介護施設の経営・運営改善
「今後も売上を確保できるのだろうか」
「今後の介護市場の動きはどうなるの?」
このような悩みを抱えていませんか?
介護に携わる人たちは何かと多忙で、仕事に追われている局面が多いのではないでしょうか。
近所にライバルが参入するたびに「利用者が減らないだろうか」と気が気でないときもあるでしょう。
特に介護施設を運営する企業の責任者は、目の前の仕事をこなすのに必死で、業界全体を客観的に把握することが難しく、心の中が漠然とした不安に包まれていることも少なくありません。
この記事では、国内の介護業界における市場規模の推移と、別業種から新規参入した企業の例、さらに介護ソフトの開発と販売に新規参入したベンチャー企業の事例や、介護業界における将来の見通しについて具体的にご紹介します。
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最新介護ツール事情を知る2000年に介護保険制度が開始されて以来、国内における介護業界の市場規模は年々拡大しています。
2012年には5000億円台だった介護業界の市場規模も、2020年には9505億円を記録しました。
また、富士経済の市場調査報告書によれば、2021年に大台に乗り、1兆0879億円になると予測されています。
また、医療技術の発達と少子化の進展によって、全人口に占める高齢者(満65歳以上)の割合も年々増え続けています。
この割合が高齢化率であり、高齢化社会の進行度を示す指標です。
総務省の人口推計によると、1950年には5%前後だった高齢化率も、1985年に10%、2005年に20%を超え、2018年には28.1%を記録しました。
第1次ベビーブーム期に生まれた、いわゆる「団塊の世代」が高齢者となった2015年前後から高齢化率の伸びが一段と加速しているのです。
参考:業界動向SEACH.com「介護業界」
日本の総人口は減少し始めていますが、高齢者人口は今後も増え続けます。
第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた、いわゆる「団塊ジュニア世代」が65歳以上となる2040年頃に、高齢者人口は4000万人弱に達し、ピークを迎えると予想されています。
その時点で、高齢化率は35%を超えると見込みです。
そして、高齢者人口がピークを迎えるまで、介護業界の市場規模も拡大し続けていくとみられています。
ここで課題となるのが、介護福祉士・ホームヘルパー・ケアマネージャーなど、いわゆる「介護人材」の慢性的な不足です。
老人福祉施設の利用者が急増していく勢いに、介護人材の増加幅がなかなか追いつかないのが実情なのです。
もちろん、新たな介護人材を養成したり、外国人介護人材を積極的に採用していったりすることも急務といえます。
一方で、せっかく定着しようとしていた介護のプロが業界を辞めて、別の業界へ転職する人材流出も食い止めなければなりません。
高齢者との人間関係を構築することも重要な職務で、ストレスを溜めやすい労働環境にある介護人材は、離職の決断を招きやすい状況下にあるのです。
そこで、介護人材の精神的ケアも充実させなければなりません。
また、介護人材の給与水準も他業種に比べて高くないため、人材確保のための待遇改善も必要となります。
さらに、限られた介護人材を最大限に効率よく活用するため、施設内の業務改善を実施し、介護人材の労働生産性を高める工夫も求められます。
業務改善のために重要なのが、介護ソフトなど、介護業務の改善を目的に開発された専用ICTツールの導入です。
特におすすめな介護ソフトをランキング形式でこちらの記事にまとめています。併せてご覧ください。
参考:業界動向SEACH.com「介護業界」
近年、国内で異業種から介護業界へ新規参入した企業として3社ご紹介します。
2016年、SOMPOホールディングス(損保ジャパン日本興亜ホールディングス株式会社)は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を主力とする株式会社メッセージの過半数の株式を取得して子会社化したのち、居酒屋和民などの外食産業を展開するワタミ株式会社から「ワタミの介護」部門を買収しました。
これら一連のM&Aにより、SOMPOホールディングスは国内でもトップクラスの介護事業者として、にわかに存在感を増したのです。
SOMPOホールディングスは、本業である損害保険業などで培ってきた、医療業界との連携やリスク管理のノウハウを介護業界にも活かしています。
たとえば、施設内における入居者の異変をすぐに探知し、医師との間で緊急に情報を共有するICT遠隔システムの導入を挙げることができます。
その他、介護ロボットの導入によって、介護人材の業務負担を軽くし、人材不足問題を解決しようと努めています。
参考:SOMPOホールディングス「株式会社メッセージの株式取得(子会社化)の完了に関するお知らせ」
:週刊高齢者在宅新聞「ワタミ 介護事業売却 損保ジャパンに210億円で」
日本を代表するエレクトロニクス企業として国際的にも著名な「SONY」は、古くからレコード業界に進出するなど多角化経営にも積極的です。
この多角化経営方針が、近年のエレクトロニクス部門の不振を救い、損失を埋めています。
ソニー銀行やソニー生命などの金融系の子会社を擁するソニーフィナンシャルホールディングスは、介護業務を手がけるソニー・ライフケア株式会社も傘下に収めており、同社は2017年に有料老人ホームなどの介護事業を展開する株式会社ゆうあいホールディングスの株式を100%取得し、完全子会社化しました。
その上で、社名を「プラウドライフ」へと変更し、傘下にあった一連の介護事業をプラウドライフ1社に統合・集約させたのです。
現在では、ソニーフィナンシャルホールディングスの盤石な経営資源を活かし、関東を中心に介護付き有料老人ホームなどを積極的にチェーン展開させています。
参考:PR TIMES「ゆうあいホールディングスの完全子会社化のお知らせ」
国内シェア第2位の警備会社として知られるALSOK(綜合警備保障株式会社)は、2012年にALSOKケア株式会社を設立し、介護業界に新規参入しました。
警備業界のノウハウを介護業界にも活かして、24時間365日にわたって専門スタッフにいつでも相談できるサービスや、高齢者の異変を緊急察知できるシステムを開発、導入しています。
さらに2018年、訪問医療マッサージ事業「まごころベルサービス」を展開する株式会社ケアプラスの全株式を取得し、完全子会社化させました。
まごころベルサービスを傘下に収めたALSOKは、介護のみに留まらず、広い意味での高齢者ケアに取り組んでいます。
参考:日本経済新聞「ALSOK、ケアプラスを子会社化」
:ALSOK公式HP「ALSOKの介護」
近年、国内で介護業界に新規参入した企業が提供する、BtoB向けの業務改善ツールとして、次のような例があります。
※きづっきー公式HPより引用
介護業界支援サービスを展開する株式会社日本ケアコミュニケーションズ(本社所在地:山形県)は、外国人労働者への教育業務に携わる株式会社KIBI(本社所在地:東京都)が手を組み、介護人材の離職防止を促すツールである「きづっきーfor介護」を開発しました。
販売開始は2020年12月1日でした。
施設利用者である高齢者に対し、それぞれのスタッフがどのように接するのか、介護人材のコミュニケーションタイプを個別に診断し、施設内のスタッフが得意とするコミュニケーションや苦手とする課題などを分析します。
施設内での自分の位置づけや独自の価値を客観的に知ることで、介護人材の定着を促進させ、やる気も向上させる狙いがあります。
参考:PR TIMES「株式会社日本ケアコミュニケーションズは、介護現場の職場改善・職員定着に向けた新ソリューション「きづっきーfor介護」の販売を開始します」
※ケア樹Pro公式HPより引用
かねてからクラウド型介護支援ツール、「ケア樹」シリーズを展開してきた株式会社グッドツリー(本社所在地:宮城県)は、シリーズの上位ソフトとして連携性や拡張性の高い「ケア樹Pro」を、新たに2020年6月1日からリリースしました。
「ケア樹Pro」は、介護スタッフの日常業務を支援し、効率化させる高機能の総合ツールです。
グッドツリー社のパートナー企業が販売する各種機器やセンサーと連携し、入居者・利用者の生活実態を自動的に記録するなど、介護人材の業務負担軽減に一役買っています。
参考:PR TIMES「介護業界のイノベーションに貢献する業務支援プラットフォームクラウド型介護ソフト「ケア樹Pro」の提供開始」
2019年創業の株式会社スカイ(本社所在地:東京都)は、通所介護事業者(デイサービス)を対象とした新世代型の介護記録システム「レコセラ」を販売しています。
デイサービス拠点では、慢性的な人材不足にもかかわらず、日々の記録業務がスタッフにとって大きな負担になっています。
しかも、Wordなど一般的な文書ソフトで記録している場合が大半で、内容が改ざんされるおそれも否定できません。
こうした記録業務の負担を軽減し、介護スタッフを長時間労働やストレスから解放させることが「レコセラ」の開発目的とされています。
レコセラは、2019年11月に東京都新宿区に限定して先行的にリリースされましたが、2020年以降は他の地域でも販売されるようになっています。
顧客ターゲットについて、介護業者の中でもデイサービスのみに絞っている点が特徴的です。
参考:PR TIMES「クラウド型介護記録システム・レコセラ」を開発・販売しているスカイが、フランスサービスとの業務提携 及び リバデザインとの業務提携を開始
PR TIMES「介護ソフトの活用が利用者の満足度UPにつながる、通所介護に特化したクラウド型 新時代介護記録システム「レコセラ」をリリース。」
介護業界の市場規模は、2021年に1兆円を超える見込みです。
さらに高齢者人口が2040年頃まで増え続けることから、市場規模もさらに拡大していくでしょう。
介護業界では、基本的な財源のひとつとして10兆円規模の介護保険制度で裏付けられていますので、この先、数十年間は廃れない業界といえます。
確かに、課題はあります。
大手企業やベンチャー企業による新規参入も相次ぎ、業界内の競争が激化していますし、介護人材の慢性的な不足も深刻です。
しかし、さまざまな企業が介護ソフトを開発・リリースしており、そうしたICTのバックアップにより、介護系企業の業務効率はさらに向上するものと予想されます。
介護ソフトの活用によってスタッフの労働生産性が高まれば、施設内の経済的資源をより効果的に配分でき、スタッフの待遇も徐々に改善されていくはずです。
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