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基本方針は、医療機関等が人件費や医療材料費、食材料費、光熱水費、委託費などの上昇に直面し、賃上げ面でも他産業との乖離が生じやすい状況を踏まえた対応を掲げた。具体策として、処遇改善と人材確保、ICT・AI等の活用による業務効率化、タスクシフト/シェアやチーム医療、医師の働き方改革、診療報酬上の基準の柔軟化などを挙げている。
85歳以上人口の増加など医療・介護の複合ニーズが拡大する一方、生産年齢人口は減少するとの認識を前提に、限られた医療資源の最適化・効率化を進める方針だ。入院医療は患者の状態や必要な機能に応じた評価を強め、在宅療養患者や介護施設入所者の後方支援(緊急入院等)、円滑な入退院、リハ・栄養・口腔管理など高齢者の生活を支えるケアの推進を位置づけた。かかりつけ医・歯科医・薬剤師機能の評価、外来機能分化(逆紹介の推進)、訪問看護を含む在宅医療の確保、医療資源の少ない地域への支援も論点に置く。
患者が安心して医療を受けられる体制の評価や、アウトカムにも着目した評価を進める考えだ。医療DX・ICT連携を活用する医療機関・薬局の体制評価、質の高いリハビリの推進、救急や小児・周産期など重点分野への適切な評価、感染症対策・薬剤耐性対策、歯科領域(重症化予防、口腔機能への対応、治療のデジタル化)も盛り込む。薬局は地域の供給拠点としての機能に応じた評価や対人業務の充実を掲げ、イノベーションの適切評価と医薬品の安定供給の確保も方向性として示した。
後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直し、費用対効果評価制度の活用などを挙げ、効率化・適正化を通じて医療保険制度の安定性を高める方針を示した。加えて、電子処方箋の活用や医師・薬剤師の連携による適正使用、重複投薬・ポリファーマシー等への対応も例として示している。
基本方針は「物価高騰・賃金上昇への支援」と「現役世代の保険料負担の抑制努力」を両にらみで進める姿勢を明記しており、今後は改定率や個別項目の具体化が焦点となる。医療機関・薬局側は、賃上げや業務改善、医療DX対応(ICT連携、電子処方箋等)を“体制整備の実績”として示せるよう、設備・運用・人材配置の準備状況を点検しておく必要がある。また、入院・外来・在宅の機能分化や後方支援機能など、地域の役割分担に沿った提供体制の整理が、今後の評価設計に直結し得るため、地域医療構想や連携先との調整も早めに進めたい。
参考:『令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要』(厚生労働省)