2040年問題に備え介護体制見直しへ – 施設・訪問・通所別に対応策議論

ニュース

厚生労働省は10日、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」に関する中間とりまとめを公表した。この資料は、団塊の世代が85歳を超える2040年に向けて、地域ごとに異なる人口動態やサービス需要の変化に対応した介護サービス提供体制のあり方を整理したもので、基本方針として、地域包括ケアシステムの深化、医療・介護・予防・生活支援の包括的確保、テクノロジーや多様な人材の活用による生産性向上が掲げられた。特に介護人材の確保や職場環境の改善、介護事業者の経営支援を一体的に進める必要性が強調されている。また、地域類型を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3類型に分類し、それぞれに応じた柔軟かつ実効的な対応を求めている点が特徴である。

当該資料において言及されている課題とその対応方針を、サービス区分別に以下にまとめた。

■施設系サービス

  • 高齢者の急変時に備えた医療機関との連携強化を図る必要がある。

  • 在宅復帰支援や中間施設としての機能を担う老人保健施設の重要性が増している。

  • ICT機器や見守りセンサー、介護記録ソフト等の導入に対し、報酬加算を通じた評価が進められている。

■通所系サービス

  • 小規模事業所が多く、テクノロジー導入に関する支援が求められている。

  • 訪問系サービスとの連携や人材のシェア、配置基準の見直しが課題である。

  • 利用者の変動やキャンセルへの対応として、柔軟な報酬体系や業務効率化が検討されている。

■訪問系サービス

  • 一人訪問に対する不安感が根強く、有効求人倍率が高い水準にある。

  • 移動負担の大きさやキャンセルによる非効率性が構造的課題となっている。

  • 同行支援の制度化、包括的報酬評価の導入、福祉用具やAI技術の活用が今後の施策として挙げられている。

■全サービス共通

  • 介護人材の確保と定着が最大の課題であり、処遇改善や多様な人材活用、キャリアパスの構築が重要である。

  • テクノロジー導入のばらつきや初期費用・運用コストの課題が普及を阻害しており、国・自治体による支援体制の整備が求められている。

  • 科学的介護(LIFE)との連携や生成AIの活用を通じた業務効率化が推進されている。

  • 事業者間の協働化・大規模化や社会福祉連携推進法人の活用により、経営効率とサービスの質向上が目指されている。

今後は、今回の中間とりまとめをもとに、介護保険部会など関係審議会での制度的議論を進めるとともに、4月以降に障害福祉や子ども分野を含めた横断的な検討が行われる予定である。加えて、2040年の地域包括ケアの実現に向け、第10期(令和9~11年度)介護保険事業計画への反映が課題となる。制度改正や医療介護総合確保基金の財政支援も含めて、必要な施策の実施が求められており、都道府県・市町村を中心に、地域の実情に応じた体制構築が今後の鍵を握るとしている。社会保障審議会での議論を経て、最終的なとりまとめが夏頃に予定されている。