新卒が殺到!?不利な立地でも採用に困らない秘訣を「ささづ苑」に徹底取材!

介護施設への取材

新卒が殺到!?不利な立地でも採用に困らない秘訣を「ささづ苑」に徹底取材!

富山駅から車で約30分の距離に位置する特別養護老人ホーム「ささづ苑」。

決してアクセスが良いとは言えない場所にあるにも関わらず、毎年多くの新卒者からの応募が殺到していることに加え、外国人の採用がほとんど行われていないという話を耳にしました。

その背景にはどのような秘訣があるのか。その秘密を探るため、今回は理事長の岩井さんにお話を伺いました。

今回伺った事業所様
事業所名 ささづ苑
業種 医療・福祉業
事業内容 特別養護老人ホーム
所在地 〒939-2226 富山県富山市下タ林141
TEL 076-467-1000
FAX 076-468-0001
ホームページURL https://osawano.com/
この方にお話を伺いました

ささづ苑

理事長 岩井広行さん

社会福祉法人おおさわの福祉会の理事長を務める一方で、全国老施協ロボットICT推進委員会の委員長も兼任。「Do&Think(まずはやってみよう)」というポリシーを掲げ、スタッフが働きやすい職場環境の整備を積極的に推進。

ささづ苑はなぜ注目されているのか

なぜここまでささづ苑は注目されているのでしょうか?

富山県内でICTや介護ロボットの活用において、ささづ苑は県内トップクラスの先進的な取り組みを行っているため、大きな注目を集めています。働きやすい職場の実現に向けて、常に現場の課題と向き合い、積極的に改善を続けてきました。その結果、令和5年8月に働きやすい職場づくりと生産性向上の取り組みが高く評価され、介護施設として全国初の「内閣総理大臣表彰」を受賞することができました。

また、ささづ苑の取り組みは業界内外から高い関心を集めており、年300人もの方々が施設見学にお越しいただいています。見学者に対しては、生産性向上の取り組みや、ICT・介護ロボットの活用方法、職場環境の改善策などを積極的に公開し、情報共有を行っています。

さらに、若手職員が中心となって作成した魅力的な採用パンフレットや、「最先端」「ダントツの一番」という評判が、新卒採用の成功にもつながっています。このように、先進的な取り組みと情報発信の好循環が、ささづ苑が注目を集める理由だと考えています。

採用に大きな影響を与えている独自の採用パンフレット

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

ここからは、私が特に気になった「独自の採用パンフレット」と「ICTや介護ロボットの活用」の2軸から、なぜ採用に困っていないのかを岩井さんに深堀りしていきたいと思います。

ユニークな採用パンフレットを制作するに至った経緯を教えてください

▼ささづ苑の採用パンフレット

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

若者ウケが良さそうなデザインだけではなく、ICTツールの導入状況やキャリアアップに関する情報まで幅広く伝わりますね。このようなパンフレットを制作するに至った経緯を教えてください。

このパンフレットは職員のアイデアなんです。元々、パンフレット自体はあったのですが、そのパンフレットに対し、職員から「このパンフレットは入居を考えている方向けのものですよね?」「これでは学生には響かない」といった意見があり、新たに採用パンフレットを制作することになりました。採用パンフレットの制作は若手職員主導で構成から内容までを考えてもらいました。

・・・実は、このパンフレットに私も載っているのですが、どこにいるかわかりますか?

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

あ、パンフレットを良く見ると、岩井さんが映っていますね(笑)

そうなんです、実はポケモンは私の趣味の1つでもあるので、パンフレットにも載せてもらいました(笑)

このパンフレットは施設の雰囲気も伝えられるので、学生さんたちからの反応も良くなったと感じています。結果として、新卒採用の数が増加し、毎年6-7名の安定した採用につながっています。さらに、このパンフレット制作をきっかけに、若手職員たちの主体性が育まれ、職場全体の活性化にもつながりました。

ICTや介護ロボットの導入・活用に関して

▲ささづ苑の「あんこ」(製品名:ラボット)

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

採用パンフレットにも記載がありましたが、ICTツールの導入と活用も積極的に行っているようですね。個人的に気になったのは、すれ違う職員の殆ど全員が骨伝導型のイヤホンを付けていたことです。ここからはICT化について詳しくお伺いしていきたいと思います。

音声入力ツール(ハナスト)の活用状況について教えてください

記録作業の効率化のため、私たちは音声入力ツール「ハナスト」を採用しています。全職員に骨伝導型イヤホンを支給し、音声で直接記録を作成できるようにしました。以前も音声入力ツールを導入していたのですが、それはパソコンに固定マイクを設置するタイプで、あまり実用的ではありませんでした。

しかし、新しく導入した「ハナスト」は、場所を選ばず音声入力ができるんです。その結果、記録にかかる時間が半減し、それでいて記録の内容は2倍に増えました。この変化は単に業務効率だけでなく、ケアの質にも大きな影響を与えています。記録時間が減ったことで、その分を利用者さんとの直接的なケアに充てられるようになりました。

今の介護ソフト(ケアカルテ)を導入するに至った経緯を教えてください

元々、別の介護ソフトを10年以上使っていたんです。しかし、記録作業の効率化が課題でした。そこで、当時の担当者を呼んで改善を相談したんですが、「できない」と言われてしまったんです。諦めきれず、別のソフト会社にも相談しましたが、やはり対応できないと。そんな時、ケアカルテの存在を知ることになりますが、当時、富山県内では導入例がほとんどなかったため、試しに職員を対象にプレゼンをしてもらったんです。

その結果、現場の職員が「これは便利だ」と食いついたんです。ケアカルテは睡眠状況や心拍数のデータも自動で記録できる見守り機能付きで、抱えている課題を解決できると考え、導入を決定しました。

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

よく他の施設では新しいツールに対し、抵抗感を示す職員も多いと聞きますが、どのように活用を進めていきましたか?

まず、現場で困っていること、施設長や管理者層が困っていることの課題の情報共有がスタートだと考えています。「現場では何で困っているの?」「どうすれば楽になるのかな?」という問いかけにより、課題を出していきます。

その後、ツールを導入する際には当施設では50代後半から60代の職員たちが推進役になりました。彼らが「これは便利だ」と率先して使い始めたんです。今までキーボード入力で苦労していた人たちだからこそ、その便利さがよく分かったんでしょうね。そこで、ベテラン職員は若い職員に対し、「まだこのツール使っていないの?」と便利さを伝えていったことがツールの浸透に繋がりました。

それと、うちは「Do&Think(失敗してもいい!とりあえずやってみよう!)」という文化があるんです。新しいことに挑戦する雰囲気が根付いているので、職員も割と柔軟に受け入れてくれたのも大きいですね。

ICT化を成功させるための秘訣とは?

▲ささづ苑はユニットごとに異なるデザインが施されている

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

まず、ICT化に悩んでいる事業所は多いと感じていますが、そのような事業所はまず何からするといいでしょうか?

何より、まずは課題を明らかにすることだと思います。いきなりツールの導入を進めるのではなく、「何に一番困っているの?(何を課題だと思っているの?)」から始めることが重要です。その後ツールを選定する際にも、課題と照らし合わせて検討することが大切です。例えば、当施設では夜勤職員の課題を発見し、見守りセンサーの検討を始めました。

具体的には、「シルエット見守りセンサ」「ネオスケア」「眠りスキャン」の3機種をお試しで導入しました。その後、現場職員からフィードバックを受けて結果的に「眠りスキャン」の導入に至りました。

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

理事長である岩井さん自身が現場職員の課題を抽出していることも素晴らしいと感じましたが、どのように現場職員からフィードバックを得ているのでしょうか?

特別なことはなく、とにかく現場の職員と一緒になって課題を考えることだと思います。また、当施設には「提案制度」がありますが、現場職員が提案制度を活用して、課題を教えてくれることもありますね。

インタビュアー早坂
インタビュアー早坂

意外と多くの施設は、「なんとなくイケてそうな製品」の導入が先行し、課題の抽出部分のプロセスを怠ることが多いように感じています。その一方で、ささづ苑は生産性向上のプロセスを確実に一つずつ進めているように思いました。

インタビュアーから見た「ささづ苑」【編集後記】

▲ささづ苑の外装

ささづ苑の岩井理事長の話から、単なる技術導入ではなく、現場の声を大切にする姿勢が成功の鍵であることが明確になりました。特に印象的だったのは、新卒採用のための独自のパンフレット制作です。若手職員主導で作られたこのパンフレットは、従来の介護施設のイメージを覆す斬新なアプローチに感じました。

また、ICTツールの導入プロセスも興味深いものでした。特に、ベテラン職員が新しい技術を積極的に受け入れた点は、他の施設にとっても参考になるでしょう。「Do & Think」の文化や、現場の声を反映させる姿勢が、円滑な導入を可能にしたのだと感じました。

今回のささづ苑の事例は、介護業界全体にとって大きな示唆を与えてくれます。常に改善を続ける姿勢が、これからの介護施設経営には不可欠だと感じました。今後も、ささづ苑のような先進的な取り組みに注目していきたいと思います。

この取材のインタビュアー

  • 【著者】早坂祐哉

    【著者】早坂祐哉

    大学卒業後、大手介護ソフトベンダーに7年間勤務。年間約50法人に介護ソフトを新規販売し、最年少で営業成績1位を獲得。課題抽出から業務改善に関するコンサルティング経験も多数。後に、「介護のテクノロジーを最適化する」という理念のもと(株)GiverLinkを設立し、同メディア「介護のコミミ」を通じ、月間3万人の介護職員に情報発信をしている。

介護のコミミとは

介護のコミミとは、介護や障がい福祉の事業所における課題解決のパートナーになるべく立ち上がった業務改善プラットフォームです。

業界最大級の数を誇るICTツールの掲載とその口コミから、あなたの事業所の課題に最適な製品を比較・検討ができるだけでなく、報酬改定や加算・減算、補助金などの最新情報、現場で使えるレク素材や資料のテンプレートなど、業務に役立つ様々なコンテンツを無料でご利用いただけます。

また、ICT導入について何かお困りごとがあれば、専任アドバイザーへお電話や掲示板を通じての無料ご相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。

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