが用意されています。
しかし、導入した介護ロボットと、介護職員のサイズがマッチせず、結局「使いたくても使えない」といったことはよく発生しています。
そのため、介護ロボットを導入する前に、しっかりサイズを確認しておくことも重要です。
非装着型の介護ロボットのデメリットとしては、一人ひとりの移動介助に時間がかかるということです。
介護ロボットに利用者を乗せ、そこからゆっくりの動作で介護ロボットが移乗してくれる仕組みになっているため、思いのほか時間がかかってしまうかもしれません。
介助者や利用者の負担は軽減できますが、業務効率化には向かない面がデメリットであるといえます。
移乗介護に特化した介護ロボットを「装着型」と「非装着型」に分けてご紹介します。
その上で、介護ロボット毎に「特徴」や「価格」にも触れた上で、「解決できる課題」や「どのような事業所におすすめできるか」まで説明していきます。
装着型の移乗介助ロボットは次の2つです。
・HAL
・マッスルスーツ
いずれも防水にも対応している上、脱着が簡単なため、入浴介助や排泄介助などにも使うことが可能です。
それぞれ詳しく見ていきます。
HAL(ハル)はCYBERDYNE社が開発した装着型の移乗支援介護ロボットです。
重さは約3キロほどで、交換式のバッテリー(駆動:4.5時間)を搭載しています。
防水にも対応しているため、入浴介助など水の使用が想定される場所でも利用可能です。
補助量の調整はボタンで行うことができます。
また、脳から筋肉に送られる信号(生体電位信号)を読み取ってHALを操作できます。
初期導入費用(1台) | 10万円 |
本体価格(1台) | 200万円 |
保守費用(1台/月額) | 2万円 |
特記事項 | 最長5年の保守加入が条件 |
参考URL | 詳細はこちら |
HALは決して安くはない価格帯ではありますが、それを補うほどアシスト性能に優れています。
「生体電位信号」により、介護者に合わせたアシストをしてくれる上、補助量はボタン操作だけで調整できるため、腰痛軽減には大きな効果を発揮します。
そのため、「身体的負担をできる限り減らしたい!」と効果重視の事業所にはおすすめします。
しかし、「生体電位信号」によるアシスト機能を使うためには、身体への電極シール取り付けがあるため、女性の場合は装着に別室が必要など、課題を感じる事業所もあります。
本当に腰痛に困っている職員にとっては救世主的な存在!ただ、腰痛に悩んでいない人にとっては装着の煩わしさを感じるかも。
マッスルスーツはイノフェス社が開発した装着型の移乗支援介護ロボットです。
重さは4.3キロです。空気圧式で人工筋肉が稼働します。
リュックのように背負うことですぐに利用できる上、空気式のためバッテリーを必要としません。
価格も比較的安く、必要に応じて「防水」や「保証期間延長」といったオプションに加入することができます。
本体価格(1台) | 49.8万円 |
保守費用(1台) | 1年間は無償、有料オプションで最長4年間の延長可 |
特記事項 | オプションで、防水や保証期間延長 |
参考URL | 詳細はこちら |
装着型の介護ロボットにしては価格も安いため、価格を重視する事業所におすすめです。
また、空気圧式はバッテリー不要な上、着脱も非常に簡単なのも大きな魅力です。
ただ、空気圧の調整は手動で行う必要があるため、自身の判断で補助量を調整しなくてはなりません。
手軽に使えるという点では、多くの介護職員に使ってもらえそうだね!
非装着型の移乗介助ロボットは次の3つです。
・リショーネPlus
・ロボヘルパーSASUKE
・HugT1
それぞれメリット・デメリットもあるため、詳しく見ていきます。
リショーネPlusはパナソニックエイジフリー社が開発した非装着型の移乗支援介護ロボットです。
利用者を抱き上げることなく、ベッドから車椅子、車椅子からベッドへの移乗が可能になります。
最大の特徴は「ベッドと車椅子がセット」である点です。
必要な時にベッドから車椅子を分離させることができます。
抱き上げる動作が不要になるため、二人がかりで行っていた移乗を小柄な女性1人でも行えるようになります。
本体価格(1台) | 90万円 |
特記事項 | 配送・組み立て費用別 |
参考URL | 詳細はこちら |
抱き上げる動作が不要になるため、介護職員の身体的負担や事故リスク軽減に効果があります。
また、移乗に要する時間も削減できるため、幅広くおすすめできる製品です。
ただ、リショーネのような大型の介護ロボットは気軽に居室間の移動は難しいため、「なんとなく」で導入するのではなく、将来的な運用も見据えた上で導入検討することも大切です。
価格的にも面積的にも大きな買い物になるから、慎重に検討したいところだね!
ロボヘルパーSASUKEはマッスル社が開発した非装着型の移乗支援介護ロボットです。
まるでお姫様抱っこのように介護ロボットが専用シートで利用者を支える「抱き上げ式」を採用しています。
操作もシンプルで分かりやすいため、比較的運用に乗せやすいと評判です。
また、ロボヘルパーSASUKEはローラーで移動が可能なため、複数居室で利用することができます。
本体価格(1台) | 98.8万円 |
特記事項 | |
参考URL | 詳細はこちら |
ローラーで移動できるため、複数の居室で積極的に活用したい事業所におすすめです。
ただ、専用シートに利用者が体重を預けている状態のためズボンの脱着は難しく、トイレへの移乗には向いていません。
完全に備え付けるタイプではないから、導入後も柔軟に運用を変更できそうだね!
HugT1はFUJI社が開発した非装着型の移乗支援介護ロボットです。
起立姿勢のまま利用者をHugT1に乗せることができるため、車椅子やベッドへの移乗だけではなく、トイレへの移乗も可能になります。
着座はボタン1つで行うことができるため、操作も非常に簡単です。
しかし、寝たきり状態の利用者には使用できないため、あくまで起立姿勢および着座が可能な利用者向けの介護ロボットとなります。
本体価格(1台) | 要問合せ |
特記事項 | |
参考URL | 詳細はこちら |
トイレ移乗を改善したい事業所におすすめです。
また、こちらもローラー式で移動が可能なため、複数居室での運用にも向いています。
ただ、寝たきり状態の利用者は使用できないため、必要に応じて他の介護ロボットと併用することになります。
移乗支援は、介護ケアに欠かせないものです。
しっかりとした基礎知識を持てば、介護者と利用者、両者の負担を軽減することができ、また事故などのリスクを防ぐことができます。
そこで、ここからは、移乗支援の基礎知識となるボディメカニクスや移乗支援時の注意点などについて解説していきます。
ボディメカニクスは、人間の骨や筋肉、関節の動きなど、力学的関係を活用しながら効率的に介助などが行えるための考え方です。
介護現場では、この「ボディメカニクス」を多く活用し、介護スタッフの腰痛の負担軽減や利用者の安全確保に役立てています。
ボディメカニクスは、具体的には以下の7つの原理から成り立ちます。
ボディメカニクスを応用して、移乗介助をしてみましょう。
移乗介助の基本的な動作は以下になります。
➀車椅子をベッドの側面に対して30度程度の角度で設置する
➁利用者に移乗介助を始めることを伝える
➂仰向けで寝た状態から利用者の膝を立て、肩と腰を支えながら介護者のほうに利用者の身体を引き寄せるようにして端座位にする
➃利用者がベッドサイドに座っている状態になったら、介護者が足を広げ重心を低くし 、利用者に身体を近づけて車椅子までの移乗介助を行う
➄移乗介助を行った後は、利用者の顔色は悪くないかなど、異変がないことを確認する
移乗介助では、ボディメカニクスの原理を多く利用します。
特に介護者が足を大きく広げ、腰を低めに保ち、利用者と身体を密着させながら移乗介助を行うことがポイントです。
ボディメカニクスを応用しながら、基本に沿って自分のやりやすい方法を探してみましょう。
移乗介助をする際の注意点は以下になります。
移乗時の利用者とのコミュニケーションは大切です。
移乗介助をすることを利用者が認識していないまま始めてしまうと、びっくりして本人が混乱してしまい事故に繋がってしまう可能性もあります。
また、移乗前後には、必ず体調を含めた利用者の状態や様子を確認するようにしましょう。
そして、重要なポイントは「無理をしないこと」です。
よくある事故の事例として、「新人スタッフが先輩スタッフにやれと言われたから無理かもしれないと思いながら一人介助をして、失敗して転倒させてしまった」というケースがあります。
一人での移乗が無理だと思ったときには、必ず他のスタッフに応援を求めるようにしましょう。
不安なまま移乗してしまうと、それが利用者にも伝わってしまい利用者自身も不安なまま介助を受けることになってしまいます。
ノーリフトケアは、もともと介護現場において腰痛による介護人材の離職や休職を課題とし、人手不足を解消するためにリスクを減らすための方針でした。
更に、介護スタッフが自分の力だけで移乗を行うのではなく、介助者の身体的な負担を減らしながら、利用者も動きや自立を妨げないように福祉用具などを用いて安全に移乗介助を実施しようと考えられたものです。
簡単にいうと、福祉用具を用いての移乗介助は利用者の自立支援に繋がる、また、利用者に協力動作を促すことで介護スタッフにとっても負担軽減ができるという考え方ということになります。
介護ロボットは「移乗介助用の介護ロボット」を含めて6種類あります。
次の6つです。
1.移乗介助
2.移動支援
3.排泄介助
4.見守り・コミュニケーション
5.入浴支援
6.介護業務支援
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