介護現場の声・悩み
肺炎で亡くなる高齢者が増えているけど・・・どんな予防方法が効果的なの?利用者本人やご家族ができることってある?
テレビのニュースやワイドショーなどでも、肺炎で亡くなった方の話を見聞きする機会が増え、肺炎の予防方法について気になっている方も多いでしょう。
2016年の内閣府の発表によると、65歳以上の方が亡くなる原因として、肺炎は「がん」「心臓病」に次いで3番目に多い病気です。
そもそも、肺炎とはどのような病気なのでしょうか?
ここでは肺炎のことを知りながら、自宅でおこなえる予防方法について見ていきましょう。
※本記事は5分程度で読むことができます。
まずは肺炎について詳しく解説します。
肺炎とは、からだの中に入ってきた細菌やウィルスが肺や気管支に感染して起こる病気のことです。
肺炎は、主に次のような細菌やウィルスが原因で起こります。
肺炎球菌は、肺炎を引き起こす代表的な細菌です。肺炎球菌は、健康な高齢者の3~5%で鼻やのどの奥に常在しています。
体調を崩したり免疫力が低下したりすることなどをきっかけに、肺炎球菌が気管支や肺に感染すると肺炎を発病します。
インフルエンザウィルスは、主に冬場を中心にインフルエンザを発病する原因となるウィルスです。
高齢者では、インフルエンザ発病後に肺炎を合併し、亡くなられる方も多いです。
黄色ブドウ球菌は、健康な人の鼻やのどなどに常在する細菌です。
あまりなじみがない名前に思われるかもしれませんが、肺炎以外にもおできや水虫、にきびなどの原因にもなっている細菌です。
肺炎を引き起こす細菌やウィルスは私たちの身近に存在するため、誰でも肺炎にかかるリスクがあります。
特に高齢者では肺炎にかかる可能性が高いので、普段から体調を崩さないように健康管理が必要です。
また最近では、食事の際に食べ物が誤って気道に入ってしまう「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を起こす高齢者が増えています。
加齢や病気をきっかけに食べ物を飲み込む力が弱くなると、「誤嚥性肺炎」を起こすリスクが高くなります。
肺炎を予防するためには細菌やウィルスの感染を防ぐだけではなく、食べ物を飲み込む力を維持していくことも重要です。
肺炎になると、38℃以上の発熱が数日間つづき、悪寒、全身倦怠感、呼吸困難感、息ぎれ、色(黄色や緑色など)のついた痰などの症状が見られます。
ただし高齢者の肺炎では、高熱を示さない場合も多いです。
私が以前リハビリの専門病院に勤務していた頃には、次のような形で肺炎に気づいた高齢の患者さんがいらっしゃいました。
何日も微熱が続いていた男性の患者さんは、私が病室を訪問するといつも「ゴホッゴホッ」とむせ込んでおり、病室を移動する時にはティッシュ箱を携帯する必要があるくらいに痰もたくさん出ていました。
ご本人は「風邪かな?」とおっしゃっていましたが、数日後には呼吸困難感が見られるようになり、精密検査をしてみると肺炎が見つかったのです。
また加齢の影響から飲み込む機能が低下していた患者さんは、ある日突然、発熱と呼吸困難感が見られるようになり救命処置ができる病院へと搬送されました。
検査をしてみると、どうやら食事の際にうまく飲み込めなかった食べ物が、食道ではなく気道のほうに入ってしまい(誤嚥してしまい)、「誤嚥性肺炎」を起こしていたのです。
肺炎では呼吸もしづらくなるので、発病すると命に関わる可能性も高いです。
自己判断するのは危険ですから、肺炎が少しでも疑われたら、できるだけ早くかかりつけ医や近くの内科を受診するようにしましょう。
肺炎を予防するためには、原因となる細菌やウィルスをからだの中に取り込まないことが重要です。
色々な人が触れる場所にはたくさんの細菌やウィルスが付着しているため、外出先から帰宅したり家事をしたりした後には、手洗いやうがいをするようにしましょう。
体調が優れない時にはできるだけ自宅で休養することが望ましいですが、やむを得ず外出が必要な場合には、マスクを着用して人ごみで細菌やウィルスを吸い込まないようにすることが大切です。
またからだに体力がつくと肺炎にかかりにくくなるので、バランスの良い食事や適度な運動は肺炎予防のためにも必要です。
年を重ねるにつれて、食欲が減ったり夜間の眠りが浅くなったりして体調を崩しやすくなっているかもしれません。
体力をつけたり、質の良い食事や睡眠をとったりするためにも、散歩などの運動を習慣的におこなえると良いです。
体力をつけるためには「軽く息が切れる程度の運動が良い」と言われています。
しかし心臓などに持病がある方の場合、運動の程度によっては体調を崩す可能性も高いので、運動をはじめる前にはかかりつけ医にも相談してみましょう。
それから、実は「しゃべること」も肺炎予防には効果的です。
というのも、しゃべる機能と飲み込む機能はからだの中で密接につながっており、たくさんしゃべることで飲み込む力もアップしていくからです。
これは、食べ物を誤って飲み込むことで起こる「誤嚥性肺炎」を予防することに役立ちます。
最近では、地域の高齢者が主体となって活動しているグループも多いです。
例えば、早朝の公園ではラジオ体操のグループなどが活動していますし、地域の児童館では将棋や日本舞踊などの大人の趣味活動などが盛んにおこなわれています。
肺炎を予防する観点からも地域のグループに参加し、しゃべる機会を増やすのもおすすめです。
ここからは肺炎を防ぐための予防接種に関して深掘りしていきます。
肺炎の中には、ワクチンで発病を予防できるものもあります。
それが肺炎球菌感染症(はいえんきゅうきんかんせんしょう)です。
肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌が肺に感染して起こる病気です。
日本では肺炎球菌感染症が、もっとも患者数の多い肺炎となっています。
国立感染症研究所によると、2017年に肺炎球菌感染症を患った患者は人口10万人あたり3,211人おり、そのうち8.3%の高齢者(156人)が亡くなられました。
肺炎は命に関わってくる病気でもあるため、ワクチンによる予防接種も重要です。
予防接種を受けると、肺炎球菌感染症の約6割を防ぐことができます。
平成26年10月1日から、高齢者を対象にした肺炎球菌ワクチンの定期接種が開始されました。
肺炎球菌の予防接種は、以下の方が対象者になります。
[予防接種の対象者]
・予防接種を受ける年度中に、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳、101歳以上になる方
・60~65歳未満で、心臓・腎臓・呼吸器に障がいがある方
肺炎球菌の予防接種の効果には個人差がありますが、一般的に予防効果は5年以上持続 します。
肺炎の予防について考えているのであれば、自分でできる健康管理の一環として、肺炎球菌の予防接種を検討してみてはいかがでしょうか。
肺炎球菌ワクチンは、予防接種の対象となる年度において、生涯で一回だけ公費負担で予防接種を受けることができます。
肺炎球菌の予防接種のイメージをつけるために、具体的な例を見てみましょう。
[令和元年度に65歳になるAさん、女性、群馬県富岡市在住、初めて肺炎球菌の予防接種を受ける]
予防接種費用:7,000円
予防接種の公費負担:5,000円
自己負担額:2,000円
群馬県富岡市では、肺炎球菌の予防接種の公費負担として市から一律5,000円が支給されます。
Aさんの場合、肺炎球菌の予防接種を受けることは初めてであり、65歳になる令和元年度が定期接種の対象年です。
そのため、Aさんは令和元年度中であれば、市の公費負担を利用でき、自己負担が少なく予防接種を受けることができます。
肺炎球菌の予防接種の公費負担は自治体によってさまざまですが、自己負担が2,000~3,000円となる場合が多いようです。
また肺炎球菌の予防接種を受けられる医療機関は、自治体ごとに指定されています。
肺炎球菌の予防接種を検討する時には、お住まいの自治体の窓口まで、自己負担額や予防接種がおこなえる医療機関について問い合わせてみましょう。
参考サイト:
内閣府ホームページ
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_2.html
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/2018/07/461tt01.gif
MSD株式会社(埼玉医科大学呼吸器内科教授 監修)
http://www.saitama-med.ac.jp/hospital/division/25respiratory_medicine/images/kanazawa02.pdf
●厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/kekka30-190626.pdf
●厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html
●群馬県 板倉町ホームページ
http://www.town.itakura.gunma.jp/cont/s018000/d018010/d020011/20170605104339.html
●埼玉県 坂戸市ホームページ
https://www.city.sakado.lg.jp/soshiki/19/324.html
群馬県富岡市ホームページ
https://www.city.tomioka.lg.jp/www/contents/1000000000500/index.html
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